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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ユースとの対話:未来サミットに向けて 上川外務大臣冒頭発言

[場所] 国連大学(東京)
[年月日] 2024年7月22日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳(案)
[全文] 

マルワラ学長、素晴らしい挨拶をありがとうございました。

皆さん、本日はお越しくださり、ありがとうございます。

過去10ヶ月の間、私は、外務大臣として、世界中をかけ巡ってまいりました。その中で、世界が歴史の転換点にあると痛感いたしました。変化の速度は速く、その影響は広く深くなっています。世界が複合的な危機に直面する中、新しいアイデア、イノベーション、長期的視点が必要となっています。

そうした視点を持っているのが皆さんユースです。社会に完全組み込まれる前に、社会に入り始めたばかりであるがゆえに感じるであろう疑問やエネルギーこそが、社会を前向きに変えていく力になります。私は、日本の外交政策において、そうした自由な発想の宝庫であるユースの関与を得るべきと強く考えています。ユースの声、希望及び不安をあらゆる分野において政策に吸い上げるべく、外務省をリードしていきます。

私は、ポーランドに待避したウクライナの若者、そしてガザの中学生と面会する機会もありました。皆さん、困難な状況の中、未来に対する希望と将来何を目指したいかを語ってくれました。とても感銘を受けました。

皆さんのような若い世代は、グローバルな課題の解決を自分事と捉えています。グローバルな思考の下、皆さんは、環境に優しく持続可能な新しいライフスタイルを送っています。だからこそ、ユースや未来世代がそれぞれの潜在能力を開花できる環境を整えなければならないのです。ユースを外交政策のあらゆる分野で主流化することにより、外務省はよりよく責任を果たせると信じています。

相互学習も鍵です。今日の議論を私自身も楽しみにしていますが、皆さんにとっても学習機会となることを期待しています。相互にインスパイアーしましょう。今日は、様々な国籍とバックグラウンドを有するユースに参加していただいています。それぞれ、共通の見解もあれば、異なる見解も有しているでしょう。世界をよりよくしたいならば、お互いを理解する必要があり、それが真の国際協力につながるのです。

先週、ボスニア・ヘルツェゴヴィナを訪れました。冷戦後のヨーロッパにおいて、誰もがもう二度と起きないと信じた虐殺が起きた場です。過去の記憶が民族ごとに異なる状況で、教科書すら分断されている現実をみました。将来を切り拓いていくためには、皆さんユースが共通理解を育める教育が必要だと感じます。

もう一つ例を挙げます。SDGsです。ユースは、2030アジェンダやその後の社会のあり方に関する議論の中核を担う存在です。SDGsの進捗は多くの面で遅れており、我々は努力を加速する必要があります。SDGsの17の目標はそれぞれが連関しており、様々なステークホルダーが協働する必要があります。SDGsは詰まるところ、我々がどのような世界を欲し、どのように生きたいかという問題です。女性・平和・安全(WPS)を私は積極的に推進していますが、これも多様な社会を築き、平和構築や災害復興プロセスで女性が主導的役割と参画を行うことにより持続可能な平和を達成しようとする取組です。

9月にはニューヨークで未来サミットが開催されます。SDGs、WPS、そして世界の未来が未来サミットの重要な課題となります。本日は、この未来サミットとの関係で、皆さんにとって豊かさや幸せとは何を意味するかを伺いたいと思います。お互いの豊かさを拡大するにはどうすればよいでしょうか。その豊かさの重要な要素を未来の世代につなぐにはどうすればよいでしょうか。

また、皆さんがこれらのグローバルな取組にどのようにして参加したいのかについても伺いたいと思います。意思決定への意味ある参画とはどういうことなのでしょうか。国内及び国際的な場でそのために何が必要なのでしょうか。これらは、我々双方、そして未来サミットにおいても重要な課題です。また、このような質問を通じ、どのような職業に就くかを含め、皆さん自身の将来についても考えてほしいと思います。今日の相互学習の機会が皆さんの将来のヒントとなれば望外の喜びです。

是非、インスパイアリングな対話をしましょう。ありがとうございました。