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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 慶應義塾大学における河野外務大臣特別講義「河野太郎,ODAを語る」

[場所] 
[年月日] 2019年6月17日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

外務大臣を拝命してから本日でちょうど670日になりました。この間に訪問した国の数は,延べ106か国であり,6日に1か国行っている計算です。アメリカのように何度も行っている国もあるので,国の数で言うと66か国となり,10日に1か国,新しい国に行っていることになります。総飛行距離は約100万km,地球を25周分,宇宙ステーションと地球の間を1000回以上往復したことになります。

ODAの話をさせていただきます。日本が税収も多く財政黒字であるときであれば別ですが,今はバブルが崩壊しデフレが続き税収も上がらず,財政赤字は右肩上がりで社会保障による国民負担が増えているというときに,なぜ税金を原資とするODAで外国を支援する必要があるのか,といった批判があります。よく言われていたのが,GDPでは日本を追い越して,国連の安保理の常任理事国でもある中国になんで日本がODAを出さなきゃいけないんだ,それはおかしいだろ,という批判はずいぶんありました。

これからの財政状況を考えれば,国民の皆様の理解無しにODAを行うことは難しいと考えます。外務省が単に「ODAは大事だ!」と言っているだけでは,世の中にはたぶん通用しないんだろうと思うんです。今,外務省の中では日々,これからの日本のODAをどうするのか,どうしたらよいのか,どういうことを考えてODAに関する方針を決めたらよいのか,限られた財政の中でODAをどのようにしていくのか,こんなプロジェクトやめちまえ!こういうのをやったらいいんじゃないか,という議論をしています。今日は,次世代を背負う若い人に,こういった外務省で議論している話を聞いてもらい,ご意見を伺いたいと思います。

国から国へのODAには3つのやり方があります。お金を貸す「円借款」。インフラ整備には多額のお金がかかるので,そのために低金利・長期でお金を貸して,後でゆっくり返してくださいというのが円借款です。

2番目が,お金を提供する「無償資金協力」。病院や自然災害を防ぐための堤防を造る,自然災害に遭ったところに食料支援を行う,あるいは干ばつ,内戦等で避難を余儀なくされている人たちの水や食料,医療を提供したりするために必要なお金を提供します。

3番目が,色々な技術を教える「技術協力」。魚をあげても食べてしまえば終わりですが,魚の捕り方を教えれば,いつでも自分で魚を捕ってお腹をいっぱいにすることができるようになります。魚の捕り方,技術を教えるのが技術協力です。

ODA予算の話をするときに中心になるのは,「無償資金協力」と「技術協力」です。これらは政府の一般会計から出します。「円借款」は,相手国から返ってくるお金や利子もあるので,JICAの有償資金協力勘定という別立ての財布で管理をしています。

ODA予算のピークは1997年,1兆1687億円でした。2018年は5538億円ですから,ほぼ半分になりました。私はピークの1年前,1996年に初当選しました。当初から外務委員会で,ODAを半減しようと言っておりました。日本が管理できる金額ではないと考えたからです。そして減らした半分の半分,つまり4分の1を外務省の出張旅費等のいわゆる足腰予算に回し,4分の1は財務省に返せばよいと言い続けてきました。

外務大臣になったときには,ODA予算は既に半分になっていました。1997年の政府の予算総額は約77兆円。今年度は101兆円ですから,予算全体に占めるODAの割合は,ピーク時の1.5%から0.5%に,3分の1にまで減っています。

しかし,財政難で赤字の今,なぜODAを行うのかという議論は当然出ます。私の地元でも言われます。

1つには,「困っている人がいる」ということです。ものすごく困っている人たちに,その人たちよりは困っていない我々が少し手をさしのべるということは,やはりした方が良いのではないでしょうか。世界の約70億人の中で,1日の生活費が200円,1か月6000円以下の生活費という人が約10億人います。7人に1人が,水はどこかから汲んでこなければならず,毎日食べることも十分にできません。家族の誰かが病気になっても適切な薬を手に入れることはできません。

1日の生活費が200円を超えると,ときには食料や燃料を買うことができるようになります。電気がその村に通って,子どもは電球があれば夜も教科書を読んで勉強することができるようになる。ですが,家族が病気になってしまったりすると,また反対側へ落ちてしまう。そのようなギリギリの暮らしをしている人が約30億人います。70億人のうちの,絶対的貧困にある10億人をまず支えて,その少し上の30億人をなんとか上に引っ張り上げる。こういうことをやらなければいけないのではないか,それが1つです。

私は1984年にポーランドに留学をしました。真冬なのにお湯が出ない,シャンプー塗ったくって石けん塗ったくって,せーので息を止めてジャーッと冷たい水でそれを洗い流すっていうのを毎日やってましたけども,相当厳しい生活でした。1989年に冷戦が終わったときに,私はこれで世の中は幸せになり,平和の果実を皆が分かち合える,世界はもっと発展して平和になる,そう思いました。しかし残念ながらその後内戦やら何やらがずーっと続き, 2017年には,約7000万人の難民,国内避難民が住処を追われました。バングラデシュには,ミャンマー・ラカイン州に住んでいるイスラム教徒が100万人単位で逃げてきています。ヨルダンやレバノンは,内戦下のシリアからの難民を,コロンビア等はベネズエラから逃げてきた人を受け入れています。

元々あまり豊かでないコミュニティに難民・避難民が大挙して入ってくる訳ですから,水も食料も足りなくなります。難民も稼がなければなりませんから,雇用先があればいくらでも働きます。すると,その地域全体の給与体系が下がってしまう。難民の子どもたちも学校へ行かなければなりませんが,教室のスペースが足りない。そういう中でも難民の人を助けるためにコミュニティに受け入れている,あるいはキャンプを作ってそれを支えている。そういう人たちが難民・避難民を支えて頑張っているのなら,我々もそのコミュニティ,そして難民・避難民を支えていく必要があると思います。

2番目に「恩返し」。日本も,戦後の荒廃の中,外国からのODAで助けてもらいました。1946年から1951年までの6年間,アメリカの「ガリオア・エロア資金」から,当時の金額で13億ドル,今の価値で言うと約10兆円の無償援助を受け,これで小学校の給食も再開されました。また,世界銀行から約9億ドル,現在価値で6兆円の低金利の借款を受け,東名高速道路,黒部ダム,東海道新幹線等を整備しました。この借金を返し終わったのは1990年ですから,そう昔の話ではありません。私たちも一度助けてもらっているのだから,今,我々が発展した以上,次の国を助けなければなりません。

3番目に,「情けは人のためならず」。最近は,情けをかけるとその人のためにはならない,という解釈をする人がいるようなのですが,そうではありません。人を助けると,巡り巡って自分もどこかで助かるのです。例えば気候変動。ケニアのオルカリア地熱発電所は,日本のODAを活用して建設されました。地熱発電というのは二酸化炭素(CO2)を出しません。この地熱発電所の建設を助けることは,気候変動を止めるということであり,回り回って日本も裨益をします。風力発電も同じです。トンガでは,台風の多い沖縄のノウハウを活用して,風が強いときには風車を倒せる風力発電所を建設しています。メンテナンスのときも倒せますので,メンテナンスのコストも安く済みます。

また,テロ対策をどうするのか。スリランカで4月の末にテロがあり,日本人も亡くなりました。貧困で希望がないところは,どうしてもテロリストに引きずられやすいということがあります。それから,海を守る。海賊対策のために,ODAで海上の法執行機関の人材育成や,監視艇の供与等も行っています。また,今話題になっているプラスチックごみ。これは海流に乗って世界中の海を回ってしまいますから,プラスチックごみの発生をどこかで抑えることは,ひいては,日本にも裨益します。エボラ出血熱をコンゴ民主共和国で抑える,これも同じような話になるわけであります。

経済の国際化,相互依存が進む中で,日本の消費者へのメリットを作り出すODAもあります。今日本で輸入しているタコの約4割は,アフリカ北西部にあるモーリタニアという国から来ています。モーリタニアではタコはあまり食べていなかったようですが,タコは豊富だということで,日本の技術協力でタコ壺漁を教えて,面白いようにタコがとれるようになりました。そしてそのタコが今日本に来て,タコ焼きのタコの何割かはモーリタニア産です。

また,チリのサーモン。元々チリにはサーモンは一匹もいなかったそうなのですが,JICAが一からサーモンの養殖を始めた結果,今や一大産業となりました。それが回り回って日本の回転寿司のネタになる,そういうことなのだろうと思います。

これらのことを推し進めていくことによって,日本に対する信頼が高まっていくのです。例えば,来年のオリンピックの誘致を決めた,あるいは2025年の大阪万博の誘致を決めたときです。「万博お願いします」「オリンピックお願いします」っていうと,多くの国が,いいですよ,分かっていますよ,日本には常々お世話になっているから,こういうときにしっかりと日本にご恩返しをしたいと思っている,と言ってくれました。国連の安保理改革で日本を新たに常任理事国に加えることについても同じです。

外務大臣として色々な国に行き,外務大臣を始め色々な人と話をすると,日本に対する信頼が絶大であることに気が付きます。本当にありがたいことです。「日本は意思決定には時間がかかる」と,半分向こうも笑いながら言います。即断即決はしないよね,日本は意思決定に時間がかかるよねって。だけど日本は,一旦決めたら最後までとことんやりますし,その品質はとことん良い。壊れてもきちんとメンテナンスをし,押しつけがましくない。相手の身になって考え,丁寧に最後まできちんとやる。その信頼感は,どこに行っても共通しています。多くの先輩方がやってきてくれたことが,今,日本の信頼につながっています。

こういうことを考えると,ODAを全てやめてしまえという人は,あまりいないのではないでしょうか。しかし税金ですから,これがちゃんと管理されて,ちゃんと役に立って,ちゃんと効果を発現しているかどうかは,きちんとチェックしなければなりません。先ほどODA予算は半減したとお話しましたが,今後はまずプライマリーバランスを均衡させ,そこから先は財政収支を均衡させなければならず,そこまでやるとなると,やはり「ODAを削れ」という圧力は増えてくるだろうと思います。そういった中で,ODAの効果を最大化していくためにはどうしたらいいのか。それが日本の信頼にどうつながるか,あるいは日本の外交のツールとして,日本に頼まれたら「日本を支持する」と言っていただくところにどう結びつけられるか,そうしたことを考えて,優先順位をどうするのかについて,今まで以上にシビアにやっていかなければならないと思います。

今日,国際協力局長がそこに座っていますが,このODAマンは実は局長をモデルにしていると言われておりますけども,今彼らと議論しているのは,例えばこのODAプロジェクトに使う1万円で100万円分の効果があるプロジェクトと,3万円分の効果があるプロジェクトがあれば,どちらを選択するか。それだけで決める訳ではありませんが,一つの判断基準になります。

ビル・ゲイツさんという方がいらっしゃいます。マイクロソフトでいろんなことをやって今ゲイツ財団を通してアフリカを中心に世界中の開発の支援をしているマイクロソフトのビル・ゲイツ前会長は,成果を数字で測れるものでなければ資金を出さないそうです。教育,保健衛生,農業等は数字で測れるが,インフラはリターンを数字で示しにくいのでインフラはやらないのが彼のポリシーということです。

日本はバブルの頃の一時期,ODAの額が世界一という時代がありました。それを誇り,高順位を維持するための議論をしていた頃もありました。しかし,私はそうした議論には全く意味が無いと思います。金額の順位ではなく,税金から出すODAでどういう効果が出ているのか,何が現場で起きているのかが,その効用を最大化することが大事なのです。

私は今,ライザップじゃないですけれども,日本のODAはこれから結果にコミットしなければいけないと考えています。

では,何にコミットしていくべきなのか,日本のODAは何を目指すのか。

日本のODAの理念の1つの柱は,「人間の安全保障」という考え方です。戦争に巻き込まれない,戦争になっても勝てる,国の安全をどう守るか,といった国の安全保障のみならず,そのさらに向こうには,その国に住んでいる一人一人の人間が本当に豊かで尊厳のある,意味のある健康な暮らしをできているのか。国の安全保障がちゃんとしていても,実はその国の中に健康的な生活が送れない,幸せな生活が送れない,もっと極端なことを言えば,国は豊かでも飢えている人が大勢いる,これではダメだろうと思います。日本のODAは,一人一人の人間がきちんと健康で文化的で安全な暮らしをしているかどうかというところへの目配りを大切にしています。それが今,「誰一人取り残さない」というSDGsの考え方につながってきた。日本が提唱した「人間の安全保障」という考え方が,SDGsにつながっていったのだと思います。

爆撃で黒板が吹っ飛んでいる教室の中で,一生懸命勉強しているような生徒たちがいるのです。1日200円以下で暮らしている絶対的貧困を無くす,生活に必要な安全な水へのアクセスがきちんと確保できる,子どもたちが常に必要最低限の栄養がとれる,必要最低限の衛生保健のサービスを受けることができる,基礎的な初等教育は全員が確実に受けられるようになる。こうしたことが,日本がやらなければいけないことなのだと思います。

絶対的貧困にある10億人のうちの約1億1300万人,特に中東・アフリカを中心に,深刻な飢餓に苦しんでいます。また,日本は1993年,インドネシアで母子手帳を導入しました。これにより,インドネシアの乳幼児死亡率が約半分になりました。他の途上国でも,同じような取組をやったらどうでしょうか。

もう1つの柱は,人材育成です。魚の捕り方を教えるにも,少なくとも魚の捕り方を学ぶ人材がいなければ教えられません。日本はこれまでに,187か国・地域から,60万人以上の研修生を受け入れ,様々な職業訓練を行ったり,各国政府の職員をトレーニングしたりと,色々な人材育成を行ってきました。2018年から2020年の3年間で,少なくとも400万人の途上国の女性に,教育や人材育成の機会を提供したいと思っています。初等・中等教育から職業訓練まで,いろんな形の人材育成を日本は提供していきたいと思っています。

3つ目は,司法整備支援,制度構築です。いろんな国が憲法を持っていますけれども,憲法だけでは国は動きません。経済を発展させようと思えば,会社法,破産法,商法も必要です。国によっては,刑法が未整備のところもあります。日本は,いろんな国の法制度整備支援をやってまいりました。私が非常に大事だと思っているのは,日本と中国の途上国支援の一番の違いはここなのかもしれないと思っています。民主主義,自由,基本的人権,法の支配,こういう考え方に裏打ちされた日本の法制度整備支援をきちんとやれる。じゃあ同じことが中国にできるかというと,なかなかそうはいかないのだろうと思います。だから,この分野は日本がしっかりやっていきたいと思っています。

今年,横浜で7回目のTICAD,アフリカ開発会議を開催します。アフリカの国の中には,国の制度,例えば,選挙,議会とか,司法とか,警察とか,税関とか,国境管理とか,そういう本来国がきちんと整備しなければいけない制度がまだ十分に整備されていないところがあります。すると,問題が起きたときに,その国の人は国家を頼らずに,自分の所属している部族等を頼ります。その結果として内戦が起きてしまう,それがアフリカの発展を妨げてしまう。だったら日本はアフリカでそういう制度構築の支援をやらないといけないのではないか,やれるのではないかと思っています。

橋,道路といったインフラは非常にお金がかかります。かつてのように無償資金でインフラを整備する余裕は日本にはなくなってきました。安い金利の長期の円借款は使い勝手が良いので,日本の円借款がほしい,という国はたくさんあります。しかし,その国に返済能力がない場合は貸せません。途上国のインフラ投資の需要は莫大です。道路,鉄道,港,いくらお金を借りても足りないという状況になっていますが,日本がやれることには限界があります。

日本は今,アメリカ,オーストラリア,EUと手を組んで,そのような需要にきちんと応えられるような資金の提供を考えています。

他方,途上国に中国がものすごい勢いでお金を貸していて,インフラというとすぐに中国のお金が出ていきますが,いくつか問題があります。まず,金利が高い。それから,貸す相手の財政状況がほとんど考慮されていなかったことから,お金を返せない,ということが起きています。一番有名なのが,スリランカのハンバントタという港です。この港を開発するために,中国から莫大な資金を借り入れ,開発はしましたが,返済が困難となり,港の運営権を99年間中国企業に譲り渡すということになりました。

今,こういう事例があちこちで起きています。日本,アメリカやEUは,インフラを開発するなら,いくつか国際的ルールがあるよね,と言ってきました。1つは,インフラ投資は透明性をもって計画を作り,造った港,空港,鉄道は万人に開放されるべきです。もう1つは,初期投資は安いがメンテナンスコストがかかっているというインフラプロジェクトがたくさんあることから,初期投資だけではなく,ライフサイクルから見て一番安いやり方はどういうものか,しっかり考える必要があります。そして,借り手政府の財政状況を考慮して融資する必要があります。日本はこれまで,こういった点を含めて,インフラ投資には質の高さが必要だと主張してきています。

4月末に,中国で開催された第2回「一帯一路」フォーラムで,中国の習近平主席が,基調演説において「質の高い発展」,「国際ルール・スタンダード」,「ビジネスと財務の持続可能性」について触れていました。日本の主張を中国も少し気にするようになってきたのかなと思っています。

SDGsを達成するためには年間2.5兆ドルもの資金が不足しているということが一番問題になっています。ODA予算を倍にしても,SDGsの資金ギャップを埋めることは到底できません。今,私が色々な会議で申し上げていることは,グローバリゼーションの光が当たっている場所から,その陰になってしまった場所に手を差し伸べる必要がある,きちんと資金を回す必要があるということです。私は国際連帯税と言っていますが,例えば莫大な為替取引に0.0001%くらいの国際連帯税を掛けさせてもらい,その税収を国際機関に直接入れ,その国際機関が緊急の人道支援を行うという提案をしており,多くの国から賛同を得ています。日本は今年,このような新しい方法で資金を捻出することについて議論するための国際的なグループである「開発のための革新的資金調達リーディング・グループ」の議長国として,国際社会における議論をリードしていきます。また,外務省にこの課題について議論してもらうための有識者懇談会を立ち上げて,緻密な議論を行いたいと考えています。

今までODAというと,「JICA」との声が上がっていましたが,それは違うと思います。もちろん,JICAがこれまでやってきたことは大事ですし,JICAの能力もあると考えますが,JICAだけではコストが高くなりますし,別の選択肢に目がいかなくなるので,JICAだけでなく,色々なNGOやステークホルダーが出て行って日本の日の丸を立てて,色々な国の支援を行うことが,これから大事になってくると考えます。

例えば,カンボジアの水道事業は自治体の水道局に協力してもらいました。NGOも,今までは事業の5%だけを一般管理費に使ってよいとしていましたが,それでは赤字になってしまうので,最高で15%まで一般管理費として使って良いというルール変更をしました。民間企業にも協力してもらわないといけないと考えています。

先ほど申し上げたとおり,日本のODA予算はピーク時に比べれば半減しています。これから先どうするかということを考えると,結果にコミットすることが重要です。いくらなのか,金額で何番なのかといったコミットはやめて,日本のODAで何を達成するのか,現場で何ができるのか,例えばインドネシアで乳幼児死亡率を日本並みの数字にする,あるいは,アフリカの飢餓に苦しむ人々を支える,そういったことをきちんとコミットしようという話をしています。

1億人の飢えている人がいるならば,国際的な連携をする,1億人全員を日本が支えるわけにいかないのだったら,その1割の1千万人だけでも日本が責任を持つ。もし今の予算で700万人しか支援できないのなら,残った300万人については知恵の出しようで何とかすべきだと思います。限られた財源しかないけれど,目標との差を知恵でつなぐというのが,これからの日本のODAのやり方だろうと考えています。

何をやらないといけないのか,結果にコミットして,どうやったらその結果が達成できるか,知恵とイノベーションで進める,こういうことを,これからのODAでやっていこうと考えています。

御清聴ありがとうございました。