データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第60回国連総会首脳会合における小泉総理大臣演説「言葉から行動へ」

[場所] 仮訳
[年月日] 2005年9月15日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

議長、

御列席の皆様、

 はじめに、ハリケーン・カトリーナによって最愛の人を失われた方々に対し、深い哀悼の意を表します。この恐ろしい惨状から立ち直ろうと闘っている人々への私たちの支援は、いささかも揺るぎません。

 本日は、新たな国連の未来像を皆様とともに分かち合いたいと考えます。

 私たちには、極端な貧困と闘っている人々、自助に努める人々に手を差しのべる、優しさのある国連が必要です。

 私たちには、平和の構築に向けた道筋をつけ、テロとの闘いにおいて積極的な役割を果たす、強い国連が必要です。

 私たちには、60年前ではなく、今日の世界における私たちの願いや規範を反映した、効果的な国連が必要です。

 優しさのある国連となるためには、ミレニアム開発目標達成に向けた努力を強化することが必要です。これらの目標を達成するためには、善意の意図表明だけではなく、行動が求められます。我が国を含め、先進国がより拡充された約束を実行に移すことが、より良い世界のための基礎となるのであります。

 しかしながら、そうした努力は資金面のみにとどまるものではありません。新たな国連は、私たちが「人間の安全保障」と呼んでいる人間中心のアプローチに焦点をあて、国際社会とのパートナーシップを通じた開発途上国のオーナーシップを奨励する必要があります。

 平和は、紛争が終われば自動的に拡がるものではありません。新たな強い国連は、提案されている平和構築委員会を設置し、停戦から国造り、和解、正義及び復興に至るまでの円滑な移行を確実にするため、指導力を発揮しなければなりません。我が国は、たやすくはないが極めて重要なこの試みにおいて、役割を果たす準備があります。

 テロとの闘いにおいて、新たな国連は、規範を積極的に設定していく役割を担うことが必要です。このような考えから、本日、私は、核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約に署名しました。加えて、私は、包括テロ防止条約の交渉の早期妥結を呼びかけます。

 世界は、過去60年の間、劇的な変化を遂げました。かつて植民地主義のくびきの下にあったアジア及びアフリカは、今や、グローバルな社会において重要なプレーヤーとなっています。過去60年間にわたって、日本は、平和を愛する国家としての発展を強い決意で推進し、世界の平和と繁栄のために独自の、かつ重要な貢献を行ってきました。

 安保理の構成には、このような根本的変化を反映していかなければなりません。我が国は、安保理を改革することは、長らく死文化している「旧敵国条項」を国連憲章から削除することと同様に、国際社会にとっての大義であると確信しています。我が国は、改革された安保理において、常任理事国としてより大きな役割を果たす用意があります。

 昨年、私は、この演壇から、同僚の方々に対し、この根本的な挑戦に立ち向かうよう呼びかけました。現在、国連の歴史において初めて、加盟国からの広範な支持を得て、行動が取られるとの現実的見通しが出てきています。この機運を活かし、私たちは、今次総会の会期中に、安保理改革のための早期の決定を追求すべきであります。

 事務局を含め、刷新された国連システムは、全ての加盟国及びその国民の揺るぎない信頼と支持を得る必要があります。新しい効果的な国連は、それ故、人々の厳格な精査に対して自らを開くべきであります。我が国は、これを早急に実現すべく、志を同じくする国々と協力していきます。

 改革とは、常に挑戦であります。なぜなら、それは、既存秩序に真向から立ち向かうものであるからです。しかしながら、それは行動を起こさないことを正当化するものでは決してありません。

 今次総会会期を行動の会期‐国連の包括的な刷新を達成するための行動の会期‐にすることを目指して、一致団結して努力していこうではありませんか。

 御静聴ありがとうございました。