[文書名] 不拡散(北朝鮮)に関する安保理閣僚級会合における河野外務大臣ステートメント
皆様ご認識のとおり,北朝鮮は,関連する安保理決議に明確に違反する暴挙をエスカレートさせています。この2年間,北朝鮮は我が国上空を通過する2発のミサイルを含む40発もの弾道ミサイルの発射を行いました。また,3回の核実験も実施しました。9月の実験は,北朝鮮が水爆実験と主張しました。過去の核実験に比べはるかに規模が大きいものでした。北朝鮮によるこの理事会の権威への挑戦は断じて容認できません。
直近では,11月29日に,北朝鮮はICBM級弾道ミサイルの発射を行いました。これは新型と見られます。これは,北朝鮮が全ての国連加盟国にとって明らかなグローバルな脅威であることを改めて示すものです。核計画の進展は,核兵器不拡散条約(NPT)体制を根底から脅かすものです。
先般の発射は,9月の挑発行動から75日後に行われました。一部には,この75日間の沈黙を前向きなシグナルととらえる楽観的な見方がありました。しかしながら,11月のミサイル発射は,北朝鮮が一見静かにしているように見えても,核・ミサイル計画の開発を着実に進めていたことを明らかにしました。北朝鮮には,それらを放棄する考えも,意味のある対話に戻る用意もないことが一層明らかになりました。
フェルトマン国連事務次長の訪朝は,この恐ろしい現実が再確認されただけでした。国際社会は今こうして本件会合を開いている最中も北朝鮮が核・ミサイル開発を継続していることを,より警戒する必要があります。
北朝鮮は,その計画は,体制維持を含む安全保障上の理由によるものであると主張しています。それとは逆に,これは国際秩序に反し,いかなる国連加盟国の安全保障にも影響を与えかねない,極めて危険な行為です。
この関係で,日本は他の国・地域の体制を力により転換することを目標として掲げたことはありません。日本としても,平和的な問題解決が望ましいとの考えです。
しかしながら,このような解決を頑なに拒否しているのは北朝鮮です。その代わりに挑発行動をエスカレートさせ続けています。北朝鮮が,1994年のいわゆる「枠組合意」及び2005年の六者合意共同声明を無視しています。北朝鮮は,全ての関係国の善意を裏切って,これらの会合を核・ミサイル開発を継続する口実にすら使ってきました。ここ20年以上,我々の努力や支援に北朝鮮がどのように報いてきましたか。過激な対応をとることで譲歩を引き出そうとしてきました。
対話のための対話を実施するという,過去の過ちを繰り返さないことが我々の責務です。北朝鮮に核・ミサイル開発を進めるだけの時間を与えただけでした。安保理決議では,北朝鮮はその計画を完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な方法で放棄しなければならないことを明確に決定しています。我々は,この目標から後退してはいけません。北朝鮮の非核化に向けたコミットメントと具体的な行動が意味ある対話への前提条件となります。
今重要なのは,国際社会が,これまで以上に一致して,あらゆる可能な手段を通じて圧力を最大限まで高めるために緊密に連携することです。そうすることによってのみ,我々は北朝鮮に政策を変えさせることができるのです。一連の国連の制裁措置は,この目標の達成に向けた有効な手段です。
また,この点で,この理事会は,関連する決議の中で,北朝鮮による更なる核実験又は発射の場合には更なる重要な措置をとる決意を表明していることを思い返すべきです。
制裁は,北朝鮮に,政策変更しか道がないことを理解させるためのツールです。安保理は,完全な制裁レジームに近い,かつてない強力な制裁措置を採択してきました。制裁は,完全に履行されてこそ真価を発揮します。制裁は,北朝鮮に対する強い圧力となり,北朝鮮の外貨収入を大幅に削減することによって,核・ミサイル計画を抑制するものでなければなりません。この観点から,全ての国連加盟国に対し,制裁を完全に履行し,いかなる抜け穴も作らないよう強く求めます。このために,日本は,制裁履行に困難を抱える国々を支援する用意があります。
加えて,多くの国において独自の対北朝鮮措置が導入又は強化されることも歓迎します。日本は,外交関係の縮小を含む,北朝鮮へのヒト・モノ・カネの流れを止めるための更なる措置をとるよう全ての国連加盟国に求めます。日本としても厳しい独自措置をとってきました。本日,我が国は新たに19の北朝鮮の団体を,資産凍結の対象となる団体に指定したことを発表します。国連加盟国に対しても,同様の措置を講じるよう要請します。
また,遺憾ながら,北朝鮮による脅威は,生物・化学兵器等その他の大量破壊兵器の生産能力に及びます。また,サイバー分野での活動にも及びます。また,北朝鮮が兵器の販売及びサイバー窃取を通じて,核・ミサイル計画を進めるための資金を得ているとの指摘もあります。我々は,あり得る全ての脅威に対してより適切に対応すべく,情報共有及び連携のための国際ネットワークを強化する必要があります。
こうして我々が議論をしている間にも,核兵器及び弾道ミサイルの開発が,北朝鮮にいる人々の福祉を犠牲にしながら着々と継続されています。重大な人権侵害を見過ごすことはできません。
過去に,北朝鮮工作員が我が国に侵入し,13歳の少女を含む,多くの日本人を拉致しました。そのうち5人しか帰国していません。未だ多くの日本人が,北朝鮮にとどめおかれたままとなっています。今週,拉致被害者のうちの一名のお母様が,愛娘と約40年間も会うことなくお亡くなりになりました。また,他の拉致被害者の家族の一人も最近お亡くなりになりました。家族の方々は永遠に待てるわけではないのです。
拉致被害者のうち,数名しか家族や友人の待つ母国に帰れていないことは痛恨の極みです。ワームビア氏の事案を含む,北朝鮮による北朝鮮内外の外国人に対する人権侵害に対する深刻な懸念を強調する必要があります。
拉致,核,ミサイルといった諸懸案を包括的に解決することが,北朝鮮自身を含めた,国際社会の平和と安全を維持するという国連の目的を実現する唯一の道です。
北朝鮮が,正しい道を選べば,飛躍的に経済を伸ばし,民生を改善することができるかもしれません。拉致,核,ミサイル問題を解決することによってのみ,北朝鮮の明るい未来があります。
北朝鮮が未だ非核化に向けたコミットメントを果たし,それに向けた具体的な行動をとらない中において,我々は,ここで国際社会は核武装した北朝鮮は決して受け入れないという,明確且つ一致したメッセージを発しようではありませんか。
ありがとうございました。
【追加ステートメント】
我が国は,戦後70年以上にわたり一貫して,自由で民主的で,人権を尊重し,法の支配を重んじる国を創り,平和国家として,アジア太平洋地域の平和と繁栄を支えてきました。この平和国家としての歩みは,今後も変わらず,これまで以上に世界の平和と繁栄に貢献していきます。
本日の会合で,我々は,関連する安保理決議に違反している北朝鮮による挑発行動を最も強い表現で非難し,国際社会は核武装した北朝鮮を断じて容認しないことを再度確認しました。全ての国連加盟国に対し,関連する安保理決議の完全な履行とともに,朝鮮半島の非核化を実現するために北朝鮮への圧力を最大化することを要請します。
今月の議長月をもって,日本は安保理を去ることになります。しかしながら,引き続き現在の及び新たに加わる理事国並びに非安保理理事国とともに,北朝鮮問題が安保理において適切に扱われるよう緊密に協力してまいりたいと思います。