[文書名] 佐藤内閣発足に際しての佐藤内閣総理大臣の談話
内外の情勢が流動化し、きわめて重大なときに、わたくしは政権を担当することになりました。
その責任の重大さに身の引きしまる思いであります。
池田前首相は、日本の発展のために多くの業績を残しました。寛容の精神を貫いて、わが国の民主主義の基盤を強化し、政治に経済合理主義をとり入れ、国際的な視野にたつて日本の飛躍的な向上に全力を傾けました。しかし、志なかばにして、病気のため首相の座を去りました。そのさい池田前首相は「内外情勢から、国民の皆さまに、少しでも不安を与えてはならない」と考え、国民的立場からその出所進退を明らかにしたのであります。
わたくしは池田前首相が一日も早く快癒されることを祈るとともに、政治家としてのこの尊い気持をうけついで、つねに「国民とともに進む」ことを、わたくしの政治の基本姿勢とするものであります。また、よりよい社会をめざしてたたかう精神と、総合的な科学性をもち、長期の展望をもつた政治を行ないたいと思います。
しかしながら、自民党の近代化、ヒズミの是正、物価の安定、日韓問題、中国問題を中心とする外交政策の樹立など山積する内外の諸懸案は、国民の総意と英知をいかしてこそ、はじめて解決されるのであります。
このような姿勢で、新しい内閣がとりあげる命題は、
内政面では、まず日本経済の安定成長をはかり、ヒズミの是正につとめ、とくに国民生活をおびやかす当面の消費者物価の上昇に対しては、全力をあげて解決にとりくむことであり、
さらに「社会開発」をおしすすめて、調和のとれた〃住みよい日本〃の創造を、その目標にしたいと考えます。
外交面では流動する世界情勢のなかにあつて、平和共存外交を推進することを、内外に明らかにしたいと思います。
わが国の国際的地位の向上にともない、わが国の動向は世界政治に大きな影響を与えています。したがつて、これからの日本の役割りは、世界の福祉の実現のため欧米先進諸国と協力しつつ、南北問題の解決、とくにアジアの民生安定をめざすことにあると思います。
わたくしはこれらの施策について、まず国民が真に求めているもの、激動する時代が真に要求するものを謙虚に追求し、挙党一致体制のもと、国民の協力を得て、勇気をもって実行する覚悟であります。