データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国際移住機関(IOM)総会ハイレベル・セグメント「気候変動が人の移動に与える影響:解決策を求めるグローバルな呼びかけ」における上川外務大臣ビデオメッセージ

[場所] 
[年月日] 2023年11月28日
[出典] 外務省
[備考] 日本語仮訳
[全文] 

 御参加者の皆様、

 日本国外務大臣の上川陽子です。本日、ビデオメッセージの形ではありますが、挨拶の機会をいただき光栄です。まず、IOM初の女性事務局長、ポープ氏の就任を心から歓迎いたします。

 昨年、世界における人の強制移動は初めて1億人を越えました。近年、気候変動による影響がその原因の一つとして深刻に懸念されています。このような背景の下、「気候変動が人の移動に与える影響」というテーマの下、ハイレベル会合を開催するIOMのイニシアティブは重要かつタイムリーです。ポープ事務局長のリーダーシップに敬意を表します。

 9月にリビア東部で発生した洪水も、気候変動が要因であると思います。この大洪水により、何万人もの人々が避難を余儀なくされました。IOMと協力しつつ、日本は、一時的避難施設、水・衛生、心理社会的支援を避難民に提供しました。

 このような緊急人道支援に加え、日本は、災害大国としての経験を活かしつつ、気候変動が人の移動に与える影響を緩和するため、防災、早期警戒、コミュニティ・レジリエンスの強化といった支援をグローバルな規模で実施してきました。

 私は、人道危機に際して最も脆弱なのは、女性と子どもであるという事実を指摘します。人道支援は女性や子供に配慮しつつ実施されなければなりません。

 こうした支援に際しては、女性・平和・安全保障、いわゆるWPSの考え方が適用できます。WPSとは、女性自身が指導的な立場に立って紛争の予防や復興・平和構築に参画することで、より持続可能な平和に近づくことができる、という考え方です。気候変動による影響への対処においても、日本はジェンダーの主流化と女性の参画を重視していきます。

 また、避難の長期化が見込まれる中、避難先の子どもたちに教育の機会を設けることが特に重要です。

 同時に、日本は、気候変動の根本原因に対処するため、2050年までのネット・ゼロの実現に向けた取組をしっかりと進めていきます。

 IOMは、人々のニーズに寄り添ったシームレスな支援の実施で強みがあると承知しています。日本は、IOMと引き続き連携しつつ、緊急の人道支援や中長期的な開発協力を実施し、気候変動が人の移動に与える影響、特に女性、子ども、高齢者等の脆弱な人々への影響の軽減に取り組んでいきます。

 ありがとうございました。