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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国連PKO改革に関する安保理ハイレベル公開討論における河野外務大臣ステートメント

[場所] 
[年月日] 2017年9月20日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

ハイレマリアム議長、

 本日、国連安全保障理事会の場において、国連PKOが直面する課題そしてその改革につき議論できることを嬉しく思います。

 ハイレマリアム・エチオピア首相のイニシアティブ、国連PKO改革に向けたグテーレス国連事務総長のリーダーシップに、心から敬意を表します。

 国連PKOは、世界の平和と安全を維持するために国連が長年にわたり続けてきた崇高な取組です。

 我が国は、「積極的平和主義」を掲げ、国連PKOをはじめ、国際社会の平和と安定のため、全力で取り組んできました。

 一昨年には、平和安全法制の整備を行い、国連PKOの多様化する業務に対して、更なる貢献を可能としました。

 今年は我が国の国際平和協力法施行25周年にあたる節目の年です。初めて国連PKOに参加して以来、我が国は、カンボジア、ゴラン高原、東ティモール、ハイチなど27のミッションに対し、延べ12,500人以上を派遣し、世界の平和と安定に貢献してきました。

 直近では、南スーダンにおいて、過去最長の5年を超える自衛隊施設部隊の派遣を通じ、延べ260kmの道路補修、50万㎡に上る用地造成を行いました。我が国は、UNMISS司令部への要員派遣を継続しており、引き続き南スーダンの平和と安定に向けた支援を行っていきます。

 本日のテーマである国連PKO改革については、一層効果的・効率的な活動を実現するため、その推進に全面的に同意します。

 本日、そのための力強い安保理決議を採択しました。我が国はこの決議を支持し、その実施に真摯に取り組んでまいります。

 改革すべき課題は多岐に亘ります。その中でも私は本日、訓練・能力構築支援の重要性につき、強調したいと考えます。

 国連PKOの効果・効率を高めるためには、訓練された質の高い要員が不可欠です。これまでも現場のニーズと派遣される部隊の能力・装備のギャップを埋める必要性が指摘されてきました。この点、我が国は国連のイニシアティブに全面的に協力し、2015年以来、ケニアで実施されている国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクト(ARDEC)に80名近い自衛官を教官として派遣し、ケニアをはじめとする東アフリカ5か国130名の施設要員を育成する支援をしました。

 国連PKOミッションの過半数がアフリカに派遣される中、アフリカ連合平和支援活動と国連PKOの連携を引き続き重視し、TICADⅥの優先分野の一つでもある、アフリカの社会安定化のための人造りに引き続き力を注いでいきます。

 さらに、国連やアジア・アフリカの主要なPKO要員派遣国と協力し、インド太平洋諸国におけるPKO分野の能力構築支援に一層力を入れてまいります。

 また、私は、能力構築支援の分野で、国連や各国が秩序ある調整を進めることの重要性についても、強調したいと思います。先月、我が国は東京において約30か国の国連PKO関係者を集めた会合を主催しましたが、その際にも、この問題意識が共有されました。

 本日採択された決議により、派遣と能力のギャップを埋める効果的・効率的なメカニズムについて、事務総長報告が90日以内に安保理に提出されることとなります。我々としては、事務総長が、ARDECをはじめとするこれまでのベスト・プラクティスを踏まえた提案を行うことを期待します。それを受けて、引き続き安保理において、しっかり議論を深めたいと考えます。

 国連PKOにおける女性の役割、PKOの未来を担う若手の平和構築人材の重要性についても強調したいと思います。紛争の被害を受ける住民の多くは女性や子供達です。傷ついた彼らの気持ちに寄り添い、そのニーズに適切に対応するためには、女性のPKO要員の存在が不可欠です。我が国は来月、東京において、女性人材の国連PKOミッション幹部への登用を促進するためのセミナーを開催します。また、平和構築分野での若者の育成についても更に強化し、国連PKOで活躍する文民の裾野を広げていきます。

 我が国は、国連PKOに積極的に貢献していきます。また、安保理メンバー国として、国連PKO改革の議論に積極的に参加し、「より効果的・効率的で機敏」な国連PKOの実現を目指し、各国及び国連と緊密に連携していく所存です。

 御静聴ありがとうございました。