[文書名] 水俣病問題の解決に当たっての村山内閣総理大臣の談話
公害の原点ともいうべき水俣病問題が、その発生から四十年を経て、多くの方々のご努力により、今般、当事者の間で合意が成立し、その解決をみることができました。
水俣病問題については、既に解決をみている公害健康被害の補償等に関する法律による認定患者の方々の補償問題とは別に、認定を受けられない方々の救済に関して、今日に至るまで未解決の問題が残されてまいりました。
私は、この問題の早期解決のため、与党、地元自治体とも緊密な連携をとりつつ、誠心誠意努力してまいりました。重い歴史を背負いながらも苦渋の決断をされた各団体の方々をはじめこの間の関係者のご努力に対し、心から敬意を表したいと思います。
解決に当たり、私は、苦しみと無念の思いの中で亡くなられた方々に深い哀悼の念をささげますとともに、多年にわたり筆舌に尽くしがたい苦悩を強いられてこられた多くの方々の癒しがたい心情を思うとき、誠に申し訳ないという気持ちで一杯であります。
水俣病問題は、深刻な健康被害をもたらしたばかりでなく、地域住民の絆が損なわれるなど広範かつ甚大な影響を地域社会に及ぼしました。
私は、この解決を契機として、水俣病の関係地域の方々が、一日も早く、ともに手を取り合って、心豊かに暮らすことができる地域社会が築かれるよう、心から願うものであります。
今、水俣病問題の発生から今日までを振り返る時、政府としてはその時々においてできる限りの努力をしてきたと考えますが、新潟での第二の水俣病の発生を含め、水俣病の原因の確定や企業に対する的確な対応をするまでに、結果として長期間を要したことについて率直に反省しなければならないと思います。また、私は、このような悲惨な公害は、決して再び繰り返されてはならないとの決意を新たにしているものであります。
政府は、今般の解決に当たり、総合対策医療事業、チッソ支援、地域の再生・振興などについて、地元自治体と協力しながら施策を推進してまいりますとともに、水俣病の悲劇を教訓として謙虚に学び、我が国の環境政策を一層進展させ、さらに、世界の国々に対し、我が国の経験や技術を活かして積極的な協力を行うなど国際的な貢献をしてまいる所存であります。