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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第3回国連防災世界会議閣僚級ラウンドテーブル「ポスト2015年防災枠組を支える国際協力」岸田外務大臣ステートメント

[場所] 仙台国際センター
[年月日] 2015年3月15日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

議長,

御列席の皆様,

東日本大震災を含め,その歴史の中で数多くの災害にさいなまれてきた国として,日本は,防災に関する多くの知見と技術を蓄積してきました。そして,こうした背景の下,日本はこの分野で国際的にトップドナーであり,その知見と技術を共有して国際協力を主導してきました。

例えば,2013年,台風ヨランダがフィリピンに甚大な被害をもたらした際には,日本は直ちにかつ切れ目なく,緊急援助隊の派遣,緊急援助物資の供与,資金協力,NGOを通じた人道支援,より長期的な復旧・復興計画づくりと一連の支援を実施しました。ここ東日本で実践されている「より良い復興」の概念は,フィリピン政府の復興計画にも反映されています。

昨日安倍総理が発表した「仙台防災協力イニシアティブ」に基づき,日本は,防災の主流化に貢献していきます。2015年から2018年までの4年間で,40億ドルの資金協力を実施し,各国の防災を牽引し,災害後のより良い復興を担う行政官及び地方のリーダーなどの人材を計4万人育成します。

日本の具体的な協力は,以下の要素を効果的に含めます。すなわち,(1)法・制度・体制構築支援,人材育成等のソフト支援,(2)質の高いインフラを通じた経済社会基盤整備を中心とするハード支援,(3)グローバルな協力と広域協力の推進を効果的に組み合わせた協力を行います。

防災は,先進国,開発途上国を問わず,全ての国に関わるユニバーサルな課題です。そして,全ての国の中央政府が,国民と財産を災害から守る第一義的責任を有します。これを踏まえた上で,国際防災協力において日本が重視する「3つの鍵」を御説明したいと思います。

 ・第一の鍵は,長期的な視点に立った防災への事前投資です。災害が発生する度に緊急対応・復旧措置を取るだけでは,持続可能な開発はなし得ません。これは,多くの災害を抱えながら経済を発展させた日本自身の経験に裏打ちされた考えです。

 ・第二の鍵は,グローバル・パートナーシップです。防災のための国際協力は,先進国から開発途上国への一方通行の支援ではありません。日本は,東日本大震災に際して先進国・開発途上国双方から頂いた支援を決して忘れません。また,開発途上国における災害の経験から,先進国が学ぶべきことも沢山あります。さらに,中央政府に限らず,地方自治体,市民社会,民間企業等,あらゆる関係者が関与する実施体制を構築することも必要です。

 ・第三の鍵は,人間の安全保障のアプローチです。防災協力の実施に当たっては,人間一人ひとりに焦点を当て,女性の視点や,障害者や高齢者など特に脆弱な立場に置かれやすい方々の視点を取り込むことが重要です。

日本は,ポスト2015年防災枠組の策定とその実施において主導的役割を果たし,これら「3つの鍵」で災害に強い世界に向けて国際協力を推進していく決意です。また,この会議の成果がポスト2015年開発アジェンダへの欠くことのできない貢献となることを強調したいと思います。

御静聴ありがとうございました。