データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第8回グローバル・テロ対策フォーラム(GCTF)閣僚級会合における河野外務大臣ステートメント

[場所] ニューヨーク
[年月日] 2017年9月20日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

クーンデルス・オランダ外務大臣閣下,

ブリタ・モロッコ外務・国際協力大臣閣下,

ご出席の閣僚並びに代表の皆様,

【現状】

●イラク及びシリアにおけるISIL掃討作戦の結果,外国人戦闘員がこれまでの戦闘地域外へ拡散し,様々な形でテロを頻発させている最近の状況に,私は改めて強い危機感を抱いております。今年に入ってからだけでも,欧州では,ロンドン,マンチェスター,バルセロナで,それぞれ深刻なテロ事件が発生しました。また,アジアにおいても,「ISIL東アジア」を自称する集団がフィリピンのマラウィ市を占拠する事案が発生しました。

●今,まさにGCTFの英知が求められているところであります。

【我が国の国際的な対応】

●昨年のG7伊勢志摩サミットにおいて,G7リーダーは,テロ及び暴力的過激主義対策に関する行動計画を作成しました。この計画では,①インターポールのデータベースや乗客予約記録(PNR)の活用といった具体的なテロ対策に加え,②暴力的過激主義を防止するための対話を通じた寛容の促進,更には,③途上国への能力構築支援の重要性が掲げられています。

●先般のG7タオルミーナ・サミットにおいても,同行動計画を完全に実施することが確認されており,我が国は,同行動計画を着実に進めています。

●テロに対処するためには,即効性を持つ支援に加え,それらの根源に対処するための中長期的な支援が不可欠です。このため我が国は,途上国の水際対策や法執行機関の能力強化,また,貧困対策や教育,職業支援等を通じた寛容な社会の構築を特に支援しています。昨年9月には,アジア地域に対する総合的なテロ対策強化策として,3年間で450億円規模の支援及び2,000人のテロ対策人材を育成する旨を表明し,これを実施しています。

●中でも,暴力的過激主義対策においては,新たな取組とし,例えば,暴力的過激主義対策における宗教的教育の役割を研究し,政策づくりに生かすプロジェクトを支援しています。また,女性の役割に注目し,過激化の兆候をみせる青少年の傍らにいる母親に対する啓蒙活動をすることで過激化の抑止につなげたり,女性自身の過激化を防ぐための支援を行っていくプロジェクトを,UNWomenを通じて実施することも考えています。

【TOC条約等を通じた国際的な協力】

●国際的な協力の強化について,我が国は本年,UNTOC(国際組織犯罪防止条約)及び右条約を補足する議定書2本を締結し,今後,各締約国との間で,捜査共助や犯罪人引渡しがより充実したものとなります。テロを含む国際的な組織犯罪対策において,国際的な協力を一層強化してまいります。

【国内テロ対策】

●また,日本国内でのテロ対策についても紹介させていただきますと,日本は,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控えており,テロリストが武器を入手できないようにするために銃砲刀剣類や火薬類を取り扱う事業者,爆発物の原料となり得る化学物質を販売する事業者等に対する指導を行うなど,様々なテロ対策を強化・加速化しています。

【GCTFでの取組】

●最後に,GCTFは,テロ対策政策決定者・実務家が一堂に会し,戦略的・実践的議論を行う貴重な場として,国際社会がテロとの闘いに連携して取り組む上で,非常に重要な役割を果たすものとなってきています。

●我が国は,昨年,「コミュニティの働きかけ及び強靱性に関するグローバル基金(GCERF)」に対し,360万ドル拠出するなど,その活動に貢献しています。

●我が国は,国際社会の責任ある一員として,GCTFの活動に引き続き積極的に関与していく所存です。

●ご清聴有り難うございました。

(以上)