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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「不拡散」に関する安保理閣僚級公開会合における河野外務大臣ステートメント

[場所] 
[年月日] 2017年9月21日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

議長,

 国連総会ハイレベルウィークに,安保理理事国が,不拡散という現在の国際社会が一致して取り組むべきテーマについて議論する機会が設けられたことは時宜を得ていると思います。

 同時に,不拡散体制が深刻な挑戦を受けていることに強い懸念を表明します。国際の平和と安全に対して主要な責任を有する安保理が,不拡散体制を揺るがす問題を容認しないとの強い姿勢を示し,問題の解決に具体的に貢献していくことが重要です。

 また,現在の深刻な状況においては,核兵器不拡散条約(NPT)

体制の強化に加え,包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効や,核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の早期交渉開始が,一層重要性を増しています。こうした現実的かつ実践的な取組を国際社会が協力して進めることを求めます。

議長,

 北朝鮮は,累次に亘る国際社会の強い抗議と非難を無視して,先週,我が国上空を通過する弾道ミサイルの発射を強行したほか,今月初め,過去の核実験に比べはるかに大きく,水爆実験である可能性も否定できない6回目の核実験を強行しました。許されざる暴挙を,断じて認められません。累次の核実験及び弾道ミサイルの発射を始めとする北朝鮮の挑発行動は,不拡散体制に対する深刻な挑戦です。北朝鮮の行動が関連する安保理決議に明白な違反であることは言うまでもありませんが,我が国を含む地域の平和と安全に対する,これまでにない重大かつ差し迫った脅威です。

 北朝鮮が今の道を進んでいくのであれば,北朝鮮はますます孤立し,明るい未来を描くことはできないでしょう。北朝鮮が,先日採択された新たな安保理決議を含む一連の決議を完全に履行し,朝鮮半島の完全な,検証可能な,かつ不可逆的な非核化に向けた,真剣な意思と具体的行動を直ちに強く示すことを求めます。同時に,北朝鮮に対して,NPT及びIAEA保障措置に早期に復帰することを求めます。

 朝鮮半島の非核化のために,北朝鮮の行動を変えさせるために,今,最も必要なことは,国際社会が最大限の圧力をかけることです。今のままでは不十分であり,更なる圧力が必要です。そのために,日本は,全ての国連加盟国に対して,関連する国連安保理決議を完全に,また速やかに履行するよう強く求めます。いかなる国も制裁の抜け穴となってはなりません。

議長,

 化学兵器の不拡散も重要な課題の一つです。かつて地下鉄サリン事件などを経験した我が国としては,化学兵器の使用はいかなる状況でも断じて認められません。

 我が国は,シリアのハーン・シェイフーンにおいて確認された化学兵器の使用を最も強い言葉で非難します。化学兵器禁止機関(OPCW)・国連共同調査メカニズム(JIM)が現在化学兵器使用者の特定を実施しています。我が国は,JIMの活動を支持しています。化学兵器使用の再発防止の観点からも,安保理が,一致して化学兵器使用者の責任を追及することの重要性を強調したいと思います。

議長,

 最後に,イランについても言及したいと思います。日本は,国際的な不拡散体制の強化と中東の安定に資するものとしてイラン核合意を支持しており,包括的共同作業計画(JCPOA)の継続的かつ着実な履行は極めて重要です。

 また,IAEAによる合意履行の監視・検証活動を支持し,JCPOAとその精神の着実な遵守の重要性を改めて訴えたいと思います。他方で,イランによる弾道ミサイル発射は安保理決議第2231号に合致しない(inconsistent with)ものです。我が国は,イランが地域において建設的な役割を果たすことを強く期待します。

 国際的な不拡散体制を脅かす行動に対して各国が一致団結して協力することを改めて求め,私のステートメントを終えたいと思います。ありがとうございました。