[文書名] 鳩山由紀夫内閣総理大臣発言
内閣総理大臣発言
1.鳩山内閣最後の閣議にあたり、一言申し上げます。昨年夏、国民の皆様のご支持をいただき政権交代を実現してから8ヶ月余り、政権交代によって国民の皆様の暮らしを必ず良くするという決意の下で、私は今日までその職務を遂行してまいりました。本日ここに職を辞することとなります。8ヶ月という短い期間で、道半ばという感は否めません。しかし、私としては今現在の日本の姿だけではなく、10年、20年先の日本のあり方を念頭に置きながら、理想を持って様々な課題に取り組んできたつもりです。特に、次の4点について申し上げます。
2.第1に、地域主権改革です。これまで、地方の裁量を最大限に生かすための「義務付け・枠付け」の廃止や「一括交付金」の創設など、「地域主権戦略大綱」の策定に向けた検討を進めてきました。地域主権改革は、国が上にいて決め、地方が従うという中央集権を転換し、国と地域のあり方を根本的に変える改革です。地域のことは地域に住む住民が責任を持って決めることのできる活気に満ちた社会をつくっていく必要があります。
3. 第2に、「新しい公共」です。人を支えること、人の役に立つことは、それ自体が歓びとなり、生きがいとなる、こうした人々の力を「新しい公共」と呼びました。この力を支援することにより、自立と共生を基本とする人間らしい社会を築き、地域の絆を再生し、これまで「官」が独占してきた領域を開いていきたいと考えました。こうした考え方にご理解をいただき、本日、円卓会議で、「新しい公共」宣言がとりまとめられました。あわせて、寄附税制の拡充をはじめ、「新しい公共」の担い手を拡大するための具体的な政府の対応を決定したところです。
4.第3に、東アジア共同体です。私は、内閣発足以来、「開かれた地域協力」の原則に基づく、「東アジア共同体構想」を提案して参りました。これは、息の長い努力の末可能となるものですが、その努力は今こそ始めるべきと思っています。そこで各閣僚にアイディアを出していただくようお願いし、その結果は前回の閣議で御報告したところであります。経済連携の拡大、環境問題の克服と持続的成長、教育・文化交流、防災・医療、そして海賊対策や海難救助といった分野を手始めとして、東アジアの諸国が互いに国境というものを感じなくなるような世の中を作り、そのために日本という国を開いていくこと、そしてその先に、日本と東アジア地域の未来が拓かれる、と確信しています。
5.第4に、地球温暖化対策です。政権発足直後の国連の場で、私は、2020年に温室効果ガスを1990年比で25%削減するとの目標を掲げました。その後、途上国支援のための鳩山イニシアティブを活用しつつ、コペンハーゲンでの政治合意の取りまとめなどに率先して取り組んでまいりました。地球や人類の将来を見据えるならば、短期的には困難な課題があっても、我が国は、しっかりとした決意を持って、世界の中で温暖化対策をリードしていかなければなりません。
6.また、これからも引き続き責任あるお立場にある皆様にお願いがあります。「政治とカネ」、「普天間基地移設」の問題です。政権与党が国民の信を取り戻すためには、いわゆる「政治とカネ」の問題に真剣に取り組みクリーンな政治を作り上げること、将来の沖縄を展望しつつ、負担の軽減等の基地問題に取り組み、日米同盟を21世紀にふさわしい形で深化させることが何よりも大切だと考えています。皆様にはそのためのご尽力をよろしくお願いいたします。
7.最後に、私と理想を共有しこれまでご努力いただいた閣僚の皆様に心から感謝申し上げるとともに、今後も10年、20年先の日本の姿を見据えて、高い理想を持って取り組んでいただくことをお願い申し上げます�