データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 内閣総理大臣就任(第一次)に当たっての談話(橋本龍太郎)

[場所] 日本
[年月日] 1996年1月11日
[出典] 橋本内閣総理大臣演説集(上),2−3頁.
[備考] 
[全文]

 私は、本日、内閣総理大臣の重責を担うことになりました。その使命と責任の重さに身が引き締まる思いであります。

 戦後五十年を経て、現在、わが国は、国内的にも、国際的にも大きな転換期にさしかかっております。私に課せられた使命は、これからの五十年を展望したとき、混迷の度合いを深めている日本に活気と自信にあふれた社会を再構築すること、そのためには、本年を「構造改革元年」と位置づけ、政治、行政、経済、社会のより抜本的な構造改革を実行に移し、二十一世紀にふさわしい新しいシステムづくりに取り組むことであります。私は、この内閣を「改革創造内閣」とし、新たな三党政策合意を踏まえ、景気回復、信頼回復、安心回復を目指し、施策の展開に全力投球する考えであります。

 内政面では、景気の一刻も早い回復や住専問題への責任ある対応、規制緩和や新規産業の創出など抜本的な経済構造改革により、強い日本経済の再建に全力を尽くすとともに、超高齢社会を目前に控え、長生きして幸せだった、この国に生まれてよかったと言える長寿社会の建設に向けて真剣に取り組んでまいります。また、国民の安全の確保の観点から、大規模災害や緊急事態に対する政府の危機管理体制の強化に全力を挙げてまいります。

 外交面では、わが国は二度と戦争の惨禍を繰り返さないという平和への決意の下、「平和立国」、「平和貢献」、「平和創造」を基本理念といたします。その際、日米関係が、アジア太平洋地域、そして世界の平和と安定の要であることを再認識し、その礎である日米安保体制を堅持し、相互の信頼関係を一層深化させるためにも、また、長年にわたる沖縄の方々の悲しみ、苦しみに最大限に心を配った解決を図るためにも、当面する沖縄米軍基地問題については、政府として、誠心誠意取り組んでまいる決意であります。

 総理の職を預かるにあたり、私はあらためて政治というものの責任を痛感いたしております。政治の使命は、将来のこの国と世界の平和と繁栄のため、政府に何が求められているかを真剣に検討し、そのために必要な改革には、強い政治的リーダーシップの下、これに不退転の決意で取り組むことであります。

 私は、ここに申し上げた政策課題について、「決断と責任」を政治信条に、自らの政治生命をかけて全力で取り組んでまいる決意であります。

 国民の皆様のご理解とご支援を心からお願い申し上げます。