データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 組閣(第一次)に際して(海部内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 1989年8月10日
[出典] 海部内閣総理大臣演説集,65頁.
[備考] 
[全文]

 私は、このたび、内閣総理大臣の重責を担うことになりました。

 激動する政局の中にあって、国政に誤りなきを期すべく、全力を傾けてまいる決意であります。

 先の参議院議員通常選挙の結果は、国民の政治への信頼感が大きく揺らぎつつあることを示すものでありました。安定した経済成長を続け、国際的にも評価の高まりつつある我が国の現状をみれば、自由と民主主義を基調とするこれまでの政策は大筋において誤っているものではないことは明らかであります。にもかかわらず、これだけの厳しい審判が下されたことは、政治過程における正明さに国民の批判が集中した結果であります。

 こうした情況の中にあって何よりも大切なことは、政治倫理の確立であります。「信なくば立たず」であります。国民とともに歩み、国民を信じる政治の中で、リクルート事件に端を発した批判を率直に受けとめ、深く反省し、勇気をもって政治改革を進めてまいります。

 また、今回の結果は、国民の生活や産業など多部面での先行きの不透明感や、国際化された我が国の全地球的視野からの行き方についての不明確さなどがもたらす未来の漠然たる不安にも影響されたものであろうと思います。私は、今後、長期の、しかも全地球的視野に立つ「目標を高く掲げた政治」を展開すべく心懸けてまいります。

 政治不信と並んで今次選挙の争点となった税制改革なかんずく消費税の問題については、消費者・納税者のご意見を伺った上で国民の納得を得られるよう思い切った見直しを行うとともに、その定着を図るために万全の措置を講じてまいる所存であります。

 国民の皆様のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。