[文書名] 女性・平和・安全保障(WPS)フォーカルポイント・ネットワーク ハイレベル・サイドイベントにおける上川外務大臣ステートメント
「WPSフォーカルポイント・ネットワーク」ハイレベル・サイドイベント大臣ステートメント
ブリンケン長官、オトベスク大臣、御列席の皆様、
私は、昨年ニューヨークで開催されたWPSに関するシンポジウムにパネリストとして参加しました。同シンポジウムでの経験に啓発され、その後、本日参加してくださっている米国の国務省等とも連携して、日本におけるWPSアジェンダの推進に向け、WPS議連を立ち上げました。WPSは当時、日本国内でほとんど知られていなかったこともあり、私は、議連の同僚議員とともに、集中的かつ速やかに、この課題を推進すべく、動き始めました。
そのために、WPSに関する先進的な取組みを有する国々との対話を行ってまいりました。そして、国会議員として各国の先進的な実践を学びながら、政府への申し入れ等を行ってきました。その結果として、我が国の予算の基礎となる「経済財政運営と改革の基本方針2023(いわゆる「骨太方針2023」)」にWPSが含まれ、防衛省、法務省、消防庁等の国内関係省庁は、WPS担当窓口設定に向けて動き始めました。今回は、WPS推進のために外務大臣としてニューヨークに戻れたことを非常にうれしく思います。
ご列席の皆様、
日本政府は、今、外務省を中心にWPSアジェンダの推進に向けて、国連、そして国際協力の分野で、取組みを強化しています。我々は、社会及び経済の問題として伝統的に議論されてきた女性と女児の問題を、国際平和と安全保障の領域に取り込んだWPSの重要性を認識しています。そして、今年4月に改訂したNational Action Plan は、先に述べたこれまでの取組みに立脚しつつ、10のWPS関連安保理決議すべてをカバーするものになりました。National Action Plan は、紛争地における女性と女児の保護(Gender Based Violence(GBV)含む)や平和構築における女性の参画を推し進めるだけでなく、自然災害及び人的惨事の防止や意思決定における女性のリーダーシップの役割を高めるとの内容が盛り込まれています。また、男性・男児の意識と行動変容への取り組みを進めることや国内におけるWPSアジェンダに資する取り組みを促進することを明記いたしました。
世界各地で自然災害が多発する中で、災害対応、防災や減災の分野にWPSアジェンダを組み込むことは極めて重要だと思っています。規模にもよりますが、自然災害に対応するためにも国際的な協力が必要とされることがあります。フォーカルポイント・ネットワークのメンバーや市民社会を含むすべてのアクターが情報を共有し、迅速かつ効果的に行動し、適切なリソースを動員できるよう、パートナーシップを強化することが重要であることを強調したいと思います。
WPSの推進のためには、どのようにして国連で行われている様々なハイレベルな議論の中にWPSアジェンダを盛り込むか、そして、各国が作成しているもしくは、作成しようとしているNational Action Plan を、それぞれの国でどのように実践するかがカギとなります。
アイルランド、メキシコ、ケニアのリーダーシップによる「The presidency trio for Women peace and security」の精神を、日本政府は、安保理の非常任理事国としてしっかり引き継ぎながら、引き続きWPSの議論を国連の重要アジェンダとして推進していきたいと思います。そして、各国が特に市民社会と連携して、国内のWPSアジェンダの推進に向けても一層努力していく必要があると思っています。私の議員としての経験から、議連を設立したり、国全体の体制作りに取り組むことも一つのイニシアチブだと思います。
さらに、日本は、アジア各国、特にASEANとの間でWPS分野における連携を深め、アジアの視点を共有していきたいと思います。
アジアでは自然災害が多く、毎年多くの人々が避難を余儀なくされています。こういった災害現場で、女性の視点が欠如することによる様々な問題が発生していることも見過ごしてはなりません。グッド・プラクティスの共有や、防災・減災に向けたさらなる取組等、共に取り組めることは数多くあります。
日本ASEAN友好協力50周年の今年、日本は、WPSの分野においてもASEANとの協力を深めていきたいと思います。
WPSフォーカルポイント・ネットワークは、各国の教訓や好事例を共有する非常に有益な場です。日本は、分野横断的な連携を通じて、WPSフォーカルポイント・ネットワークのメンバーと共に、WPSアジェンダの推進に更に貢献していきます。
ありがとうございました。
(了)