[文書名] 天皇陛下御在位二十年記念式典内閣総理大臣式辞
天皇陛下には、本年、御在位二十年をお迎えになられました。皇居において「即位礼正殿の儀」が厳かに執り行われた平成二年十一月十二日、この縁のある日に、国民こぞって御在位二十年をお祝いするため、本日、ここに、この式典を挙行した次第であります。国民を代表し、謹んで心からお祝い申し上げます。
この二十年を顧みますと、陛下は、「日本国と日本国民統合の象徴である」との憲法の定めを常にお心に置かれ、まさに国民とともに歩んでこられました。
平成十六年の新潟県中越地震など自然災害がおこった際には、両陛下は、被災地を直接訪問されて、避難所の体育館で被災者の間に入られ、被災者の方と同じ目線で話を聞き、慰めたり、励ましたりされてこられました。そのお心遣いに触れ、どれだけ多くの被災者が心を打たれ、再び頑張る気力を奮いたたせることができたことでしょう。
また、両陛下は、戦後五十年の国内各地への慰霊の旅に続き、戦後六十年に当たる平成十七年には、サイパン島へ赴かれました。バンザイクリフの崖の上で、深く頭を垂れて黙祷される両陛下のお姿に、私どもは、深い感銘を受け、改めて平和への誓いを新たにしたのであります。
両陛下は、このように人々とお会いになるときは、一人一人に丁寧に時間をかけ、真剣に向き合われ、心を通わそうとなさっておられます。誠にありがたく、心から感謝申し上げる次第であります。一方、日頃から大変お忙しい両陛下におかれては、お疲れが出ることもお有りになるのではないかと存じます。「天皇皇后両陛下、どうか、これからも、ますますご健康であられますように」と、心から申し上げたいと思います。これは、両陛下を敬愛する国民全ての偽らざる気持ちであると確信しているところであります。
このような中、本年四月、両陛下は、御結婚五十年をお迎えになりました。誠におめでとうございます。記者会見で、陛下は「語らひを 重ねゆきつつ 気がつきぬ われのこころに 開きたる窓」という、ご婚約内定後に詠まれた御製を引かれ、「結婚によって開かれた窓から私は多くのものを吸収し、今日の自分を作っていったことを感じます。結婚五十年を本当に感謝の気持ちで迎えます。」と微笑みながらお話しになられました。大変僭越ではございますが、両陛下のお互いをいつくしむ御心と温かいお人柄に触れた国民の多くが、改めて敬愛と親しみの念を深めたのであります。
私どもは、陛下の御心を体し、過去の歴史に学びつつ、諸国民から信頼される日本をつくり、世界の平和と人類の福祉のために、最善を尽くす決意を新たにするものであります。
ここに、国民を挙げて、御在位二十年をお祝いし、天皇陛下、皇后陛下の御健康と皇室の御繁栄を心からお祈り申し上げる次第であります。
平成二十一年十一月十二日
式典委員長
内閣総理大臣 鳩山由紀夫