データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 佐藤栄作内閣総理大臣の沖縄訪問に際してのステートメント

[場所] 沖縄
[年月日] 1965年8月19日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),613ー614頁.佐藤内閣総理大臣演説集, 111ー112頁.
[備考] 
[全文]

沖縄同胞のみなさん。

 私は、ただ今、那覇飛行場に到着いたしました。かねてより熱望しておりました沖縄訪問がここに実現し、漸くみなさんと親しくお目にかかることができました。感慨まことに胸せまる思いであります。沖縄が本土から分れて二十年、私たち国民は沖縄九十万のみなさんのことを片時たりとも忘れたことはありません。本土一億国民は、みなさんの長い間の御労苦に対し、深い尊敬と感謝の念をささげるものであります。私は沖縄の祖国復帰が実現しない限り、わが国にとつて「戦後」が終つていないことをよく承知しております。これはまた日本国民すべての気持でもあります。

 私が、今回沖縄訪問を決意いたしましたのは、なによりもまず、本土の同胞を代表して、この気持をみなさんにお伝えしたかつたからであります。

 私は、去る一月のジョンソン米国大統領との会談で沖縄の施政権をできるだけ早い機会に返還するよう強く要望しました。また、沖縄住民の民生安定と福祉向上のため日米相協力することについて意見の一致をみたのであります。私はこの基本的立場に立つて、沖縄の現実の姿を、直接この目で確かめ、耳で聞き、できるだけ広く深く当地の実情をつかんで、これを日本政府の沖縄施策のなかに具体的に生かしたいと存じます。そしてこのことは私の責任であるとともに、沖縄のみなさんの期待にこたえる所以であると考えます。

 私は、ここに、沖縄九十万同胞の心からの歓迎に対し深く感謝するものであります。また、ワトソン高等弁務官、松岡行政主席はじめ関係者の温いお出迎えに対し、厚くお礼申し上げます。