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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 小泉総理と在京アフリカ外交団との懇談(小泉総理挨拶)

[場所] 
[年月日] 2002年6月20日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 ファラ在京アフリカ外交団長、

 アフリカ各国の大使の皆様

 本日はお集まり頂き、ありがとうございます。新官邸に移って2ヶ月、このように多くの外国の方々にお集まり頂くのは本日が初めてです。

 私は来週、カナダのG8サミットに出席します。今年のサミットの最も重要な議題はアフリカです。そこで本日は、私のアフリカへの熱い思いを是非皆様に直接お伝えしたく、懇談の場を設けました。

 サミットではG8とアフリカとの連帯につき議論されます。これは、日本が2000年九州・沖縄サミットで試みた途上国代表との対話が発展したものです。私はアフリカにとって何が最も必要かを真剣に考え、その結果を「日本のアフリカとの連帯ー具体的行動ー」としてとりまとめました。

 アフリカは、今、自らの未来を自らの手で切り開いていこうと明確な意思を示しています。「アフリカ開発のための新しいパートナーシップ(NEPAD)」の策定、「アフリカ連合(AU)」発足に向けた動きは、その明確な表れとして歓迎されます。

 日本は以前からアフリカ諸国自身の自助努力(オーナーシップ)と、これを支える国際社会のパートナーシップの重要性を提唱して参りました。「アフリカ開発会議(TICAD)」プロセスは、アフリカ問題への日本の継続的取り組み、そして、国際社会の中でアフリカと共に歩もうとする日本の意思を象徴するものです。

 本日皆様にお伝えする「具体的行動」もこうした意思の表れです。そこで、私からは、特に以下の点を強調したいと思います。

 第一に、国づくりの基礎が人づくりにあるとの認識は、日本人自身の経験に深く根ざしたものです。そこで、「人間中心の開発」に重点を置いています。

 私は就任演説の際に、困窮の中にあっても明日の人づくりが重要であるとの「米百俵」のエピソードを紹介しました。この考え方に則り、日本は、教育や保健といった分野に重点を置いた援助を行っています。特に基礎教育の分野では、今般「成長のための基礎教育イニシアティヴ」を発表し、またアフリカ諸国を含む低所得国に対して教育分野で今後5年間で約20億ドル以上の支援を実施していくことを決定しました。

 98年のTICADIIの際には、アフリカにおける教育、保健及び安全な水の供給に関し5年間で約7.5億ドルの協力を実施する旨約束しました。この結果、既に多くの成果が出ていますが、引き続きその協力を実施してまいります。

 私は、アフリカに真の「緑の革命」を起こしたいと考えています。いま、アフリカの一部ではアフリカ米とアジア米を交配した新しいタイプの稲である「NERICA米」の開発・普及が進められています。食糧安全保障の向上に貢献することを期待し、日本はこれに協力しております。NERICA米は、アジアの開発経験を基にした、新しいアジア・アフリカ協力を代表するものです。

 第二に、飢餓や貧困を削減し、持続可能な開発を進めていくためには、援助だけでなく、国内資金、貿易、投資など幅広い資金の動員が鍵です。特に、途上国産品に対する市場アクセスを改善することは重要な方策です。日本は、昨年4月、後発開発途上国(LDC)産品に対する市場アクセスの改善を行い、その結果、鉱工業製品についてはほぼ100パーセントに近い品目について無税・無枠の市場アクセスを提供できるようになりました。

 日本は、今後ともすべての後発開発途上国産品に対する無税・無枠の市場アクセスの供与という目標に向け努力してまいります。このような観点から、明年度の関税改正に向けて無税品目の追加について具体的な措置内容を早急に検討してまいります。

 第三に、日本は、紛争の解決、平和への努力を後戻りさせることのないようアフリカ諸国の努力への支援を行っていきます。例えば、シエラレオネに対しては、「人間の安全保障基金」を通じ、元兵士の社会復帰支援計画への309万ドルの支援を決定しています。今後はアンゴラへの支援を検討していきたいと考えます。

 また、紛争予防の文化を広める支援を行っていくとともに、難民に対する支援を今後とも国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)等を通じ行っていきます。

 アフリカ問題の解決なくして21世紀の世界の安定と繁栄はあり得ません。日本のODAを巡る状況は厳しいものですが、アフリカと連帯する日本の熱意には変わりはありません。日本は、来年後半に予定しているTICADIIIまでの1年を「対アフリカ協力飛躍の年」と位置付けております。日本は、アフリカとともに知恵を絞り、汗を流し、TICADIIIに向け、アフリカとの連帯のための具体的行動を推進してまいります。

 それでは、アフリカと日本との連帯の更なる強化を祈念して、杯を挙げたいと存じます。

 乾杯。