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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 内閣総辞職に当たっての羽田内閣総理大臣の談話

[場所] 
[年月日] 1994年6月25日
[出典] 羽田内閣総理大臣演説集,112−113頁.
[備考] 
[全文]

 羽田内閣は、本日をもって総辞職することといたしました。

 この内閣は、発足時の残念な経緯から少数連立政権としての船出を余儀なくされましたが、激動する内外情勢下において、私は「改革と協調」の政治を心がけ、一日一生の思いで、当面する重要課題に真正面から挑戦してまいりました。短い期間ではありましたが、遅れていた平成六年度予算の早期成立に心血を注いだことを始め、政治改革関連法実施のための体制づくり、税制改革、物価問題への取り組み、規制緩和などの行政・経済改革、日米包括経済協議の再開、北朝鮮核疑惑問題への対応などの難題を、率直に国民に提起し、誠心誠意これに取り組んでまいりました。この内閣のこうした取り組みは必ずや国民の皆様の支持を得てきたものと確信致しております。この間に国民の皆様から賜ったご理解とご協力に改めて感謝したいと思います。

 現在、いわゆる区割法の早期制定による政治改革関連法の実施をはじめ、諸改革への取り組みを本格化すべき重要な時期を迎えております。また、景気の着実な回復を図るため、今般成立をみた平成六年度予算の一日も早い執行が強く求められており、対外的にも、ナポリサミットへの対応を始め一日たりとも政治の空白を許さない課題が山積しております。政治がこれらの課題への取り組みに全力を挙げるべきこの時期に、政策の是非についての十分な議論をなすことなく、内閣不信任案が提出されたことは誠に残念と言わざるを得ません。しかし、冷静に、この内閣の置かれている状況となすべき課題の重要さを考えるとき、政策の基本方向を同じくするより多くの会派が参加した、基盤の強固な政権を構築することが現下の急務であります。このような観点から、私は、この際、「改革」の筋道を通すため、総理の職を辞することによって新たな政権の樹立を国会の御意思に委ねることといたしました。

 内外の情勢が激動し、難問が山積する中、新内閣においては、種々の困難を乗り越え、政治改革の完結をはじめ当面する課題に対し建設的な取り組みが行われるよう強く期待いたします。

 私は今日まで、捨石になってもよいとの覚悟で政治改革に取り組んでまいりましたが、未だ道半ばであります。政権を離れましても、「心鉄石の如し」の心境で政治改革をはじめとする「改革」に全てを投げ打ってまいることを国民の皆様にお誓い申し上げます。

 重ねてこれまでのご支援とご協力に対し、国民の皆様に対し心からお礼申し上げます。