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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アジア・アフリカ・ビジネスサミットにおける小泉総理大臣スピーチ

[場所] ジャカルタ,インドネシア
[年月日] 2005年4月22日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

ヒダヤット・インドネシア商工会議所会長、

プラセティオ議長、

アジア・アフリカ両地域から御列席の皆様、

(アジア・アフリカ間のビジネス関係強化の意義)

 バンドン会議50周年の機会に「アジア・アフリカ・ビジネス・サミット」が成功裡に開催され、アジア・アフリカ双方の一層の繁栄と関係強化に向けた議論が積極的に行われたことを喜ばしく思います。

 我が国は、過去半世紀の間、近隣アジア諸国と、貿易・投資はじめとして、様々な交流を通じ緊密な経済関係を築き上げ、共に繁栄を享受してきました。またアジアとアフリカとの間の経済関係も、最近、飛躍的な成長を遂げています。アフリカ諸国の対アジア輸出は過去10年間で二倍以上の規模に拡大しています。

 現在、首脳会議で議論されている「新たなアジア・アフリカ戦略的パートナーシップ」においては、政治面での両地域の協力と並んで、経済面での関係強化が重視されています。今こそ、官民双方の努力により、アジアとアフリカの協力を一層強化すべき時です。

(我が国のアジア・アフリカ両地域での貿易投資促進の取組)

 アジア・アフリカ協力の強化に向けて、アジアの一員である我が国は、ASEANを含む東アジアの繁栄が、アジア・アフリカ全体の経済発展と、両地域間の関係増進の牽引役となることを望んでいます。そのために我が国は、ASEANを始めとする近隣アジア諸国と、単なる貿易の自由化(FTA)ではなく、経済社会制度や人材育成面での協力を含む包括的な経済連携(EPA)を推進しています。

 アフリカ諸国との関係では、我が国はこれまで10年以上に亘り、アフリカ開発会議(TICAD)プロセスを推進し、アフリカ自身の開発努力をパートナーとして支援してきました。特に貿易・投資の促進においては、昨年11月にTICADアジア・アフリカ貿易投資会議を東京で開催し、私から、アジア・アフリカ間の貿易投資の促進のために、産業基盤整備や人材育成などの面でアフリカ諸国の自助努力を支援していくことを表明しました。また本日の首脳会議において、私は、アジアの成長の原動力の一つとなった生産性運動を、アフリカに伝えていくことを提案しました。こうした産業分野における人材育成などの協力は、アジア・アフリカ両地域の民間レベルでも進められることが重要であると考えており、政府としても可能な限りの協力を進めてまいります。

(アジア・アフリカ間の貿易投資促進のための新たなイニシアティブ)

 我が国は、これまでTICADプロセスの一環として、UNDPと協力し、アジア・アフリカ両地域の企業関係者に商談の場を提供する「アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム」を三度に亘り開催してまいりました。その結果、合計約190件、約1億4000万ドル相当の覚書が締結されるなど、具体的な成果を収めてきています。来年には、より大規模な「第4回アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム」を開催したいと思います。

 アジア・アフリカ間の貿易投資の障害の一つとして、情報不足が繰り返し指摘されています。我が国政府は、今回の会議の機会にUNDPやUNIDOと協力して、インターネットを活用してアジア・アフリカ両地域のビジネス関連情報を提供する「TICADエクスチェンジ・ネットワーク」を新たに立ち上げました。こうした取組が、両地域の貿易投資関係の一層の発展の一助となることを期待しており、皆様には是非ご参加・ご活用頂きたいと思います。

(結び)

 アジアとアフリカの交流に関しては、東アジアからアフリカ東岸までを含むインド洋海域の交易情報をまとめた約2000年前の文献が残っています。この文献は、アジアとアフリカの間で、遙か昔から人・物・情報の幅広い交流が、商人たちの手によって、行われていたことを示しています。今日の我々は、この二千年の交流の歴史の上に立っているのです。

 我が国は、2008年に第四回アフリカ開発会議(TICAD IV)を開催します。我が国は、バンドン会議の50周年を機に生まれた新たな協力への勢いを失わせることなく、アジアとアフリカをつなぐ風を吹かせ、両大陸間の交流の原点であった起業家精神を一層積極的に支援していきます。

 ご静聴ありがとうございました。