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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2022年コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所(CJEB)年次東京カンファレンスにおける林外務大臣基調講演:日本外交の課題~国家間競争時代における日本外交のフロンティア

[場所] 
[年月日] 2022年5月25日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

0 冒頭

 ワインシュタイン所長、御出席の皆様、

 3年ぶりとなるCJEB年次東京カンファレンスの開催を心からお祝い申し上げます。

 昨年11月に外務大臣に就任して以来、国際情勢の変化はその速さを一段と増し、従来の外交では対処できない事態が次々に生じています。このような状況の中、「不確実な世界のなかの日本」という時宜を得たテーマの下、本年の会議のトップバッターとして基調講演を行う機会を頂き、大変光栄です。

 本日は、「国家間競争時代における日本外交のフロンティア」と題して、日本外交の課題についてお話しします。

1 国家間競争時代に突入した国際社会

(1)国際情勢

 まずは日本を取り巻く国際情勢から見ていきましょう。

 現在世界は、20世紀末の冷戦終結以来の転換期を迎えています。冷戦終結後、米国はその圧倒的な政治力・経済力・軍事力によって、法の支配に基づく自由で開かれた安定的な国際秩序を支えてきました。その下で、中国、新興国は力を蓄え、政治的・経済的な勃興を果たしてきました。これは同時に、主要先進国の影響力の相対化をもたらしたのです。このような国際社会のパワーバランスの変化により、米国が単独で世界の平和と繁栄を支える時代は終わりを迎え、国際社会は国家間競争の時代に本格的に突入したと言えます。

 2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略は、この時代の転換を誰の目にも明らかなものとしました。ロシアによるこの侵略行為は、冷戦後の秩序のみならず、人類が過去1世紀にわたり築き上げてきた国際秩序の根幹を揺るがす暴挙です。また、このロシアの侵略は、世界のエネルギー・食糧供給にも混乱をもたらし、当事国、地域に留まらない経済問題を表面化させています。

 このような暴挙に対し、国際社会が結束して毅然と対応し、国際秩序を守り抜けるかが次の時代を占う試金石となります。

(2)日本外交の課題

 では、このような時代において、日本外交が取り組むべき課題とは何でしょうか。

 私は、外務大臣への就任時に、日本外交の新しいフロンティアを切り拓くことを宣明しました。これは、新たな国際社会の現実、すなわち国家間競争時代の始まりのなかで、日本、そして世界の平和と繁栄にとって望ましい国際秩序を擁護し、強化するための外交を展開する決意を述べたものでした。この半年間はその実現に向けて、各国のカウンターパートと、オンラインを含め、積極的に会談を重ね、また、先日のドイツでのG7外相会談への出席を始め、対面外交を再始動させています。

 ここでいう国際秩序の根幹には、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値がなければなりません。これらの価値は、戦後日本が一貫して擁護し、今日の日本への「信頼」の基礎となっているものです。岸田総理が外交の基本方針として掲げている3つの「覚悟」の筆頭も、この普遍的価値を守り抜く覚悟です。

 そしてまた、力による一方的な現状変更の試みが平和と繁栄を破壊している現実を目前にして、日本が擁護する国際秩序は、このような暴挙を許さない、法の支配に基づく国際秩序である必要があります。国家間競争の時代においても、法の支配に基づく国際秩序への支持を広げていくことが世界の平和と繁栄のための不可欠の条件です。

 日本外交がこうした国際秩序を擁護し、強化していくためには、第一に、力による一方的な現状変更の試みを許さない新たな枠組みを再構築し、国際社会における法の支配に基づく秩序への支持を拡大・強化する努力を主導せねばなりません。そして第二に、新たな現実に対応する、日本自身の対処力や強靱性も強化していく必要があります。

 この2点について、更に、具体的に述べていきましょう。

2 法の支配に基づく秩序の強化

(1)秩序を支える枠組みの再構築

 目下の世界において、法の支配に基づく国際秩序の最大の脅威となっているのはロシアによるウクライナ侵略です。この暴挙に対し、国際社会が結束し、ロシアの一連の行動に高い代償が伴うことを示していけるかが、新たな時代の進路にとって極めて重要です。

 同時に、この時代の先を見据えた外交を進める上では、ロシアの行動を止めることができなかった、現在の秩序を支える既存の枠組みの問題点を直視し、新たな暴挙を許さないための枠組み、グローバル・ガバナンスのあり方を検討することも急務です。

 現在国際社会においては、今回のロシアによる侵略以外にも、力による一方的な現状変更の試みや他国の政策の変更を企図した経済的威圧、更には偽情報の拡散やサイバー攻撃といった新たな課題が生じています。これらは国連憲章にも裏付けられた国際社会の基本的ルールへの挑戦です。こうした挑戦に対し、これを予防・抑止し、ひとたび事態が生じれば、迅速に対処し、影響を最小化させる仕組みを強化していくことが重要です。

 第二次世界大戦の終結以降、このグローバル・ガバナンスの中心を担ってきたのが国連です。そして、今回の国連安全保障理事会の常任理事国による露骨な侵略行為は、国連や安全保障理事会に内在する限界を改めて露呈したにとどまらず、国連憲章という大前提すら覆しかねない事態であり、国連システムのあり方を見直す差し迫った必要性を示すものです。国連が今後もその普遍性と正統性を維持しながら、国際社会の平和と安定、課題の解決に貢献できるようにするためには、その限界を補い、改革し、強化しなければなりません。日本が重視する安保理改革はもちろんです。しかし、それだけではなく、国連総会の更なる活用、紛争予防の視点の導入などを含め、国連を全体として強化していくことが重要です。

(2)秩序そのものの強化

 ア 同志国の結束、輪を広げる

 秩序を支える枠組みを強化すると同時に、法の支配に基づく秩序そのものを強化していくことも重要です。秩序の強靱性とは、それを支える国々の数とその意思の強さです。したがって、日本としては、秩序を支える強い意思を共有する同志国との連携を強化しつつ、その輪を広げていく必要があります。

 力による一方的な現状変更の試みへの対抗を共に主導するパートナーとして、今回のロシアによる侵略に対し最も有効に対応してきたのはG7です。本年だけで既に7回というかつてない異例の頻度で、G7外相会合が開催されています。先日のドイツでの会合では、ウクライナ情勢のみならず、インド太平洋における諸課題等、様々な論点についてG7のカウンターパートと率直な議論を行いました。今後とも、戦略的課題に対処していくに当たり、G7を中心としたパートナー国との連携を強化し、共に指導力を発揮することが重要です。

 さらに、G7以外の同志国とも連携を深めていかねばなりません。従来、地域の安全保障については、集団防衛を担う機構であるNATOを有する欧州に対し、アジア太平洋では、各国が米国との二国間同盟を結ぶという、いわゆる「ハブアンドスポーク」が地域の安全保障を担ってきました。

 先月、私は日本の外相として初めてNATOの外相会合に出席してきました。私からは、欧州とアジアの安全保障を切り離して論じることは出来ないことを強調し、参加国と認識を共有することが出来ました。また、NATOのアジア太平洋のパートナーとの関係強化の取組を歓迎し、日NATO間の具体的協力の推進も確認できました。

 このように地域をまたいだ安全保障協力、更には安全保障を越えた幅広い協力を、日本が主導力を発揮する形で進めており、共に国際秩序を支える意思を持つ同志国との連携強化に取り組んでいます。

 最後に、同志国を広げていく努力も必要です。3月の国連総会緊急特別会合での「ウクライナに対する侵略」決議と「ウクライナに対する侵略の人道上の影響」決議は、共に140か国以上という多数の賛成を得て採択されました。国連憲章、そしてそれによって支えられた秩序を擁護する意思が幅広い国々に共有されていることを示したものと言えるでしょう。しかし、賛成した国々の中には、新型コロナの影響により苦境にある国や、ウクライナ情勢に起因する経済危機に苦しむ国も含まれています。こうした国々の主張に耳を傾けることも、秩序への支持の裾野を広げていく上で欠かせません。

 イ ルールに基づく国際秩序への支持拡大

 今日、21世紀の国際社会に、独自の世界観、歴史観に基づき外国に政策や体制の変更を要求し、それが実現しないと見るや武力の行使も厭わない指導者が存在することは否定できない事実です。また、秩序への挑戦には至らないまでも、既存の国際秩序に懐疑的であったり、反発したりする国々も存在します。このような国際社会で、独善的な体制に対抗し、幅広い支持を得る秩序とは、普遍的な魅力を有する包摂的な秩序である必要があります。

 近年日本が掲げ、多くの国から支持を得ているビジョンが、「自由で開かれたインド太平洋」、FOIPです。その目的は、地域全体の平和と繁栄を実現することです。包括的かつ透明性のある方法で、インド太平洋にルールに基づく国際秩序を確保する、そして、そのような自由で開かれた秩序を発展させていくことをめざしています。「法の支配」は、まさにそれを支えるものです。

 日本は、各国の発展段階が異なることを前提とした上で、すべての国にとって重要なことを一緒に発展させていく、こうした考えの下、ビジョンを共有するいずれの国とも協力してFOIPの実現に向けた取組を進めています。米国は、このビジョンを実現していく上で最も重要なパートナーです。また、このメッセージの収録後になりますが、日米豪印でも、今月24日に、ここ東京に米国、豪州、インドの首脳を招待して、日本が日米豪印首脳会合を主催し、改めてFOIPのビジョンへのコミットメントを東京から発信します。

 FOIPを実現する上で、要となるのがASEANです。日本は、一貫してASEAN一体性及び中心性を支持しています。2019年には、ASEANはFOIPと本質的な原則を共有する「インド太平洋に関するASEANアウトルック」を採択しました。今月の岸田総理の東南アジア歴訪でも、FOIPの実現に向けた連携を各国の首脳と確認しました。

 私自身、先に触れたNATO外相会合において、NATOのインド太平洋への更なる関与に向けた具体的協力を進めるとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を確立するため、FOIPの実現に向けた連携を強化していくことを確認しました。更に、4月から5月にかけての「中央アジア+日本」対話・第8回外相会合やカザフスタン、ウズベキスタン及びモンゴル訪問、フィジー、パラオ訪問といった機会にも、こうした国々との間で連携の強化を確認するなど、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けた連携が着実に拡大しています。

 ウ より広範な外交課題の解決の主導

 日本が、同志国と共に、国際秩序の強化を主導していくには、我々の掲げる秩序そのものの普遍性のある魅力に加え、世界の国々が直面している課題に対し、解決の道筋を示し、新たなルール、スタンダード作りを主導していくことも重要です。

 ロシアによるウクライナ侵略は、世界各地でエネルギー、食糧需給の逼迫や急激な物価上昇をもたらしています。中東・アフリカ諸国の中には、穀物の多くをロシアやウクライナからの輸入に依存している国々もあり、食糧安全保障上の危機が生じています。日本は、G7や国際機関などとも連携しながら、食料価格の安定化や脆弱な国への支援に取り組んでいます。本件については、先日のG7外相会合でも議論し、「ロシアによるウクライナに対する侵略戦争が世界の食料安全保障に及ぼす影響に関するG7外相のコミットメント」を確認しました。

 世界経済をめぐっては、経済的威圧や不公正な貿易慣行を排し、自由で公正な経済圏の拡大によって、新型コロナからの回復、新たな成長を実現していくことも重要です。日本は自由貿易の旗振り役として、TPPのハイスタンダードの維持や自由で開かれた多角的貿易体制の礎たるWTOの再活性化に引き続き取り組んでいきます。

 ウクライナにおける危機に世界の関心が集まる一方で、気候変動や国際保健といった人間の安全保障をめぐる課題に対する取組も歩みを緩めてはなりません。元々脆弱性を抱える国々にとって、新型コロナによるダメージが、そしてロシアの侵略に起因する困難が加わったことで、危機は一層差し迫ったものとなっています。こうした国々にとって、我々がこれらの喫緊の課題に真剣なコミットメントを継続することが、我々の掲げる秩序に対する信頼の基盤となります。日本は、戦略的・効果的なODAの活用等を通じて、持続可能な開発目標、SDGsの達成や「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組を加速していきます。

 さらに、ロシアによる核兵器使用の可能性への言及や北朝鮮による引き続きの核・ミサイル開発といった現実を受けて、「核兵器のない世界」の実現に向けた国際社会の取組も困難に直面しています。G7外相も、先の会合において、「本年中に開催されるNPT運用検討会議において意義のある成果を収めることが我々の優先事項であることを改めて表明」しました。日本は、唯一の戦争被爆国として、立場の異なる国々の間の橋渡しに努め、日本の安全保障も考慮した、現実的・実践的な取組を積み重ねていきます。

3 日本の対処力・強靱性の強化

(1)日本を取り巻く脅威の多様化

 ここまで、国際社会における秩序の強化を主導する日本外交の取組について述べてきました。一方で、時代の転換期における変化の波は、日本にも等しく押し寄せています。続いては、新たな時代に日本自身が抱えるリスクへの対応について見ていきましょう。

 今日、日本を取り巻く脅威は多様化しており、新たな現実に対応する対処力と強靱性の強化が喫緊の課題となっています。  第一に、東アジアの安全保障環境は、その厳しさを一層増しています。現在起きていることを俯瞰すれば、ロシア、中国、北朝鮮という3つの課題に日本は直面しています。ロシアによるウクライナ侵略に対処しつつ、いかなる主体にも一方的な現状変更の試みや挑発的な行動を進める機会の窓が開いたと誤認させてはなりません。

 第二に、拡大する情報空間におけるリスクの高まりがあります。重要インフラに対するサイバー攻撃やSNS等を通じた偽情報の拡散など、ハイブリッド戦の脅威は、今回のウクライナ侵略で一層明らかとなってきています。とりわけ、2014年のロシアによるクリミア併合や2016年の米国大統領選挙への介入疑惑を契機に広く知られるようになり、現在のウクライナ危機をめぐって、深刻な脅威として顕在化しています。これは、有事・平時を問わず、民主主義社会の根幹に対する挑戦です。

 第三に、経済領域における安全保障リスクの拡大、すなわち経済安全保障が挙げられます。AIや量子といった最先端の技術も、軍事転用されることで安全保障上のリスクとなり得ます。また、新型コロナや今回のウクライナ危機により、世界のサプライチェーンが持つ偏りが、安定的な物流に脆弱性をもたらすことが明らかとなりました。エネルギーや食糧といった基幹物資の供給の混乱は、急激な国際価格の高騰をもたらし、安全保障上もリスクを生じさせています。経済的な依存関係を利用した威圧を躊躇しない国が存在する事実は、こうしたリスクが一過性のものでないことを示しています。

(2)日本の取組

 こうした情勢に対応した日本の取組は着実に進展しています。

 一層厳しさを増す安全保障環境においても、日本外交・安全保障の基軸が日米同盟であることには変わりはありません。私自身、就任以来、ブリンケン国務長官との間で、電話も含め累次の外相会談を実施するなど、史上かつてなく強固なものとなっている日米同盟の抑止力・対処力を一層強化すべく、緊密に連携しています。

 同時に、日本自身の防衛力の抜本的な強化も必要です。そのためにも、新たな国家安全保障戦略などの策定に取り組んでいます。  経済と安全保障を横断する課題についても、日本は、国家安全保障上の新たな課題である「経済安全保障」として広く認識し、優先課題として取り組んでいます。今次国会で成立した法案については、明後日の小林大臣の講演に譲りたいと思いますが、経済安全保障の取組には、同盟国・同志国との連携も不可欠です。

 外務省としては、日米豪印の連携やG7などの枠組を活用し、東南アジア諸国を含む同志国との協力の拡大・深化を図ってきています。これは、経済構造の自律性の確保や技術優位性の獲得といった経済安全保障のための取組が外交上も重要であるためです。今般のウクライナ情勢を踏まえ、このような同志国との連携・協力は益々重要なものになっています。引き続き、安全保障政策や対外経済関係、国際法を所管する立場から、同盟国・同志国との連携強化や新たな課題に対応する国際規範の形成などに積極的に取り組んでいきます。

(3)内なる脆弱性の克服

 ここまで、変化する国際社会の、いわば外在的なリスクへの対応を見てきました。しかし、新たな時代の外交を進める上では、我々自身の内に抱える脆弱性にも対処する必要があります。

 新自由主義的な考え方の下で実現した急激な経済成長は、一方で国内の格差や貧困を拡大させ、中間層を縮小させました。また、デジタル化の進展は、生活の利便性の向上という恩恵と共に、グローバル化の負の側面を加速化する結果を生み出し、また、人々に自らが欲する情報のみを与えるという選択を許容することで、分断を助長している側面もあります。こうして生じる社会の分断は、国民の理解を得て進めるべき民主主義政府の外交にも影響を及ぼしています。そしてここに、権威主義的な考えが付け入る隙も生じています。さらに、こうした分断が民主主義社会の弱さと見られることで生じるリスクも看過できません。

 経済学の父と呼ばれるアダム・スミスは、「神の見えざる手」を説いた『国富論』の対となる著作として、共感を基礎とする市民社会の秩序、道徳に関する『道徳感情論』を著しました。すなわち、資本主義経済は、共感に支えられた健全な市民社会なくしては成立しないとしつつ、過度の富の追求が社会の秩序や繁栄を毀損する危険に警鐘を鳴らしています。

 資本主義経済の揺籃期から指摘されてきたこの難題の解決に、今世界各国が取り組んでいます。米国のバイデン政権は、ボトムアップとミドルアウトからの経済成長を掲げ、大型の経済政策を通じて、中間層の成長を支援しています。EUでも、新型コロナ後の経済復興計画である「次世代のEU」を通じ、格差の是正を含む経済・社会の変革も達成しようとしています。

 そして、日本では、岸田内閣の下、成長と分配の好循環による「新しい資本主義」によって、持続可能な経済社会を実現する取組を進めています。分厚い中間層を取り戻し、国民の皆さんへの丁寧な説明を通じて、国民と共にある外交・安全保障を推進していきます。

4 結語

 二度の世界大戦を経験した人類は、このような惨禍を二度と繰り返すことのないよう、紆余曲折を経ながらも法の支配に基づく国際秩序を築き上げてきました。日本もまた、この秩序の下で、第二次世界大戦からの復興と繁栄を実現してきました。今再び、世界は新たな時代への岐路に差し掛かっています。不確実性を増す国家間競争の時代において、それでも、同志国の輪を広げ、法の支配に基づく国際秩序を擁護していくことが、その恩恵の下で発展してきた日本の使命だと考えています。

 日本は、戦後一貫して平和国家としての道を歩み、アジア太平洋地域や国際社会の平和と安定に貢献してきました。人間の安全保障に立脚した途上国への開発協力を行うとともに、国際的なルール作りに取り組んできました。軍縮・不拡散や国際的な平和構築の取組にも貢献してきました。こうした努力により得た世界からの「信頼」こそが、新たな時代に、日本外交がそのフロンティアを切り拓く力の源泉となっています。先人の思いと遺産を引き継ぎ、そこに同志国との連携を始めとする新たな力を積み重ねることで、世界に平和と繁栄をもたらす秩序への支持を広げ、強化していく外交を主導していく決意です。

 御清聴ありがとうございました。