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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 北朝鮮の非核化に関する安保理閣僚級会合における岸田外務大臣ステートメント

[場所] 
[年月日] 2017年4月28日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

議長,

 北朝鮮の非核化に関する,時宜を得た会合を開催いただいたことに,謝意を表します。また,グテーレス事務総長による有益なブリーフィングに感謝します。

議長,

 北朝鮮の核・弾道ミサイル開発の脅威は,新たな段階となっています。北朝鮮は,昨年1月以降のみでも,2回の核実験と30発以上の弾道ミサイル発射を行いました。

 この脅威はただの仮想ではありません。一般市民にとって,まさに現実なのです。3月6日,北朝鮮は4発の弾道ミサイルを発射し,そのうちの3発が我が国の排他的経済水域(EEZ)に着弾しました。事前通告はなく,これらの無謀な発射は,罪のない漁船,船舶,航空機にとって壊滅的な結果になったかもしれません。これらの発射は,北朝鮮メディアが,有事に在日米軍基地を攻撃するための北朝鮮の部隊が関わったと報じるなど,意図的な挑発です。

 したがって,この地域の諸国が自らの平和と安全を確保するために,抑止力を強化することが益々重要なのです。

議長,

 今は,北朝鮮が非核化について行ったコミットメントを想起する良い機会です。2005年,北朝鮮は,中国,日本,韓国,ロシア及び米国と共に,六者会合共同声明において,「六者会合の目標は,平和的な方法による,朝鮮半島の検証可能な非核化であることを一致して再確認」しました。北朝鮮以外の五者は引き続きこの立場にコミットしています。朝鮮半島の平和的な非核化を実現する上で対話が必要であることに疑いの余地はありません。しかし,北朝鮮が核・弾道ミサイル計画を進めている現状では,意味のある対話は明らかに不可能です。北朝鮮を交渉の場に引き戻すためには,国際社会が,挑発行動には高い代償を伴うこと,そして,非核化なくして,北朝鮮に明るい未来はない旨の強いメッセージを発信しなければなりません。

 これを踏まえ,日本は全ての加盟国に対し,関連安保理決議を厳格かつ全面的に履行することを通じ,北朝鮮に対する圧力を強化することを求めます。我が国は,北朝鮮との輸出入の全面禁止を含め,安保理決議上の義務を上回る,ヒト,モノ,カネの流れを厳しく制限する独自の措置を実施してきています。また,我が国は,安保理決議の実効性を向上させるため,ASEANに対する能力向上支援も積極的に実施しています。

 いかなる国も北朝鮮に対する制裁の枠組みの抜け穴となるべきではありません。我が国は,安保理決議が要請している,国別の履行報告書を未提出の全ての加盟国に対し,北朝鮮制裁委員会に提出するよう求めます。

 核実験を含む,いかなる更なる挑発行動に対しても,より一層厳しい安保理決議を迅速に採択すべきです。

議長,

 北朝鮮は,安保理決議を「違法」であるとして開き直って無視し,それらの義務に拘束されることを拒否してきています。これには実際に人道的な影響があります。つまり,北朝鮮当局が核兵器及び弾道ミサイルの開発を追求することにより,北朝鮮にいる人々の福祉及び基本的需要が犠牲となっているのです。

 これらの人々には,外国の拉致被害者を含みます。過去に,北朝鮮工作員が我が国に侵入し,13歳の少女を含む,多くの日本人を拉致しました。拉致被害者の将来は奪われ,家族は引き裂かれました。我が国の主権を脅かし,国民の生活に恐怖をもたらす拉致問題は,我が国の最重要課題です。拉致被害者は日本人に限られません。これは基本的人権の侵害であり,国際社会が直面する普遍的な課題です。北朝鮮に対して,本件にかかる具体的な行動を強く求める上で,日本は,国際社会の理解と協力を求めます。

議長,

 残念なことに北朝鮮が更なる挑発を行う可能性は高いです。安保理は,そのような行動は,国際社会からのより厳しい反応を招くだけであるとの明確なメッセージを送らなければなりません。

 我が国は,北朝鮮に対し,非核化に対する真剣な意思と具体的な行動を示すことを強く求めます。本件について,本日ここに集まった同僚達と,引き続き緊密に連携していきたいと思います。議長,ありがとうございました。