データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 内閣総辞職に当たって(竹下内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 1989年6月2日
[出典] 竹下演説集,529−530頁.
[備考] 
[全文]

 内閣は、本日をもって総辞職いたしました。

 私は、国民の皆様の政治不信を深刻に受けとめ、政府・自由民主党の責任者として深くおわびを申し上げ、今後、新内閣において政治改革が断行されることを切望いたします。

 私か政権を担当いたしました五百七十五日は、昭和から平成へと時代の転換点ともいうべき重大な時期に当たっており、まさに緊張の連続でありました。昭和天皇の「大喪の礼」が平穏のうちに無事挙行できましたことは、国民の皆様はじめ内外のご理解とご協力の賜物であり、改めて深い敬意と感謝を表する次第であります。

 また、永年の懸案でありました税制改革の実現により新しく導入された消費税が、さらに国民生活に溶け込み定着するよう皆様のご理解とご協力を重ねてお願いしたいと存じます。

 我が国は、戦後、廃墟の中から立ち上がり、賢明にして勤勉な国民のひたむきなご努力、友好諸国との自由で開かれた協力が相まって今日の繁栄を築き上げることができました。私たちは、国際社会における我が国の責務の重さをいま一度噛みしめ、物質的な豊かさに加えて心の豊かさを重視しつつ、自ら考え自ら行動して真に豊かな活力ある社会の創生をめざし、「世界に貢献する日本」としての姿勢を貫くことが求められております。そのためには、我が国の内政・外交の一貫性と継続性を可能な限り堅持することか必要であると考えます。

 幸い今日の世界は、平和への真剣な取り組みが続けられており、我が国としても米国はじめ友好諸国との信頼と協調を強化しながら、平和と自由と民主主義を守るため力を合わせて前進しなければなりません。

 政治とは、無限の理想への挑戦であり、一瞬の停滞も許されません。私たちは、いかに厳しい事態に直面しても、初心を忘れず自らの役割と責任を忍耐強く果たしていくことが大事だと信じます。

 これまで国民の皆様からいただきましたご叱正とご鞭撻に心から感謝を申し上げます。