データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アフガニスタン復興支援国際会議における小泉内閣総理大臣のオープニング・スピーチ

[場所] 
[年月日] 2002年1月21日
[出典] 首相官邸
[備考] 仮訳
[全文]

御出席の皆様、

アッ・サラーム アライクム(今日は)

 「アフガニスタン復興支援国際会議」への御参加を歓迎いたします。本日は、日本、米国、EU、サウディ・アラビアの共同議長の下、アフガニスタンの復興支援に関心を有する約60ヶ国の国や約20の国際機関から代表の方が一堂に会しております。これは世界がアフガニスタンの和平と再建を自らの課題としていることの証であると思います。また、アフガニスタンより、カルザイ暫定政権議長をはじめ明日の国造りを担う指導者の方々が参加されています。将来についてのビジョンを伺えることを楽しみにしております。

 アフガニスタンの将来はアフガニスタンの人々が作り上げるものです。和解プロセスがアフガニスタンの人々自身によって順調に進められて初めて、国際社会は復興への努力を進めることができます。

 昨年9月11日の米国における同時多発テロ事件は世界を変えました。このような許し難い行為は、全人類の尊厳への挑戦です。アフガニスタンの国民もタリバン及びアル・カーイダの犠牲者でありました。現在、国際社会は、文化や宗教の違い、国境を超えて、非人道的なテロリストからの挑戦に対して力を合わせて立ち向かっています。しかし、テロリズムを根絶するためには、テロリストが根付く素地をなくすことが重要です。そのためにも平和で安定したアフガニスタンを造ることが不可欠です。この取組は決して1、2年で終わるものではなく、何年もかかる長い道のりです。しかし、私は、これを成し遂げることができると確信します。

 アフガニスタンの恒久的な和平、安定のために、昨年12月のボン合意は政治プロセスへの道筋を付けました。今回の東京での会合においては復旧・復興に向けたプロセスに道筋を付けることが期待されています。20年来の戦乱により、アフガニスタンは荒廃したままとなっています。アフガニスタン暫定政権が国際社会の支援の下に復旧、復興への道筋を示していくことによって、全ての国民に希望を与えることが重要です。アフガニスタンの人々には、武器ではなく農具を、不安ではなく自信をもって自らの国造りに取り組んでいただきたいのです。ここに集まった各国、各機関がアフガニスタンの人々の努力に対して一致団結して協力していく力強い姿勢を示そうではありませんか。

 日本としても、アフガニスタンの復興に向けて最大限の支援を行っていきます。日本の支援は、和平プロセス・国民和解のための支援と、アフガニスタンの将来を担う人造りに対する支援に重点を置いて行う方針です。具体的には、復興の前提となる「難民・避難民の再定住」、「教育」、「保健・医療」、「女性の地位向上」といった分野で貢献します。また、これらの分野での進展に当たっての前提というべき安全の確保のために、地雷・不発弾の除去に力を入れたいと思います。緊急に必要な機材の整備、除去事業への支援、犠牲者支援計画への協力を行います。また、日本は、地雷除去の技術開発に努めます。これらを踏まえ、日本は、ボン合意に従ってアフガニスタンにおける正式政権が樹立されるまでの向こう2年6ヶ月の間に5億ドルまでの支援を行います。そのうち、最初の1年間については、人々のニーズに沿った効果的な援助の実施のためアフガニスタン側と緊密に連携しつつ、最大2億5千万ドルまでの支援を行う用意があります。

御出席の皆様、

 最後に、NGOの方々の役割を評価するとともに、彼らとも連携しつつ、この東京会合が更なる前進につながる重要な出発点となることを確信していることを述べ、私の挨拶とさせて頂きます。

 有り難うございました。