データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] オチルバト大統領主催歓迎宴における海部内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1991年8月13日
[出典] 海部内閣総理大臣演説集,266−267頁.
[備考] 
[全文]

 オチルバト大統領閣下、令夫人

 ゴンチグドルジ副大統領、令夫人

 ビャムバスレン首相閣下、令夫人

 ご列席の皆さま

 サイン・バイツガノー

 本夕は、私ども一行のためにかくも盛大な歓迎宴を催して頂きましたことに対し、最初に心からお礼申し上げます。

 私は、歴史と文化をもった美しい貴国をいつの日か訪れることを願ってまいりましたが、今日訪問することができました。また、貴国が、最近進めておられる変革と刷新の努力をこの目で見、この耳で聞くことができました。

 私の今回の貴国訪問は、日本国総理大臣の初めてのモンゴル訪問であります。顧みますれば、両国の長い歴史には率直に言って不幸な出来事もありました。しかし私たちはこれを乗り越え、新しい未来に向かって進みたいという決意に満ちております。

 政治の民主化と経済の市場経済化という変革・刷新の完成のために懸命に努力されている貴国の真摯な姿勢と決して後戻りしないと述べられた決意に、深く感銘を受け、できるかぎり両国関係を発展させたいと考えています。民主化と並行して計画経済システムから市場経済原理の支配する経済への移行という一つの国家にとり歴史的意義を有する壮大な実験に挑戦しておられます。貴国のご努力が、我が国は勿論、広く国際社会の賞賛の的となっていることは、先のサミットにおいて貴国に対する国際的支援の必要性が強調されたことからも明らかであります。この試みは決してたやすいものではなく、苦しく困難な道程であることでありましょう。しかし自らが切り開いていこうとその決意をされた先に輝く民族の未来があることも事実て{前1文字ママ}あります。

 私が尊敬する我が国の著名な作家であり、モンゴルに造詣の深い司馬遼太郎氏は、私の訪問を前に、「モンゴルは一隅の国ではない。世界の大モンゴルである。モンゴル人の魂を忘れないかぎり、世界中から畏敬をうけつづける」とのメッセージを私に託しております。貴国民が一丸となって努力され、この一大事業を成功に導かれることを心から祈念してやみません。

 些かの言葉を締め括るにあたり、ご主人の杯を借りて、

 大統領閣下ご夫妻の健康、

 副大統領ご夫妻の健康、

 首相閣下ご夫妻の健康、

 ご列席の皆さまの健康、

 日本・モンゴル両国の友好関係の発展、及び

 貴国民の皆さまのご繁栄を祈念し、乾杯いたしたく思います。

 乾杯!

 エルール・メンディン・トリォ