データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 小島嶼国開発ハイレベル会合開会式における菅総理大臣の演説

[場所] ニューヨーク
[年月日] 2010年9月24日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

議長、 

 御列席の皆様、

 本日は、日本が様々な分野でパートナーシップを構築してきた小島嶼国の代表の皆様に直接お話しすることができ、誠に喜ばしく思います。このような機会を設けていただいたダイス国連総会議長のリーダーシップに改めて敬意を表します。

 ご承知のとおり、我が国も島嶼国です。4つの大きな島と6,800以上もの島からできている島国です。我が国は、自然災害の多い地域に位置しています。毎年、台風が上陸し、地震も多い、そういう国です。自然災害の恐ろしさ、悲惨さを身をもって体験し、その克服に長年取り組んできました。それゆえ、小島嶼国が直面する問題の難しさを、我がことのように感じています。美しい景観や、豊かな海の恵み、独自の生物多様性、固有の文化を大切にしながら、島国ゆえの脆弱性を克服しようと努力している人々を最大限支援したいと思っています。そういう日本の取組の中で、特に「自然災害」及び「気候変動」に焦点を当てて、本課題に取り組む日本の決意を申し上げたいと思います。

 議長、

 多くの小島嶼国は、自然災害の多い地域に位置しており、今もなお地震、津波、ハリケーンなどの被害に苦しんでいます。今年1月のハイチにおける大規模な地震により、多くの命が奪われ、基礎的なインフラが崩壊するなど、自然災害の被害の深刻さを改めて示すものになりました。日本は、地震直後に、国際緊急援助隊を派遣したほか、自衛隊施設部隊を国連ハイチ安定化ミッションに派遣し、現在も、瓦礫除去や道路補修等の復興活動に従事させています。今後とも、ハイチの国家再建を最大限支援しています。

 次に、防災について述べたいと思います。すなわち、様々な自然災害に直面している小島嶼国にとって、自然災害の被害を最小限にするためには、防災への取組が不可欠です。国レベル、地域レベルで、安全で災害に強い社会を築くための努力が重要です。そういう努力に対して、防災について長年の知見と経験を有する日本は、人材育成、防災体制の整備などに対し支援してまいります。

 議長、

 小島嶼国は、気候変動に対して特に脆弱です。海面上昇は、多くの小島嶼国の生存をも脅かしかねない問題です。日本は、深刻な脅威に直面する小島嶼国の切実な声に耳を傾け、気候変動の深刻な脅威をなくさなければなりません。そのためには、国際社会全体が行動を起こし、地球温暖化の進行を止めることが必須です。すべての主要国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組みの構築が不可欠です。それを最も必要としている国々が、小島嶼国です。日本は、年末のメキシコにおけるCOP16を成功させるべく、小島嶼国と協力していきたいと思います。

 議長、

 日本は、パートナーシップの精神の下、小島嶼国の特別なニーズや優先課題に沿った支援を行うため、これら国々との対話を重視しています。日本は、1997年以来、過去5回の太平洋・島サミットを主催しており、太平洋島嶼国の国造りに向けた自助努力を支援してきました。2012年に予定している第6回サミットの準備として、来月に中間閣僚会合を東京にて開催する予定です。また、日本とカリコム諸国は、今月、東京で第2回日・カリコム外相会議を開催し、更なるパートナーシップの推進について合意しています。さらに、アフリカ地域の小島嶼国については、アフリカ開発会議(TICAD)のプロセスを通じた支援策の中で、その特別なニーズに配慮した協力を行ってきています。

 議長、

 これらの小島嶼国との対話及び協力において、日本は、人間の安全保障という考え方を一つの核としています。すなわち、小島嶼国に住むすべての人々が、自由で尊厳を持って生きることができるような支援を目指します。その際には、環境、保健、教育など、小島嶼国が直面する様々な課題から最も深刻な影響を受けている人々の視点に立って、政府、地方自治体、国際機関、NGO、民間団体などが積極的に協力し、それらの課題に包括的に対処することが重要です。

 議長、

 小島嶼国は、息をのむような素晴らしい 自然、長い歴史と伝統的な文化を先祖から受け継いでいます。その偉大なる遺産を将来にわたって継承しながら、直面する問題を解決することが重要です。日本は、そのような努力を行うすべての小島嶼国の力強いサポーターであり続けます。

 御清聴ありがとうございました。