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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 河野太郎外務大臣による冒頭発言 朝鮮半島における安全と安定に関する外相会合

[場所] 
[年月日] 2018年1月16日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 共同議長,各国外相,御列席の皆様,

 まず,フリーランド・カナダ外相及びティラソン米国国務長官が,我々が一堂に会する本日の会合を開催するためにたゆまぬ努力をされたことに対し,改めて深い謝意を表します。また,両外相に続き,私に発言の機会を与えていただいた配慮に感謝いたします。

 我々が目の当たりにしているとおり,北朝鮮は言語道断な挑発行動を加速させています。国際社会は,北朝鮮による重大かつ差し迫った脅威に一致結束して対抗しなければなりません。先月,私が議長を務める中で国連安保理閣僚級会合を開催しました。同会合では,核武装した北朝鮮は決して受け入れられないことがはっきりと示されました。こうした中,本日の会合は非常に時宜を得ており意義深いものです。国際社会は北朝鮮の非核化を実現するために改めて力を結集するでしょう。

 本日,まず私は現状や北朝鮮の意図をどう見るかについて述べた上で,今後の取組についての考えに触れたいと思います。

 第一に,朝鮮半島の現状についての所見を述べます。

 日本政府は,安倍総理が述べているとおり,平昌五輪への北朝鮮の参加に関する最近の南北対話を歓迎しています。もとより,オリンピック・パラリンピックは平和の祭典であり,我々は皆,これらの行事を成功させようとする韓国政府の取組を支持しています。

 その上で,我々は北朝鮮が核・ミサイル計画を執拗に追求している事実から目を背けるべきではありません。北朝鮮が南北対話に関与している今,制裁の解除や何らかの支援を提供することによってこれに報いるべきであるといった主張があります。率直に申し上げれば,こうした見方はナイーブに過ぎるでしょう。北朝鮮は,核・ミサイル計画を継続するための時間稼ぎをしたいのだと思います。北朝鮮は,この対話から何かを得たいと考えているだけなのです。そのため,私はこうした認識が本日の議論の出発点であるべきだと考えます。

 第二に,我々は,北朝鮮の行動についての我々の期待ではなく,北朝鮮の実際の行動によって北朝鮮の意図を判断すべきです。

 北朝鮮の対話に対する意欲と北朝鮮の核・ミサイル計画に対する継続的な執着をどう解釈すべきでしょうか。

 第一に,いずれかの国が制裁を解除することを望んでいるに違いありません。第二に,他国の善意を利用して,何らかの形での財政的な支援を獲得しようとしているに違いありません。第三に,米韓合同軍事演習が中止されることを期待しているに違いありません。第四に,意志の固い国々とそうでない国々との間を離間させようとしているに違いありません。

加えて,仮に北朝鮮の思い通りに南北対話が進展しなければ,北朝鮮は他国を批判し,更なる危険な挑発行為を強行する口実にするかもしれません。

 いずれにせよ,我々が心に留め置くべきことは,この会合の最中にも,北朝鮮が核・ミサイル計画を進め続けていることであり,我々は北朝鮮の意図について甘い認識を持つべきではありません。また,我々は,北朝鮮の「微笑外交」に目を奪われるべきではありません。すなわち,今は圧力を緩和するときでも,北朝鮮に報いるときでもありません。

 これまで私が述べた所見から導かれることとして,最後に,最大限の圧力攻勢を堅持するという考えを申し上げます。

 国際的な制裁は徐々に効果をもたらしています。洋上での船舶間取引の数が増加していることは,現在の制裁がついに効いていることの現れです。また,制裁は本年更なる成果を生む可能性が高いです。北朝鮮が対話に関与していることは,制裁が機能していることの証左と解せます。

 そのため,今は全ての国が,可能な範囲で独自の措置を強化しつつ,関連安保理決議を完全かつ厳格に履行するとの決意を新たにするときであると考えます。これは,北朝鮮との外交関係を断ち,また北朝鮮籍労働者を送還するといった措置を含みます。こうした措置を通じてのみ,我々は北朝鮮の政策を変えられます。この点、ヨルダンが北朝鮮との「外交」関係を断絶することを決定しました。日本は,このヨルダンの対応を高く評価し、他の国々が同国の対応に続き更なる措置をとることを期待します。

 冒頭に述べたとおり,本年は北朝鮮による南北対話への動きから始まりました。しかし,核・ミサイル計画の解決に関しては何の前向きな動きはなく,拉致問題についても進展はありません。本日の外相会合は,朝鮮半島の完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な非核化を達成するための国際社会の断固としたコミットメントを示し,北朝鮮のその他の挑発を阻止するための時宜を得た機会です。我々は一致結束し,北朝鮮への圧力を最大限まで高め続け,非核化に向けて北朝鮮の政策を変えさせるべきです。

 ありがとうございました。