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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 阪神・淡路大震災犠牲者追悼式典における追悼の辞(橋本龍太郎)

[場所] 
[年月日] 1996年1月17日
[出典] 橋本内閣総理大臣演説集(下),882‐883頁.
[備考] 
[全文]

 本日ここに、「阪神・淡路大震災犠牲者追悼式典」が執り行われるに当たりまして、謹んで追悼の言葉を捧げます。

 多くの尊い命を奪い、この地に未曾有の被害をもたらした阪神・淡路大震災の発生から、ちょうど一年が経過いたしました。この突然の地震で亡くなられた方々の無念さ、また、最愛の肉親を亡くされたご遺族の方々の深い悲しみを思いますと、まことに痛恨の極みであり、哀惜の念に堪えません。改めて、亡くなられた方々とそのご遺族に対し、心から哀悼の意を捧げるものであります。

 大きな被害を受けた阪神・淡路地域では、今もって、不自由な生活を余儀なくされておられる方々が多くおられます。ご遺族の方々をはじめ、このような方々が、厳しい試練を乗り越え、生活を再建していかれるよう、阪神・淡路地域の一日も早い復興に向けて、国としても全力を挙げて取り組んでいくことを、この場をお借りして固くお誓い申し上げます。

 また、阪神・淡路大震災の貴重な教訓を今後の災害対策に活かすべく、今後とも総合的な防災対策を積極的に推進し、国民が安心して暮らせる社会の実現に全力を挙げてまいります。

 地震の発生から一年が経過した現在、関係者の一体となったご努力により、電気、水道等のライフラインや、道路、鉄道等の交通基盤施設などは、おおむね順調に復旧してきております。しかしながら、復興は長期にわたる事業であり、復興に向けての本格的な取組みはまさにこれからであります。皆様方の愛したこの故郷が、来るべき二十一世紀のモデルとなるような、安全で住みよい、魅力ある街へと再生していかれますよう、地元の方々とともに、最善の努力をしてまいりたいと、決意を新たにする次第であります。

 終わりに、犠牲者の方々のご冥福を衷心よりお祈りいたしますとともに、ご遺族の皆様方に重ねてお悔やみを申し上げまして、追悼の言葉といたします。