[文書名] アフリカ開発会議‐細川内閣総理大臣の演説(TICAD I)
大統領閣下
御列席の皆様
先ず会議主催国を代表致しまして、遠路遙々お越しいただいた皆様の訪日を心より歓迎したいと思います。
また、共催者として、この会議の実現に向けて多大な労を取られた国連及びGCAの関係者の方々に心より御礼申し上げます。
今回これほど多くの国及び国際機関の代表の参加を得て、この会議が開催されていること自体が、アフリカの直面している問題について国際社会が如何に真剣であるかを物語っており、これは、アフリカの将来にとって極めて心強いことと言えましょう。
御列席の皆様
現在多くのアフリカ諸国においては、時代の要請に応える政治、経済両面での改革努力が行われております。国際社会として、アフリカ以外の各地の動き故に、アフリカへの関心を減少させることは許されません。世界的な相互依存関係がますます深まりを見せている中で、アフリカが直面する問題は国際社会全体にとっての問題なのであります。
我が国は、正にこうした時代認識に立ち「アフリカ開発会議」の開催を提唱致しました。そして、約一週間前、本年の国連総会において私が行った演説の中でも、この会議の持つ重要性を強調した次第であります。
今回の会議は、アフリカ諸国とアフリカの開発パートナーとが、アフリカ開発の今後のあり方について真剣な政策対話を行う場を提供するものであります。私は、こうした対話を通じて、自助努力に対するアフリカ諸国の確固たる意思が示され、また、それを支援する政治的コミットメントがアフリカの開発パートナーより示されることを強く期待したいと思います。
また、今回の会議がアジアで開催されることには特別な意義があると考えます。この会議が一つの契機となって、アジアとアフリカとの間の協力関係が一層促進されることとなれば、極めて意義深いことであります。
更に、今回の会議において、今後のアフリカ開発の指針となるべき「東京宣言」が全ての参加者の確固たる決意の表明として採択されることを強く期待します。
御参列の皆様
我が国は、第二次大戦後、長きにわたって、国際社会から様々な形での支援を得てきました。我が国は、国際社会から直接間接に受けたこれまでの恩義に報いるためにも、国連や国際社会と力を合わせて、アフリカ支援に向けての適切な役割を果たしていくことを願うものであります。
私は、この機会に我が国が今後のアフリカ諸国との関係に関して重視して参りたいと考えている点について簡単に述べたいと存じます。
先ず第一に、我が国は、アフリカにおける改革への挑戦がアフリカ諸国自身の選択において行われようとしていることを高く評価します。そして、このようなアフリカに於ける政治・経済両面に於ける改革を引き続き積極的に支援して参ります。その一環として、我が国は国連などに対する協力を通じて、アフリカにおいても一層の政治的役割を果たすよう努力して参ります。また、経済面では、我が国の政府開発援助(ODA)全体を充実させていくとの観点から、一九九三年からの五年間におけるODAの総額を七百から七百五十億米ドルとするよう努めるとの決意を既に内外に示しております。
第二に、我が国は、開発が「人」に始まり、「人」に終わるとの自らの経験を踏まえて、アフリカにおける人造りを積極的に支援して参ります。その中でも特に、未来を担う若い世代同志の交流を促進していきたいと考えます。また、開発はあくまでも人々のより良い生活に結びつかなければならず、その意味で、アフリカにおける環境問題にも特に配慮して参ります。
第三に、我が国は、アフリカ諸国と我が国の双方の努力の上に、これまでの援助国と被援助国という関係に限定されない、「良き友人関係」を構築して参りたいと思います。我が国は、日本とアフリカとの交流の促進、そして相互理解の増進のために、この会議の開催と時を同じくして、アフリカ紹介に重点を置いた「アフリカ・ウィーク」や「国際協力フェスティバル」を開催しているところであることを付言させていただきたいと存じます。
御列席の皆様
日本には「一本ずつの矢は折れても、束ねられた三本の矢は折れない。」という格言があります。この格言こそ正にこの会議の精神である「団結」を想起させるものであります。即ち、アフリカ諸国政府の努力、活力あるアフリカ民衆の参加、そしてそれを支える援助国及び国際機関の支援という三本の矢があれば、現在アフリカが直面している問題も必ずや解決の糸口が見出せるものと私は確信しております。
最後に、この会議の成功に向けて、ご参列の皆様の深い御理解と御支援を賜りますようお願い申し上げます。
ご清聴、ありがとうございました。