[文書名] OECD東南アジア地域プログラム(SEARP)閣僚会合 「参加を通じた包摂性」セッション 河野外務大臣による発言
シーハサック大使,ありがとうございます。
私から,簡単に3点申し上げます。
第一に,包摂的な「参加」の観点からは,構造政策が非常に重要です。
低スキル労働者,女性,中小零細企業など,全ての主体による経済的な機会へのアクセスを確保するためには,我々は構造政策を精力的に実施していく必要があります。
構造政策については,ASEANやその他の国際機関においてもその重要性が指摘されていますが,この分野はOECDこそが強力な比較優位を有する分野です。
OECDは,その豊富な分析と証拠に基づく政策提言によって,「一億総活躍社会」を目指す日本のアベノミクスの下での構造改革の方向性を支持してくれています。
ASEANの閣僚や代表の皆様,
国内改革の優先課題を更に押し進め,「中進国の罠」に陥らないために,この分野においてOECDを是非とも最大限活用してほしいと思います。
第二に,人材育成は包摂的かつ持続可能な成長にとって鍵であることを強調します。
グローバル化やデジタル化により急速に変化する世界において,人材育成はかつてないほど重要となっています。
このような文脈で,昨年のOECD閣僚理事会では,生涯にわたって,質の高い教育や訓練へのアクセス拡大を促進していく政策の必要性が確認されました。
人材育成の重要性は,ASEANの文脈においても強調されています。
ADBとILOによる推計によれば,いくつかのASEAN諸国では,2025年までに,高いスキルが求められる雇用の半数以上において,必要なスキルを有する人材が見つからないスキル・ミスマッチを抱えることになります。
このような背景の下,日本は「産業人材育成協力イニシアティブ」を通じた支援を含め,この分野におけるASEANの取組を支援してきました。同イニシアティブの下で,日本は過去2年の間におよそ5万人の産業人材に対する支援を実施してきました。
この分野における日本とASEANの協力の発展は喜ばしく,今後,これらの努力が地域の将来的なスキル・ミスマッチの解消に貢献することを切に願っています。
第三に,本日が国際女性デーであることに鑑み,女性の参画についてお話ししたいと思います。
日本を先頭に,より多くの国が高齢化や労働人口の減少に直面する中,OECDはジェンダーに関する政策議論に注力してきました。OECDの取組は,特に3つの「E」,すなわち,教育(education),雇用(employment),起業(entrepreneurship)への平等なアクセスを確保するための政策に焦点を当てています。
OECDの分析は,東南アジアの文脈でも有益な示唆を提供しています。例えば,本セッションで用意されたOECDとASEANの報告書によれば,女性による資本や信用への限られたアクセスが,女性が経営するビジネスの拡大の潜在性を阻害しています。
今後20〜30年で急速な人口転換を迎えるASEANでは,女性の参画はその重要性と緊急性を増しつつあります。
この文脈において,SEARPを含め,ASEAN各国はいつでもこの分野におけるOECDの高い専門性を利用可能であることを強調します。
最後になりましたが,ASEAN各国が,誰も取り残さずに,包摂的な成長を実現するために,OECDを更に活用していくことを強く期待しています。
ありがとうございました。