[文書名] カイロ平和サミット:上川外務大臣スピーチ
アッサラーム・アレイクム・ジャミーアン(皆様に平安がありますように)。
イスラエル・パレスチナ情勢の緊張度が日増しに高まる中、今回の会合は非常に重要なタイミングでの開催であり、エルシーシ大統領の力強くリーダーシップに最大限の敬意を示したいと思います。
日本は、10月7日のハマス等によるテロ攻撃を改めて断固として非難します。国際社会はこのような行為を決して容認してはなりません。
同時に、日本は、(1)人質の即時解放・一般市民の安全確保、(2)すべての当事者が国際法を踏まえて行動すること、(3)事態の早期沈静化、が極めて重要であるとの立場を一貫してとっています。
情勢の不安定化が地域全体に波及するのを防ぎ、そして、情勢が可能な限り早期に沈静化するよう、外交努力を倍加させるべきです。
日本は、パレスチナ、イスラエル、アラブ諸国、イラン等の地域の主要な関係者と緊密に協議しています。17日には、G7議長国としてG7外相電話会合を主催しました。
特に今は、人道状況の悪化を最小限に食い止めることが何よりも重要です。ガザ地区にいる100万を超す罪のない方々が極限の状態におかれている。食料、水も電力も尽きようとしています。
我々が今やるべきことは二つです。第一に、ガザ地区の人々に、一日も早く必要な支援を届けること。第二に、ガザ地区に留めおかれている外国人のエジプトへの退避を実現すること。これら外国人はパレスチナの友人ばかりです。
また、ガザ地区の一般市民に対する支援として、既に総額1,000万ドル規模の緊急人道支援の実施を発表しています。これはあくまで支援の「第一弾」であり、今後も現地のニーズに沿った支援を、スピード感を持って検討していきます。
これに関連して、支援を実施する際には、実際に物資を一人一人に届けることが極めて重要であることを強調したいと思います。そのためにエジプトの役割が鍵となります。
今朝、今般の事案発生以後始めて、ガザ地区に支援物資を載せたトラックが入ったと承知しています。現地の人道状況の改善に向けた前向きな動きとして、これを歓迎し、関係者の皆様の努力に深く敬意を表したいと思います。
日本は、エジプトその他の関係国・機関と緊密に連携し、一刻も早く物資を届けるべく、最大限尽力していきます。
この機会に、中長期的なビジョンについても触れたいと思います。
先ほど述べたとおり、ハマス等によるテロ攻撃は完全に拒否されるべきものです。一方で、このような行為を賛美する市井の声が一部であるのも悲しい事実です。過去30年に及ぶ中東和平プロセスの見通しが未だ見えないことへの強烈なフラストレーションが改めて想起させられました。
今般の事案が、中東和平の道を閉ざすことになってはなりません。対話こそが解決の道です。「二国家解決」を支持する日本の立場は揺るぎません。
日本は和平プロセスの基盤となる、信頼醸成やパレスチナの経済的自立に向け、数十年にわたり支援してきました。10億ドルを超える国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)支援、「平和と繁栄の回廊」構想に基づくジェリコ農産加工団地(JAIP)のイニシアティブ等に見えるとおり、日本のパレスチナに対する確固たるコミットメントは、今後も変わりません。
今が正念場です。分断や対立でなく、協調の世界を目指すという大目標を皆で共有しようではありませんか。一般市民の安全を確保し、事態を早期に沈静化させ、そして、地域の人々が平和と安定を持続的に享受できるよう、各国の力と知恵を結集させましょう。
シュクラン・ジャジーランワッサラーム・アレイクム(感謝申し上げます。皆様に平安を)