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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「女性・平和・リーダーシップ」シンポジウムにおける上川外務大臣ステートメント

[場所] 
[年月日] 2023年9月20日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 この度は、国際平和研究所(IPI)、アイルランド国連代表部、並びに笹川平和財団(SPF)共催による Innovations in Implementing the WPS agendaのシンポジウムの開催、おめでとうございます。

 私は、多くの友人の皆様と共に、昨年も「女性・平和・リーダーシップ」シンポジウムにパネリストとして参加しました。同シンポジウムでの経験に啓発され、その後、本日参加してくださっている米国の国務省等とも連携して、日本におけるWPSアジェンダの推進に向け、WPS議連を立ち上げました。WPSは当時、日本国内でほとんど知られていなかったこともあり、私は、議連の同僚議員とともに、集中的かつ速やかに、この課題を推進すべく、動き始めました。そのために、WPSに関する先進的な取組みを有する国々との対話を行ってまいりました。そして、国会議員として各国の先進的な実践を学びながら、政府への申し入れ等を行ってきました。その結果として、我が国の予算の基礎となる「経済財政運営と改革の基本方針2023(いわゆる「骨太方針2023」)」にWPSが含まれ、防衛省、法務省、消防庁等の国内関係省庁は、WPS担当窓口設定に向けて動き始めました。

 また、各国が有するWPSを進めるためのフレームワークに関する教訓を学びつつ日本としての体制を作るべく、今日の主催者である笹川平和財団とジョージタウン大学女性・平和・安全保障研究所所長をWPS議連の「国際連携パートナ(International Collaboration Partners)」の一つとして位置づけ、共に活動を続けてきました。

 私は、ちょうど1週間前に外務大臣に任命されました。そして今回は、外務大臣としてこの場に戻れたことを非常にうれしく思います。

 日本政府は、今、外務省を中心にWPSアジェンダの推進に向けて、国連、そして国際協力の分野で、取組みを強化しています。我々は、社会及び経済の問題として伝統的に議論されてきた女性と女児の問題を、国際平和と安全保障の領域に取り込んだWPSの重要性を認識しています。そして、今年4月に改訂したNational Action Planは、先に述べたこれまでの取組みに立脚しつつ、10のWPS関連安保理決議すべてをカバーするものになりました。National Action Plan は、紛争地における女性と女児の保護(Gender Based Violence(GBV)含む)や平和構築における女性の参画を推し進めるだけでなく、自然災害及び人的惨事の防止や意思決定における女性のリーダーシップの役割を高めるとの内容が盛り込まれています。また、男性・男児の意識と行動変容への取り組みを進めることや国内におけるWPSアジェンダに資する取り組みを促進することを明記いたしました。

 世界各地で自然災害が多発する中で、災害対応、防災や減災の分野にWPSアジェンダを組み込むことは極めて重要だと思っています。規模にもよりますが、自然災害に対応するためにも国際的な協力が必要とされることがあります。フォーカルポイント・ネットワークのメンバーや市民社会を含むすべてのアクターが情報を共有し、迅速かつ効果的に行動し、適切なリソースを動員できるよう、パートナーシップを強化することが重要であることを強調したいと思います。

 本日の趣旨にもありますように、どのようにして国連で行われている様々なハイレベルな議論の中にWPSアジェンダを盛り込むか、そして、各国が作成しているもしくは、作成しようとしている National Action Plan を、それぞれの国でどのように実践するかがカギとなります。

 アイルランド、メキシコ、ケニアのリーダーシップによる「The presidency trio for Women peace and security」の精神を、日本政府は、安保理の非常任理事国としてしっかり引き継ぎながら、引き続きWPSの議論を国連の重要アジェンダとして推進していきたいと思います。そして、各国が特に市民社会と連携して、国内のWPSアジェンダの推進に向けても一層努力していく必要があると思っています。私の議員としての経験から、議連を設立したり、国全体の体制作りに取り組むことも一つのイニシアチブだと思います。

 本シンポジウムに冒頭から参加できず残念ですが、本日のシンポジウムが成功裏に行われたことを嬉しく思います。また、日本の外務大臣として、WPSアジェンダの推進に向けて、国内外問わず、引き続き取り組んでいきたいと思います。

(了)