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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第9回包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議岸田外務大臣挨拶

[場所] 国連本部
[年月日] 2015年9月29日
[出典] 外務省
[備考] 日本語仮訳
[全文]

ゼルボCTBTO事務局長,

御列席の皆様,

広島・長崎の被爆70年の本年,イドリソフ・カザフスタン外相と共に発効促進会議の共同議長の座に着き,身の引き締まる思いです。

CTBTが署名開放から来年で20年を迎える今,CTBTの重要性を改めて訴えたいと思います。

まず,核実験の禁止は,核兵器の不拡散と並んで,極めて重要かつ有効な核軍縮における重要な柱であります。CTBTはあらゆる国の核兵器の開発及び質的改善を抑制することで,冷戦期に毎年,毎月のように世界のどこかで行われていた核実験を通じた核軍拡競争に終止符を打ちました。

次に,CTBTは核実験禁止の規範性を確実に高めているという意義があります。過去約20年の信頼性の高い国際監視制度の着実な構築は,核実験に対する効果的抑止となっています。今やほぼ全ての国が核実験モラトリアムを遵守しており,核実験を行う国は国際社会全体からの強い非難と制裁を免れることはできません。

私たちはCTBTこうした意義も常に念頭に置きながら,早期発効に向けた努力を加速化していく必要があります。

そこで私は,共同議長として,今後間,発効促進のため以下の「3つの促進(threepromotions)」を提案したいと思います。

(1)第一に,発効要件国を中心とする未署名・未批准国に対する,可能な限りハイレベルの政治的働きかけの促進です。この努力に今日御列席の皆様の積極的貢献をお願いします。

(2)第二に,国際監視制度の完成に向けた更なる構築の促進です。中でも同制度を支える各国の国内データセンター要員養成のための援を促進することが重要です。

(3)第三に,核兵器使用の惨禍を世代と国境を越えて市民社会に広めることの一層の促進です。これによって,世界中の人々にCTBTの早期発効の必要性をより一層強く認識してもらいたいと思います。

ある広島の被爆者は,人類の叡智が開発した「核」の脅威こそ,全人類が生き残っていくために一日として疎かに出来ない重大な問題であると語っています。

私は,核の脅威を知る立場からイドリソフ外相と共に核兵器使用の実相を発信し,世界が核軍縮の原点を見失うことのないよう導いていきたいと思います。そして全人類の問題として,核兵器のない世界の実現のために各国の一層の真摯な協力を求めます。

これまでのインドネシア及びハンガリー両国による努力に敬意を表しつつこれを受け継ぎ,カザフスタンと共に他の関係国やCTBTO事務局と連携しながら,CTBT発効ひいては核兵器のない世界の実現に向けて全力を尽くすことを誓い,この会議の議長としての私の挨拶といたします。

(了)

{文中の(1)はマル1、(2)はマル2、(3)はマル3}