データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] JICA・UNDP・国連人間の安全保障ユニット共催:TICAD9テーマ別イベント「アフリカにおける人間の安全保障と経済開発:多元的な課題への対応と2030年以降の未来」岩屋毅外務大臣開会スピーチ(発動版)

[場所] 
[年月日] 2025年8月20日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

ナルマンゴ・ザンビア共和国副大統領、
センゲ・シエラレオネ首席大臣、
ウォックナー政府間開発機構(IGAD)事務局長、
田中JICA理事長、
高須国連事務総長特別顧問、
エザコンワ国連開発計画(UNDP)総裁補兼アフリカ局長、
御列席の皆様、

 おはようございます。外務大臣の岩屋毅です。本日、TICAD9がここ横浜で開幕します。TICADが1993年に創設されて以来、日本は、一貫してアフリカの未来を信じ、アフリカの信頼できるパートナーとしての役割を果たしてきました。

 現在、世界は複合的な危機に直面しています。こうした中、アフリカが、そして世界が対応すべき課題について、日本とアフリカ双方の強みを活かした解決策を共に追求することが重要です。我々はアフリカと「革新的な課題解決策の共創」を目指します。それこそが、TICADを開催する意義であり、我々の責務であると考えます。

 近年、アフリカは、気候変動、食料不安、雇用、債務、紛争などの危機に直面しています。これらの課題は複雑で、相互に関連しており、従来の開発アプローチでは十分に解決することができません。

 そのため、人間一人ひとりに着目し、人々の命、生活、尊厳に対する脅威から人々を守ることを重視する包括的なアプローチが必要です。こうした考えの下、日本は、外交政策の柱の一つとして、人間の安全保障の推進を掲げてきました。アフリカの平和と開発を重視し、人々の自由と安全、そして希望に満ちた未来を築く上で、人間の安全保障は不可欠な考えです。

 アフリカの長期戦略である「アジェンダ2063」においても、人間の安全保障が重要な要素として位置づけられています。そして、そのフラッグシップ・プロジェクトの一つである「紛争や暴力の根絶(Silencing the Gun)」を、人間の安全保障の理念に基づいて進めようとしています。紛争・暴力の根絶のためは、治安維持を超え、人々の生活、教育、経済機会といった多様な側面に対する包括的な取組が必要です。人間の安全保障を重視するアフリカの取組に改めて強い支持を表明します。

 人間の安全保障をより進展させる上で、JICAによる質の高い開発協力、そして、国連をはじめとする国際機関の役割は極めて重要です。UNDPは、長年、アフリカにおける人間の安全保障の強化に尽力し、豊富な知見と経験を有しています。

 本日、アフリカの人間の安全保障に関する国連による報告書の発表も予定されていると伺いました。こうした取組や、国連本部に設けられた人間の安全保障基金による現場での努力が、人間の安全保障の推進に有効かつ不可欠です。日本政府としてもできる限りの支援を行っています。

 人間の安全保障の強化は、アフリカのみならず国際社会全体に大きな利益をもたらすものです。日本は、引き続き、多国間主義を重視し、国際協調を積極的に推進していきます。

 改めて、アフリカから、そして世界各地から来訪された皆様を心より歓迎します。御静聴ありがとうございました。

(了)