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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 内外情勢調査会における宮澤内閣総理大臣の講演

[場所] 
[年月日] 1992年10月9日
[出典] 宮沢演説集,439−448頁.
[備考] 
[全文]

(金丸問題)

 私どもの自由民主党の金丸副総裁が、先般、辞任をせられましたことにつきまして申し上げます。八月の下旬でしたか、金丸さんがいわゆる東京佐川問題で副総裁を辞任をせられました。金丸さんには私どもの党内のとりまとめ、あるいは国際平和協力法等々、先般の国会でも大変に重要な案件がありましたが、国会の運営などにつきましても、特に尽力をして頂いておった訳でございます。

 この度の問題で金丸さんは政治資金規制法違反で略式命令を受けられたのでありますが、誠に残念なことでありました。金丸さんご自身も「人生に二度とこういうことのないように誓っている」と、反省の弁を述べておられます。

 この度の問題は私どもに政治と金の問題、あるいは政治倫理の問題などいわゆる政治改革の必要性を再び強く迫っていると考えておりまして、この度のようなことが二度と起こりませんように政治に対する国民の信頼を回復しなければならないと、深く決心を致しております。これについては後ほどもう一度触れさせて頂きたいと思います。

(景気問題)

 当面の景気のことから始めさせて頂きますが、情勢なお楽観を許さないきょうの現状の中で、今回の不況はいわゆる総需要の落ち込みでありますとか、設備投資の不振でありますとか、在庫のもたれでありますとか、そういう循環的な、いわば従来経験のありました景気循環の他に金融、あるいは証券といったような要因が新しく加わっておりまして、それに十分注意を払いながら対応しなければならない要素がございます。

 私どもとしまして八月二十八日にいわゆる総合景気対策で十兆七千億円に上る対策を決定いたしまして、即日実施に入りましたことはご承知の通りでございますけど、これは、ご案内の通り公共投資を拡大する、あるいはその際公共用地の先行取得もできるだけ行う、あるいは住宅投資を促進する、また民間設備投資についてもできるだけそれが促進されるような措置をとる、あるいは中小企業の雇用対策等々、考えられるものを総合的に十兆七千億円という枠で実施を致したわけでございますが、先ほど申しましたように、金融、証券といったような要素がございまして、これは実はこの八月二十八日に先んじまして八月十八日に大蔵大臣、日銀総裁と相談を致しまして、一歩先んじまして金融行政の当面の運営方針という形で施策を打ち出しました。

 それが今回の金融システムの安定性の確保、あるいは金融機関の不良資産問題への対処、証券市場の活性化等、八月二十八日の対策の中へそれをもう一度盛り込んだという形になっております。十兆七千億円というのは対外的には八百六十億ドルということになるわけですけど、確かに八百六十億ドルと言われますと、これはかなり大きな金額でございます。それだけ日本の経済が大きくなった、あるいは円が強くなったのかという印象を、私自身が八百六十億ドルと言われて受けたわけでございますけど、かなりそういうものとして語られ、評価されているところでありますが、GNPに致しますと十兆七千億円というのは大体二・四パーセント、二・三パーセントでございますでしょうか、乗数効果は大体一年間でGNPの二・四パーセントと専門家は言っております。

 これは従いまして施策が実行されてからの一年間の乗数効果でございますから、その年度なり、年なりのGNPと同じベースで、ずれはございますが、そのくらいの大きさのものであるという事でございますので、国際的にもかなりの評価を受けておると思います。実施いたしまして一か月ちょっと経ちましたので、今朝ちょうどでございましたけれども、どういうような状況になっているか、言いっぱなしではいけませんので具体的にちょっと点検を閣僚会議をいたしたところでございますが、いくつか問題点もまた出てまいりましてそれにつきましても併せて処置を考えたから、これはかなりものが補正予算につながってまいりますんで、実はその予算がありません。でもこれだけのことを決めますと、現にあります予算の前倒しすればいいわけですから、あるいは財政投融資につきましては弾力条項がございますから、予算そのものが成立すること自身それを待つ必要は無かったですけれども、ここで前倒しをいたしますから、そこでかなりのものがこの月末になると思いますが、補正予算という形で国会に提出されることになってまいると思います。

 先ほど、証券、金融ということを申し上げまして八月十八日に一歩先んじて対応したと申しましたのは、ちょうど七月の半ばにドイツのマルクの、ドイツの金利の引き上げがございました。この辺りから我が国の証券市場がおかしくなりまして、七月の下旬から八月の中旬にかけて私自身も実はかなり心配を致した訳でございます。

 本来、市場経済でございますから物の市場はもちろん金融にしても、為替にしても証券にいたしましても、市場は市場の法則で動くのが一番望ましいことでございます。それには間違いはございませんけれども、あるいは、例えば、しかし為替市場なんてのはフロートになりましたから、かなり各国で必要に応じ介入していることはご承知の通りでございますが、まあこの証券市場についてもこれが正常に機能している限り、これはもとより、これもう市場が市場の原則で動いていく、これが当然のことでございますけれど、市場の機能が失われそうになったという時には、場合によりまして好ましくないことですけれども、ある程度の対応を政府なり、中央銀行がするということは、やって悪いということはない。好ましいことではありません、しょっちゅうあっていいことではありませんが、必要があった場合にはそういうことは考えておかなければならないと思っておりまして、幸いにして我が国の場合にはそういうことが八月の半ば頃から正常化に向かいましたので、そういうことはございませんでしたけれども、多少心配すべき状況があの時にございました。

 その時に私は政府なり、日銀なりの方々に申したことですけれども、好ましくないけれども例えば、一九七三年とか七四年にはイギリスでやはり株の乱高下があって、不動産の乱高下がございまして、バンク・オブ・イングランドが正面に出てこの収拾をした。いわゆるライフ・ボート言われる{原文ママ}そういう収拾をしたことはお互いがよく記憶しておりますし、あるいはアメリカの場合、一九八七年にブラック・マンデーがご記憶のようにございました。

 九月の何日かでございましたけれども、あの時に、あの朝、連銀のアバンリングスパン総裁が最初に言いましたことは「金はいくらでもございます。金はいくらでもありますからみなさん安心してくれ」ということでありました。

 あるいはまたアメリカで現にいわゆるS&L、貯蓄信用銀行とでも申しますか、数から言いますと全国沢山ございますので、いわば我が国の信用組合と類似のものとお考え頂ければいいんでしょうが、これがやはり自由化でなんとか預金者にサービスをしたいということから、不動産を買い増したり、ジャンクボンドを買い増したりいたしましてその価格が暴落をしたことによって政府が救済をせざるをえなくなった。

 これがS&Lという問題でありますが、これがアメリカの財政で一千億ドル以上、千五百億ドル、あるいは最後に清算するとどうなりますか、非常に大きな財政負担に現になっておりますことはご存じの通りでございます。ですからそういうことは決して好ましくないことでありますが、時としてあり得ることであって政府なり中央銀行としては当然そういうことはいつも考えておく必要があるなあということをあの八月の時に私は関係の諸君に申しました。

 幸いにしてそういうことはございませんでしたので、その必要も起こりませんでしたけれども、ただ今度の施策の中で金融機関の担保不動産の流動化ということをお願いしておりますのは、これは銀行が、いわばその銀行を救済するといったような考え方よりは金融機関というのはなんといっても我が国のまあ言えば血液のようなものですから、金融が正常に行われるということは我が国経済、国民経済が順調に動くということであって、それが阻害されているというようなことがございましたら、それの阻害要因というのはやはり除いておかなければならない、そういう風に考えておりまして、私はある時に「場合によっては公的支援も決して惜しみません」ということも申しました。いや、その必要はないということで案が進んでいるようで、それはもうそれならばなお結構でございますけれども、今度の場合これは経験の無かったことでございましてそういう処置も進めて頂いておるということはご承知の通りでございます。

 これだけの大きな総合経済対策をいたしまして今度は中央ばかりではなく、地方が実は非常に支援をしてくれておるといいますか、地方の単独事業というものが実は十何兆ございまして、国の公共事業と匹敵するぐらい地方の単独事業が大きくなっておりまして、これはまあ地方の仕事でございますので比較的住民の身近な公共事業につながって行く訳です。

 今から申しますそのいわゆる生活大国、生活環境のインフラストラクチャーの充実に地方の単独事業は比較的早く繋がってまいります。今一番あちこちで求められているのは例えば塵芥、ゴミの処理でございますけれども、そういった物をかなり地方で積極的にやってもらう契機にもなったりいたしておりまして、中央、地方一生懸命そういうことを今いたしておりまして、今朝もその点検を閣僚会議でいたしましたことは先ほど申しました通りでございます。

 しかし、国のあるいは地方によるいわゆる公共による総合経済対策というのはもとより我が国はこれだけ大きな市場経済の国でございますから、それによって皆様方の経済活動に繋げていきたい、たまたまこういう不況になりましたので、その間政府として緊急の措置をやって国民経済がまた正常に消費にしろ、投資にしろ動いて行ってもらうための繋ぎを私どもやっておるということでございますが、前回の不況、それは一九八五年にプラザ合意がございまして、その後円高不況になったことはご記憶の通りでございます。私、大蔵大臣をいたしておりましたが、あの時にはご記憶のように企業城下町といったようなところが灯の消えたようになりまして、すぐに実は雇用の問題に響いてしまった。有効求人倍率〇・〇いくつというようなことになっていった訳でございますが、今度のことは幸せにしてどうしても人手不足という背景がございますので、雇用不安定のところにはまいっておりません。これが対策としては比較的前回に比べましてやりやすい要素でございますが、しかしそれでも段々に時間外手当てというものが切られる、あるいはパートが段々無くなっていくというような形で、雇用にも影響を及ぼしてまいりまして、今、有効求人倍率はまだ一ぎりぎりの所におりますが、もう一月ぐらいはこのラインで行けるかもしれませんが、場合によって一を割り込むことはあるだろう。

 割り込みましても特に私は心配だと申し上げておるのではございませんけれども、既に鉄鋼業であるとか、あるいはソフトの業界なんかではそういう雇用調整が行われ始めておりまして、政府から雇用調整助成金を差し上げるようなことでございます。

 幸いにしてこのしかし雇用保険特別会計というのは大変にゆったり資金を持っておりますので、雇用調整助成金に事を欠くようなことはございません。なるべくそうならない方がよろしうございますけれども事を欠くような心配はございません。いくらかそういう雇用調整が始まっております。しかし前回のようなことは恐らくならない。そうなる前に経済そのものが恐らく正常な基調に戻っていくだろう、こういう風に考えておりますが、そうなりました時に私どもかねてより申し上げておりますようにいわゆる経済大国推進のためのそのインフラストラクチャーの整備というようなものに繋いでいきたい、現在でもそうでございますけれども、我が国自身これだけ国内にしなければならない仕事がある、あるいは国際的にこれだけの責務を負うに至った、ODAにしてもそうでございますけれども、しなければならないことは実は沢山ございますし、しかも基調的に労働需要は逼迫しておりますから私は我が国の経済のこれからというものを決してそんなに深く心配はいたしておりません。そういう需要要因が非常に沢山あるし、またそれに見合う我が国経済の潜在力というのはしっかりしたものがあるという風に考えております。

(生活大国)

 生活大国と申しましたときになにかこのゴテゴテした、それこそコンベンション・ホールでもなんでもそういうものを沢山作ることかねというような一時そういう風な受け取られ方がございましたけれども、私どもが思いますのはつまり、長年外国に輸出をしておって、日本はずいぶん輸出をしてくれるが、我々を困らせるが日本へ行ってみると大きな都会ではうさぎ小屋に住んでいるのじゃないのと言われてですね、それは実際本当の事でございますから、それしかやり用がないんならしょうがありませんけれども、外国にこれだけ人を困らせるほど輸出する力のある経済が自分の身の回りをうさぎ小屋でほっといていいという理屈は人が言わなくてももうその通りだと言ってきましたし、また、「狭い日本そんなに急いでどこに行くんだ」という交通標語がありましたけれども、それもその通りだと思います。もう少しリラックスして身の回りをちゃんとしたらいいし、それができる国になってる、できなきゃしょうがありませんが、幸いにしてそれができる国になってる。

 現在ですと六十五歳以上の人の人口に対する比率は一二〜一三パーセントでございますから、まだまだこれで、老人大国とは申しませんけれども、これから急速に老齢化していきまして、大体二〇二〇年前後で六十五歳の人が今の倍になります。二五パーセントぐらいになりますので、これは背負っていく若い人にとっては相当に大きな負担にならざるを得ない、一時その時に日本の経済力というのは弱くなるかもしれません、ずっと弱くなり続けるとは思いませんけれども、やっぱり消長がございますから。そうなる前に今、力のあるうちにそれだけの生活のインフラストラクチャーを私は作っていくべきだろう、こう思っておりますことが生活大国の推進ということですが、ちょうど今年は長期経済計画、五か年計画の新規の発足の年になりましたもんですから先般経済審議会にお願いを致しまして、これからの五か年計画は生活大国の推進、生活大国五か年計画ということで策定をして頂きました。

 従来と違いましていくつかの目標を掲げまして、できるだけ生産の側あるいは行政の側ではなくて、現実に消費をする人、生活する人、そういう側から目標を立ててみたい、それも具体的に年次割りで「これならいける」というそういう目標を立てて五年間で達成をして頂きたい。あるものは実は五年で収まりませんで、八年、今世紀内というようなことになるものもございますけれども、そういうことでいたしました。

 その一つは労働時間でございますけれども、現在二千八時間というものを、やはり先進国並みの千八百時間にしたらよかろうと、これも年次割りでぜひ達成をしたいということで具体的な決定をいたしておりますが、中小企業の方々からは労働時間短縮ということには、当然の事ですけれどもいろいろなご意見がございました。

 そこは理解もして頂いてまずまずこういう目標を立てることができましたし、ご理解を頂きましたので、まあそれなりのもとよりそれに伴う省カ、あるいは合理化等々のご支援は国がいたさなければなりませんが、そういうことでやってまいりたい。それから、住宅でございますけれども、東京、大阪あたりはいわゆるうさぎ小屋です。今度の五か年計画では大体年収五年分位で自分のマンションが持てる、家が持てるということを達成をいたしたい。今、年収が大体八百万円位と思いますので五年間ということは四千万円でございます。

 そこで四千万円のマンションが、どんなに遠くってもいいっていう訳にもいきませんのである程度通勤可能な距離で、仮に二十坪といたしますと、坪二百万円ということになりますか、いきなり新しいのは無理かもしれません。

 しかし中古であったら大体東京で申しますと、山手線の駅から三十分ぐらいの所の駅で、そこから歩いてどの位というぐらいの所で四千万円ぐらいのマンションがあると、こういうことにこうやっていけるんではないだろうか、現在まだまだ五倍になっていませんで八倍に近いということが現在と申しますか、昨年辺りであったんですが、ここへきまして大分土地が下がったり、マンションが余ったりしていますので、まあまあ視野の中へ入ってくるんじゃないかと思っておりますが、それから下水道、これはご承知のように今でございますと普及率は四五パーセントと言われております。

 それは人口当たりでございますから、大都会がきっと非常に率が高くて、県によっては一〇パーセントにも達しないところがあるかと思います。これを二千年ぐらいまでの間に七〇パーセントにしたいというのが目標です。もっといけそう、いや、やっぱりいけないんですね。七〇パーセントというのがまあ精一杯じゃないかといってまして、この生活のインフラの整備というのはやっぱりなかなか容易なことではありません。

 ことにある程度国ができ、街ができてしまった後で下水道っていうことになりますと誠に容易でないなという感じがいたしますけれども、まあ二千年には七割ぐらいになるかなと、それから先ほども申しましたようなどうしても高齢化社会になってまいりますから、もう寝たきり老人というのがご本人にとってもご家族にとっても、大きな問題になりますので、まあそれは止むを得ない場合には特別養護老人ホームに入って頂くんですけど、できればその一家に居て、そして寝たきりにならずに、やっぱりなんか地域に貢献してる、なんか役に立ってるというそういう生きがいというのが大事であろうと、ただ生きててくれればいいというんではないと思いますんで、そういう風になりますとやはりデイ・サービス・センターみたいなものが、言ってみれば近くになければ、それでまあこの二千年ぐらいの間までには今の中学校区、全国平均して、中学校区には一つデイ・サービス・センターがあるということに致したい。

 そうしましたら、歩いても、あるいはバスででもお出でになれるという事で、まあまあ安心して家に居てもらえる。あるいは家の人も場合によっては時たま息抜き、看護する側も息抜きができると、こういうことにしていきたいと思っていまして、これも地域に下ろして、年次計画でやってまいりたいと思っていますので、まあまあその程度のことはできるであろうかと。通勤の混雑は東京、大阪ですがこれはなかなか簡単に直りそうもありませんで、現在の通勤の混雑率っていうのは二〇〇パーセントというんだそうでございますけれども、それは、電車の中で文庫本が読めるぐらいな混み方だそうですけれども、一所懸命やりましても二千年で一八〇パーセント位までしかいかない、それはどういうんだと申しましたら、新聞が読める程度だそうでございますので、なかなかこういういろんなインフラの改善というのは難しい、かなり時間と金のかかる仕事だと思います。なんとしてもこういう具体的な目標をおって達成していきたいと思ってまして、まあよく指摘される一つの問題は、そうかといいながら国の公共事業の予算を見ていると、昔のシェアっていいますか配分ってものがいつまで経っても変わらない。

 これじゃ駄目じゃないかと、口では公園だ下水だっていうけど、一向にそれが増えていかないじゃないか、というご指摘があって、これは誠に痛いご指摘なんでございます。私も一生懸命、大蔵大臣の時から「なんとかならないか、なんとかならないか」と思っているのですが、いわば一種の既得権というものが片一方である、それが新しい需要になかなか、再配分ができないという問題がございますけど、今度は一つなんとかやったなということを見て頂きたいと思ってまして、あの予算の中でも相変わらずシーリングをやっておりますから生活関連の重点化枠を増やしてみたり、新しくまたもう一つ今度生活学術研究の枠を作ろうと思ってますけど、それでなんとかこういう必要な、本当の生活関連のものにシェアを厚くしていきたい、今度こそはなんとか少しご覧頂けるようなことができるんではないかと思っております。

 なお、今ちょっと学術研究のことを申し上げました。これは生活のインフラと少し違う話なんですけれども、ずうっと長いことシーリングを何年もやってまいりましてそれはそれなりの財政的な効果を上げているわけですけれども、その中で各省の予算で一番人件費が大きいのは文部省でございます。

 シーリングをやっていきますと人件費は増えますから、その他の施策というものがきわめて実は横へ置かれてしまっている、そういうことが長く続いておりますので、やはり国の将来を考えますと教育とか、学術研究ってものはこれ、長いこと放って置けない、置けば必ず将来その災いを受けます。そういう段階まで立ち入りましたので、これにはやっぱり特別な配慮をしようじゃないかという事で、今年度から始めましたが来年度は別の枠を作ってそういう後に悔いを残さないように、苦しい財政の中ですけれどもやってまいりたいという風に考えております。

 私自身もちょっとここで時間がございますんで最近は福祉施設を拝見したり、農村を見にいったり、来週は少し都下の住宅事情を見せて頂きたいと思ってますけれども、国民の皆さんとご一緒にその生活関連の施策の充実ということをご一緒にやっていきたいという風に念願をいたしております。行政というものが長いこといわば富国強兵という時代もありましたり、欲しがりません勝つまではもありましたし、輸出をしなければ生きられないということで、どうしてもそっちの方へ、そっちの方へ、またそれなりの功績を上げたことは確かでございますけれども、だんだんやはり生活する人、消費をする人、そういう立場ってものを考えるのは当然ではないかっていう風に多くの方々は思っておられる。行政の方がなかなか長年の習慣があって、理屈は分かっても抜けきれないってなところがありますので、うるさいほどこのことは各省庁の諸君に分かってもらってやっていきたいという風に考えております。