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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] TICAD閣僚会合閉会式 河野太郎外務大臣スピーチ

[場所] 東京
[年月日] 2018年10月7日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

【冒頭】

・二日間にわたる皆様の積極的な貢献に心から感謝。TICAD7への道筋を開く非常に実り多い議論ができたと考える。

【議長サマリー紹介,各セッションの総括】

・各議論の要旨は,配布した共同議長サマリーで概略が説明されている。主要な点を以下に述べる。

【全体会合1:TICADVI以降の開発動向と課題】

・全体会合1では,マクロ経済の前向きな傾向を確認し,アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)設立協定の署名,保健,教育,防災等の分野における社会的強靭性の向上のための国レベル,地域レベルでの取組といった昨今の成果を評価する。また,アフリカの一部の国で行われた平和的な政権交代や平和に向けた動きといった,ガバナンス改善の事例も確認した。その一方で,債務持続性の問題を含む各分野に課題があることも認識した。アフリカへの民間投資,特に日本企業からの投資の拡大に対する,アフリカからの高い期待も改めて確認。日本はアフリカとの官民連携の推進にコミットしている。

【全体会合2:包摂的成長に向けた経済構造転換】

・全体会合2では,持続可能な発展のためには,経済の多角化及び価値の付加の必要性を確認。社会経済の構造転換のためのあり得る原動力として,以下を含む分野を特定した。農業部門の現代化,零細・中小企業(MSME)の支援,科学技術イノベーション(STI)の促進等である。また,海洋安全保障や法の支配を強化すると共に,ブルーエコノミーを推進する重要性も繰り返した。また,債務持続性や不十分なビジネス環境が官民の投資を妨げており,こうしたボトルネックへの対処が急務であると認識。公正で透明かつ開かれたビジネス環境の促進のための,アフリカの同僚達の取組に感銘を受けた。

【全体会合3:人間の安全保障のための健康で,持続可能で安定した社会】

・全体会合3では,人間の安全保障の分野における進捗を確認。社会の強靭性と生産性を強化するためには,ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進が引き続き重要。また,アフリカ諸国は気候変動の影響に対し最も脆弱であることから,防災の重要性についても強調。急速な都市化と人口変動の問題も重要なテーマである。グッドガバナンスや法の支配,そして人権に重きを置き,平和で安定した地域を築く決意を改めて確信。以上の点から,アフリカ主導で解決策を見いだすためには,アフリカの声をしっかり聞き,反映すべきである。

【全体会合4:アフリカ域内及び域外との連結性強化】

・全体会合4では,「連結性」の問題を提起した。質の高いインフラを通じた物理的連結性,デジタルインフラや制度的な調和を通じた連結性,そして,観光,文化,スポーツ,学術等の分野における人的交流を通じた人材面の連結性をいかに強化するかにつき議論した。また,国際港湾を含む主要インフラを,公平で,透明で,かつ,開かれた手法で機能させる必要がある点において一致した。

【結び:TICAD7へ向けて】

・最後に,TICAD7の成功と,TICADプロセスを通じたアジェンダ2063及び持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて協働することに我々は完全にコミットしていると確認している。

・本会議を成功させるべく,懸命な努力と莫大な時間を費やした共催者の皆様に改めてお礼申し上げたい。また,多大なる貢献をしてくださった参加者に,感謝を申し上げる。そして,現AU議長国であるルワンダと次回議長国のエジプトにも特別に感謝したい。

・次の目的地は横浜である。アフリカの発展の具体化に向けて高まる機運とともに,来年8月末に再び共に集まりたい。来年の夏,首脳会合で各国首脳の皆様とお会いできることを楽しみにしている。