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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「WPS+イノベーション〜国連の現場から〜」シンポジウム 上川陽子外務大臣冒頭スピーチ

[場所] 
[年月日] 2024年3月18日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

1 冒頭発言

●本日は、バフースUN Women事務局長、ブラッテステッド国連ノルウェー政府代表部大使、中満国連事務次長及びバービア・ジョージタウン大学WPS研究所長とWPSについて意見交換できる機会を頂き光栄。

●日本は、法の支配や人権といった価値・原則を重視。また、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念に基づき、「人間の尊厳」が守られる安心・安全な世界を実現するための外交を推進。

●本日のテーマであるWPSは正にこれらの考えを体現するもの。日本外交はWPSを力強く推進。そして言うまでもなく、WPS推進において、国連との連携は不可欠である。

2 WPS+イノベーション

●私(大臣)は昨年9月の就任以来、様々な機会にWPSの重要性を発信してきた。

●また、「WPS+イノベーション」と銘打ち、様々なステークホルダーとの対話を重ねてきた。

●本日の会合は、WPS発祥の地であるニューヨークにおいて、その第4弾となる。国連安保理決議第1325号の採択から約25年が経過しつつある中、私(大臣)は、WPSにイノベーションをもたらし、次の次元へと引き上げる必要があるとの問題意識を強くもっている。

●本日は、これからのWPSの推進においてどのような課題があり、そして新たに推進すべき分野は何なのか、国連の第一線で任務に当たられている立場から率直な意見をお伺いしたい。

●それに先立ち、まず私(大臣)から、WPSの取組において日本が重視する点について話をしたい。

3 WPS推進の背景・重要性

●そもそも私(大臣)の中にWPS的な問題意識が生まれたきっかけは、1995年の阪神・淡路大震災直後に被災地を視察した際に、ジェンダーへの配慮不足から性暴力が横行し、女性たちの不安が復旧・復興活動の妨げになっていると聞いたこと。

●一方、2011年の東日本大震災の直後に現地を視察した際には、女性が直接参加している復旧・復興チームほど、高い成果を挙げていると知った。

●同じことは、国際情勢にも当てはまる。現下の不透明な情勢に鑑みれば、WPSの視点は、一層重要性を増していると考える。

4 WPSに関する日本の取組

●この考えの下、日本は、「WPS in Action」として、理念を形にし、具体的な取組につなげていく考え。

●例えば、私(大臣)は、本年最初の訪問先としてウクライナを訪問し、日本として引き続きウクライナを強力に支援していく旨をゼレンスキー大統領らに対して直接伝えた。

●また、ウクライナ及びポーランドにて紛争の中で苦しむ女性や子供たちの大きな不安の声を直接聞き、ウクライナにおける、離ればなれになった家族やコミュニティー、国民の「再統合」が重要と確信した。

●2月19日の日・ウクライナ経済復興推進会議の際には、「WPSセッション」を設け、WPSの視点を踏まえた同国の復旧・復興を支援していく旨表明した。

●具体的には、UN Women、UNFPA、UNICEF等を通じて、女性や子供など脆弱な立場に置かれやすい方の喫緊のニーズに応じつつ、復興の担い手としての女性の参画とリーダーシップの醸成や、教育を通じた未来のリーダーの投資も行っていく。

●また、中東・アフリカにおける平和構築推進に向けて、短期支援のみならず、中・長期的なフェーズを視野に入れながら、日本の災害復興の知見や先進的な技術を活用した支援を実施していく。

●日本は自然災害が多いことから、WPSを防災や災害対応にも当てはめて推進していることが特徴。

●世界各地で自然災害が多発する中、防災や災害対応にWPSアジェンダを組み込むことは極めて重要。この分野においても日本として貢献していきたい。

5 結語

●続くパネルディスカッションにおいて、率直な御意見や御示唆を期待している。

(了)