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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「包括的核実験禁止条約」の署名についてのコメント(橋本龍太郎)

[場所] 日本
[年月日] 1996年9月24日
[出典] 橋本内閣総理大臣演説集(上),160頁.
[備考] 
[全文]

一、わが国は、九月二十四日(火)、ニューヨークの国連本部で開催されている「包括的核実験禁止条約」の署名式において、非核兵器国としては他国に先駆けてこの条約に署名した。署名者は橋本総理大臣である。

二、この条約は、ジュネーブ軍縮会議において平成六年から交渉が行われてきたが、本年八月、ほとんどの交渉参加国の支持にもかかわらず、インド等の反対により軍縮会議において条約案を採択する(コンセンサス方式)ことが断念された。しかし、同条約の成立を望む多数の国(わが国を含む百二十七か国)が第五十回国連総会再開会期に同条約の採択を共同提案した結果、同条約は同会期において採択(九月十日)された。わが国は、この条約の軍縮会議における交渉の過程から国連総会における採択に至るまで、交渉作業の取りまとめや条約への支持を各国へ働きかける等、この条約の成立に積極的に貢献してきた。

三、この条約は、いかなる核兵器の実験的爆発又は他の核爆発も実施しないこと等を義務付けるとともに、条約の目的の達成を確保するための厳重な検証制度について規定している。この条約が目的とする核実験の禁止は、国際社会全体の平和と安全を増進する上で重要であり、わが国がこの条約に署名することは、こうした平和・核軍縮問題へのわが国の積極的な姿勢を明らかにするものである。