データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2024年「世界津波の日」啓発イベント(於:ニューヨーク国連本部)における岩屋外務大臣ビデオ・メッセージの発出

[場所] 
[年月日] 2024年11月6日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

(冒頭)

 ご列席の皆様、

 日本国外務大臣の岩屋毅です。2024年「世界津波の日」国連イベントにおいて、ご挨拶申し上げることを大変光栄に思います。

 はじめに、津波のリスクを削減するための国際協力をいかに強化できるかについて議論する場を設けていただいた、カマル・キショー国連事務総長防災担当特別代表兼国連防災機関長をはじめとする、関係国及び機関の皆様に、心より感謝申し上げます。

(インドネシア・スマトラ沖大地震およびインド洋津波から20年)

 2004年12月に発生したインドネシア・スマトラ沖大地震及びインド洋津波から、今年は20年の節目に当たります。私たちには、この悲しい出来事を記憶に刻み、その教訓を後世に伝える責務がありま

す。

(若者の参加、教育、次世代のエンパワーメント)

 本日は、本イベントのテーマでもある「若者の参加、教育、次世代のエンパワーメント」が防災に果たす重要な役割について、1つのエピソードを紹介したいと思います。

 2011年3月11日の東日本大震災では、津波によって大きな被害を受けました。しかし、被災地域の一つである、釜石市鵜住居{「うのすまい」とルビあり}地区のある小中学校では、3,000人近いほぼ全ての小中学生が、この津波から命を守ることができました。生徒は地震が起きたらどのように行動すべきか理解しており、率先してより安全な高台へと避難したからです。これは「釜石の奇跡」と呼ばれています。

(世界津波の日・高校生サミット)

 日本では、「若者の参加、教育、次世代のエンパワーメント」を促進す

る取組の一環として、2016年から「世界津波の日」高校生サミットを開催しています。日本を含む世界各地の高校生が、これまで2,000名以上参加し、津波から自身や家族、コミュニティーを守るために何をすべきか、何ができるかを主体的に学び合ってきました。

 本日のイベントには、先月10月に熊本県で開催された世界津波の日高校生サミット2024 in 熊本をとりまとめた、3人が日本から参加しています。河合智彩{「かわいさち」とルビあり}さん、塩島杏梨{「しおじまあんり」とルビあり}さん、渡辺樹李亜{「わたなべじゅりあ」とルビあり}さんです。今回のサミットで世界中の高校生と学んだことを発信されることを期待しています。

(終わりに)

 気候変動災害を含む自然災害が世界各地で頻発しています。米国ではハリケーン「ミルトン」が猛威をふるいました。今年の1月に大地震を被災した石川県能登半島においても、9月に洪水や土砂災害が発生し、復興半ばの人々の暮らしを襲いました。

 この機に改めて、過去の災害から得た教訓を後世へと伝えていきましょう。本日のイベントが、津波の脅威への意識を高め、若者の声や視点を取り入れながら、「災害により誰一人取り残さない」世界の実現に役立つことを心から願っています。

 最後に、防災はSDGs達成の鍵です。災害が多く、防災を極めて重視してきた日本として、引き続き、その知見を共有し、世界の防災に貢献してまいります。ありがとうございました。