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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第3回日本・PIF首脳会議開会式における小泉総理の開会演説

[場所] 沖縄
[年月日] 2003年5月17日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

ガラセPIF議長、

太平洋諸島フォーラムの指導者の皆様、

稲嶺沖縄県知事、

 太平洋諸島フォーラムの同僚の皆様には、第3回日本・PIF首脳会議ご出席のため、遠路はるばるお集まりいただきましたことに心より感謝申しあげます。我々は世界一大きな海に散らばっておりますが、日本は皆様それぞれを身近な隣人と考えています。私は、皆様を心より歓迎致します。

 私は、今回の首脳会議を、特有の文化と自然の美しさに満ちた島々からなる沖縄で開催できたことを個人的に嬉しく思います。また、この会議の主催県として、多大なご支援を頂いている稲嶺沖縄県知事及び沖縄の皆様にも厚く御礼申し上げます。

 今回の首脳会議における我々の最大の使命は、太平洋地域にふさわしい「持続可能な開発」を実現していくための具体的な行動を定めることです。私達は、前進して行く中でも、文化と環境が守られてほしいと望んでいます。開発戦略を準備するにあたり、我々はこの美しく恵み深い太平洋が全ての人に恩恵を与えてきたことを、心に留めておかなければなりません。

 昨年のヨハネスブルグにおけるWSSDにおいて、私は持続可能な開発を実現するための最大のカギは「人」だと申し上げました。教育や保健医療が極めて重要であることを訴えました。また、自立していくための貿易・投資の必要性にも言及しましたし、「美しい地球」を子供達、そして更に彼らの子供達に継承していくことの必要性も指摘しました。これから2日間、これらすべての課題につき、具体的に何が出来るのか話し合うことを提案します。

 今回の首脳会議では、太平洋の友人達の努力に対するわが国の協力のあり方も具体的に表明してまいります。初等教育の充実やIT技術を活用した高等教育の発展に貢献していきます。保健衛生分野では、HIV/AIDS等の感染症や糖尿病等の抑制に取り組んでいきます。貿易・投資の促進ついての展示会やワークショップが開催されています。村落開発面での協力も今後行っていきます。更に、わが国は、平和の定着やテロ・国際犯罪の抑止に向けた地域の努力を支援していきたいと思います。

 環境関連の取り組みについては、わが国の経験も踏まえて、特に積極的な支援を表明したいと思います。例えば、ごみ処理やリサイクルの促進を支援する用意があります。この問題はまさに小泉内閣が重点施策として取り組んでいるものですが、太平洋諸島で大きな問題となっています。また、珊瑚礁など自然環境の保全についても、沖縄県の経験やNGOの取り組みを十分取り入れながら、技術移転を図っていくことを提案します。地球温暖化問題についても、わが国は、引き続き積極的な役割を果たす所存です。この3月に日本で開催された「第3回世界水フォーラム」の成果を踏まえて、安全な飲料水と基礎的な衛生の確保の問題にも取り組んでいきたいと考えます。

 沖縄は、こうした問題に対し大きな役割を果たせると思います。太平洋諸島諸国と多くの問題を共有しているが故に、沖縄のこれまでの経験は大いに有益であると思います。沖縄の人々はこうした挑戦に対応すべく大いに努力してこられました。この会議場の隣の建物で、沖縄のNGO等の活動の展示会が行われています。是非本日の会議終了後見ていただければ幸いです。また、沖縄の皆様にも、今後、太平洋諸島諸国との交流を更に促進していかれるようお願いしたいと思います。

 この地域の問題に、より効果的に対応していくためにも、この地域における主要な援助国である日本、オーストラリア、ニュージーランド3カ国の間での協力と協調を図っていくことが有益であります。更に、国際機関からの支援やNGOの取り組みも不可欠の要素だと思います。

 太平洋流(Pacific Way)というのは、人々が何度も集まって議論し、一歩一歩段階的にしかし着実に前に進んでいくことです。今私達が集まっている場所のは「万国津梁館」と呼ばれていますが、万国津梁とは「世界の架け橋」という意味です。私は、今回の首脳会議がこうした精神に立つよう希望しています。そのために、本日ご参加されている指導者の皆様のご協力をお願いします。

ご清聴有り難うございました。