[文書名] ユース非核特使OB・OG広島フォーラムにおける岸田文雄外務大臣挨拶
皆さん,おはようございます。外務大臣の岸田文雄です。
本日は,G7広島外相会合のプレイベントとして「ユース非核特使OB・OG広島フォーラム」を広島県・広島市にご協力いただき開催することとなりました。多くのご協力,そしてご出席に心から感謝を申し上げたいと思います。
私は,2012年12月に外務大臣に就任いたしましたが,それ以降,唯一の戦争被爆国としての使命,そして被爆地の思いを胸に,核兵器のない世界に向けた取組を進めてきました。中でも,被爆の実相への正確な認識を国境や世代を超えてしっかりと広めていくこと,そして核兵器国と非核兵器国がしっかり協力していくことを重視してきました。
被爆から70年以上が経過し,核兵器廃絶に向けた被爆地及び被爆者の方々の思いを,しっかりと若い世代にも受け継いでいく必要があります。2013年春ですが,私は,従来からの「非核特使」制度に加えまして,次世代を担う若者が参加する「ユース非核特使」制度を立ち上げました。以来,これまで延べ107名の若い人たちがユース非核特使として活躍してくれました。昨年4月はニューヨークにおきまして5年ぶりのNPT運用検討会議が開催されましたが,その際にも24名のユース非核特使が国連や関係者の前でしっかりと自分の思いを自分の言葉で語りかけてくれました。「被爆者や戦争体験者から平和のバトンを受け継ぎたい」,「もっともっと被爆者の話を聞いてその思いを後世に伝えるのが自分たちの役割」。これらは,昨年ジュネーブで開催されました軍縮会議に出席したユース非核特使の皆さんの言葉です。こうした若い人達の姿を,この制度を立ち上げた者として大変頼もしく感じてきました。こうした思いを是非将来にわたって持ち続けて欲しい,そして,今後ともより多くの若者を世界に派遣したい,さらには世界各国の若者にもこの思いを共有して欲しい,こういったことを感じました。今日このフォーラムはこうした思いから開催を呼びかけさせていただいた次第です。
折しも,北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射など,核兵器の拡散の問題が深刻化しています。また,昨年のNPT運用検討会議でも最終の成果文書が合意できず,核兵器国と非核兵器国の対立が深刻化し,「核兵器のない世界」を目指すという国際的な機運や動きは残念ながらしぼんでしまっているという大変厳しい現実に直面しています。
しかし,こうした時だからこそ,被爆の実相に関する認識を世代と国境を越えて広めていき,核軍縮に向けた機運を再び高めていかなければなりません。こうした観点から,私は,今日,核兵器の非人道性に関する認識を世代と国境を越えて広げていくための新たなイニシアティブ「ユース非核特使国際ネットワーク構想」をここに発表させていただきます。
現在のユース非核特使制度をネットワーク化し,これを国内,さらには世界に広げて強化していきたいと考えております。具体的には,ユース非核特使経験者の集いを毎年開催し,ユース同士のネットワークを強化すること,そして志を同じくする外国の若者をユース非核特使に委嘱し,この制度の国際化を図ることを決定致しました。こうした取組を通じて,被爆の実相についての正しい認識が世代と国境を越えて更に広がり,核兵器のない世界への思いに国境はないということを世界の人々にしっかり感じてもらうことを目指していきます。そして,もう一つ発表させていただきたいと思いますのは,より多くの人に被爆の実相に触れていただくため,外務省として,来年度,世界各国から1,000名以上の方々を招待し,広島及び長崎にご訪問いただく,こうした計画を発表させていただきます。今日のこのフォーラムにあたりまして,「ユース非核特使国際ネットワーク構想」,そして今申し上げました外務省の招致計画,この2つの構想を発表させていただきたいと思います。
2週間後には,ここ広島でG7外相会合が開催されます。核兵器国と非核兵器国が共に含まれるG7は,双方の協力を促す絶好の機会になると考えております。また,世界の指導者に被爆の実相について理解を深めてもらうことは,核兵器のない世界に向けて国際的な機運を高めていく上でも重要だと考えています。本日のユースの皆様からの御意見や討論も大いに参考にさせていただいて,外相会合では,核軍縮・不拡散についてしっかり議論をしたいと思っています。今,残念ながらしぼんでしまっている「核兵器のない世界」を目指すという国際的機運を広島の地から再び盛り上げていきたいと考えております。「核兵器のない世界」に向けた取組を再起動する。そうした外相会合にしなければならないと思っています。
本日お集まりの皆様の今後の大きな可能性に大いに期待を抱きつつ,「核兵器のない世界」に向けて,被爆地出身の外務大臣として引き続き全力を尽くしていく決意を表明させていただきまして,今日のフォーラムにあたりましての私の御礼のご挨拶とさせていただきたいと存じます。本日は誠にありがとうございます。