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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ウクライナ地雷対策会議(オープニング) 大臣スピーチ(茂木敏充外務大臣)

[場所] 
[年月日] 2025年10月22日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

1 冒頭発言

●ソボレフ経済・環境・農業大臣を始めとするウクライナから御参加の皆様、各国・国際機関の皆様、ゲストの皆様、本日のウクライナ地雷対策会議への御参加、そして訪日を心から歓迎いたします。

●昨日の高市新内閣発足に伴い、外務大臣に就任して、まだ2日目ですが、就任後初の我が国主催の国際会議が、未だ戦時下にあるウクライナへの支援、その中でも特に重要な課題である地雷対策がテーマの会議であること、また、このテーマについて皆様と議論を交わせることを光栄に思います。

2 地雷対策の重要性

●まず、私から、ウクライナで地雷被害に遭われた全ての方に、心からの弔意とお見舞いを表します。また、ここにおられる方々を始め、危険な環境の中で、地雷・不発弾に立ち向かう全ての方に、心からの敬意を表します。

●ウクライナの方々が日々闘っておられるのは、連日飛来するミサイルや無人機だけではありません。ウクライナの地雷被害のリスクの高い地域は、国土の約4分の1にまで及んでいるとされています。地雷は、完全に除去されるまで長年にわたり市民の生命と生活への脅威、復旧・復興のさまたげとなり、ウクライナの将来に暗い影を投げかけます。

●我々が本日、集う理由はここにあります。地雷対策は、ウクライナの大地が安全を取り戻し、国土の利用に繋がること、住民の皆様が安心して帰還することを通じて、ウクライナの復興・開発へと繋がっていく包括的、長期的なプロセスの重要な要素です。広く国際社会で支えなければなりません。

●官民一体となってウクライナの復旧・復興を力強く後押ししてきた我が国として、その出発点である地雷対策の強化についても、各国を繋ぎ、議論と取組を先導する。これが、我が国の一大ミッションであり、責務です。

3 日本の支援と国際社会への貢献

●今般、この会議にあわせて、我が国による支援パッケージとして、「ウクライナ地雷対策支援イニシアティブ」をとりまとめました。3点申し上げます。

●第一に、長期的な地雷対策を支えるには、それを担う「人材育成」と「技術」の強化が不可欠です。

●我が国は、ウクライナに対して地雷探知機や地雷除去機といった機材を引き続き供与していきます。また、ウクライナ中部ヴィンニツァ州の地雷対策訓練センターに対し、施設整備を含めた能力強化支援を着実に行っていきます。

●第二に、地雷対策を復旧・復興プロセスへと円滑に移行させていく施策も不可欠です。今回の会議の柱の一つである「ネクサス」の考え方です。

●この観点から、日本は、地雷除去後の土地の再生・利活用、住民の帰還と就労、農業を含む産業振興などの社会経済活性化の側面からも、ウクライナへの支援に取り組んでいきます。

●同時に、地雷被害の予防と緩和を含め、医療・福祉分野や被害者の社会復帰のための支援にも取り組み、復旧・復興プロセスに不可欠な様々な支援を今後も実施していきます。

●第三に、関係国や国際機関等との間のパートナーシップの多角化・強化により、ウクライナの地雷対策をより効果的に進めることも必要です。

●我が国は、長年、地雷対策分野で協力関係を培ってきたカンボジアとともに、同じく地雷に苦しむ国々との、地雷対策の協力の輪を広げてきました。いわば、地雷対策に関する「三角協力」の国際ネットワークです。

●今般、この会議にあわせ、我が国が同様に長年支援してきたコロンビアとの間でも、新たな「三角協力」としてウクライナへの支援を実施することになりました。日本、ウクライナ、コロンビアの三国間で、地雷対策に係る包括的協力覚書に署名する運びとなったことは大きな喜びです。

●同時に、我が国は、NATOのCAP(キャップ)信託基金を通じた地雷対策プロジェクトへの資金拠出も行いました。

●これらの取組により、ウクライナの地雷対策を支援する国際ネットワークの多角化、重層化を先導していきます。

●以上のような支援策を柱とするこのイニシアティブの下で、我が国として、より迅速かつ安全で、持続可能な地雷対策を推進します。

●そして、それがウクライナの復旧・復興へとシームレスにつながっていくよう、本日ご列席の皆様、そして、ウクライナの皆様と常に伴走していく所存です。

4 結語

●ウクライナの全ての人が、公正かつ永続的な平和の下、地雷の脅威にさらされることなく暮らせること。このための取組を後押しするためにできることは惜しまないとの我が国の覚悟を示し、今回の会議が、ウクライナの地雷対策、復旧・復興の重要性を広く国際社会に発信する機会となることを強く期待しております。

●御清聴ありがとうございました。ジャークユ(注:ウクライナ語で「ありがとう」)。