データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 女性のエンパワーメントに関する日本政府・世銀共催特別イベント 河野大臣基調演説

[場所] 
[年月日] 2017年11月3日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 皆様,おはようございます。4年目を迎えたWAW!も最終日となりました。参加者の皆様からは有意義な御意見をいただき,改めて感謝申し上げます。

 世界が変わりゆく中で,近年,新しい視点やアイデアを活かし,自らビジネスを立ち上げる女性が増えています。私は,本イベントを通じて,女性の持つ力の素晴らしさを改めて世界に発信するとともに,そうした女性たちに対する日本の支援について御紹介したいと考えております。

 まずは,「女性と起業」の具体的成功例として,本日これから行われるパネル・ディスカッションのパネリストともなっている矢島里佳さんと佐々木かをりさんの事業を御紹介したいと思います。

 矢島さんは,「日本の伝統を次世代につなぐ」という観点から,乳幼児向けの製品を生産しています。例えば,東京に16世紀頃から伝わる「江戸更紗」という染色方法があります。江戸更紗は古くから着物の生地に使われてきました。他方,現代の日本人は着物を殆ど着ません。そこで,矢島さんは,オーガニック・コットンを用いて,江戸更紗で染めた前掛けを創りました。矢島さんのビジネスモデルは先月開催されたAPECのサイドイベントでも高く評価されました。

 また,佐々木かをりさんは,1987年に通訳者・翻訳者の会社を立ち上げたことを皮切りに,以後,人材育成や商品開発等,働く女性の視点に立った様々な事業活動をされてきました。最近では,「仕事や家事に忙しい毎日の中で手軽に美味しく野菜を食べ,栄養バランスを保ちたい」という働く女性の声に耳を傾け,トッピング入りの粉末ドレッシングを食品会社と共に製品化しました。矢島さんや佐々木さんの事業が成功に至った理由は,ビジネスに女性ならではの視点を加えている点であると私は思います。日々の生活で必要とされていながら商品となっていないニーズをくみ上げることは,生活や人々に日々関わっている女性だからこそできる強みです。

 しかしながら,現状では,女性が起業をすることは未だ難しい。日本においても起業家における女性の割合は約3割です。

 日本において,起業を希望する女性が直面する課題として,経営や事業に関わる専門的な知識の習得,仕事と家庭との両立のほかに,資金調達の難しさ等,様々な問題が指摘されています。開発途上国の女性たちの置かれた状況はさらに厳しいものです。

 そこで,日本政府は,こうした女性たちを支援するため,本年7月のG20ハンブルグ・サミットに際して立ち上げられた「女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi:ウィーファイ)」を支援しています。

 このイニシアティブは,開発途上国において,女性起業家や,女性が運営する中小企業が直面する障害を克服するための支援を目的として世界銀行に設置された基金です。先程講演をしてくださったイバンカ・トランプ大統領補佐官はこのイニシアティブの立ち上げに尽力されました。基金が円滑に運営され,世界全体で「女性が輝く社会」が実現するためにも,日本として最大限の協力をしていく考えです。

 全ての人々が価値観を変える道のりは決して平たんではありませんが,皆様とともに,また,世界各国とともに積極的に取り組んでいきたいと思います。

 ありがとうございました。