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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2020年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議第1回準備委員会における広島県主催サイドイベントでの挨拶

[場所] ウィーン
[年月日] 2017年5月2日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 ご出席の皆様,こんにちは。日本国外務大臣の岸田文雄です。2020年NPT運用検討プロセスの正に初日に,私の出身地である広島県主催の本サイドイベントに出席できることを大変光栄に思います。

 広島・長崎の惨禍を国境と世代を越えて広げていくことは,被爆国である日本の使命であり責務であります。核兵器の非人道性に対する正確な認識は,「核兵器のない世界」に向け国際社会が一致して取り組むための土台となるものであり,被爆地市民社会からの発信が重要な役割を果たします。

 その上で,核兵器国及び非核兵器国間の信頼関係の再構築,これが喫緊の課題となっております。先ほどの一般討論演説でも触れさせていただきましたが,私は,①透明性の向上を通じた信頼構築,②安全保障環境の向上を通じた,核兵器の保有の動機の削減と,③被爆の実相や拡散のリスクへの認識の向上,この3点を訴えつつ,核軍縮の進め方をめぐる国際社会の溝を埋めるための努力を続けて参りたいと思います。

 NPT体制はまさに核軍縮・不拡散体制の礎石であり,2020年のNPT運用検討会議の成功は極めて重要です。唯一の戦争被爆国として,核兵器国と非核兵器国の橋渡しを行い,「核兵器のない世界」を実現すべく全力で取り組んで参ります。

 最後に,本イベントの議論が有意義なものとなることを祈念しつつ,私の挨拶とさせていただきます。

 御静聴ありがとうございました。