データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] APEC CEOサミットにおける総理挨拶

[場所] 横浜
[年月日] 2010年11月13日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

 御列席のCEO及び企業幹部の皆様、

 皆様の横浜への御来訪とAPEC・CEOサミットへの御参加を心より歓迎します。ビジネスの最前線で活躍され、世界と地域の経済を牽引しておられる皆様とお会いできて、とても光栄です。

 今日と明日の2日間、APEC首脳会議が開催されます。

APECは創設から21年がたち、アジア太平洋地域は世界で最も活力に満ちた「成長センター」になりました。

 我々を取り巻く環境は、今後もダイナミックに変わり続けます。

 APECは、進化し続けなければなりません。

 今年のAPECには、二つの大きなテーマがあります。

 一つは、APECの中核的な理念である、貿易・投資の自由化、円滑化を更に掘り下げ、ヒト、モノ、カネが行き来する自由貿易圏、FTAAPの実現に一歩踏込みこむことです。

 もう一つは、世界経済及び地域経済が直面する新たな課題に対応し、持続可能な成長を達成するため、APECのメンバーが成長のあり方についての認識を共有することです。我々は、APECとして初めてとなる、「成長戦略」の策定をめざします。

 私は、この地域の将来について、APEC首脳の皆さんとじっくり語りあい、議論を深めて共通理解が得られるよう、議長として最善を尽くすつもりです。

ビジネス界の皆さまからも、力強い提案や積極的な協力をいただきたいと思います。

 さて、日本では17世紀から19世紀にかけ、外国との往来を厳しく制限した、鎖国と呼ばれる時代がありました。様々な困難を乗り越えて開国に踏み切ったのは、今から150年ほど前のことです。

 我々が集う横浜は、当時開かれた港の一つで、今日では日本でも屈指の国際港に成長しました。その横浜の地で、皆さんを前に申し上げたいことがあります。

日本は、今また、国を開きます。

 今日、世界の多くの国々が「国を開き」、次々と経済連携協定を結び、自由な貿易圏を形成しています。率直に言って、わが国はこの世界の潮流から取り残されつつあります。

 日本の繁栄は、世界、特に発展著しいアジア太平洋地域と共に成長の道を歩む、ということを抜きに考えられません。

 今月9日に閣議決定した「包括的経済連携に関する基本方針」の下、日本政府は、わが国に特に大きな利益をもたらすEPAや広域経済連携について、高いレベルの経済連携を目指していきます。

 また、環太平洋パートナーシップ(TPP)については、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始します。

 自由貿易を進めるとともに、農業改革を推進します。

 日本の農業は高齢化が進み、貿易自由化の如何にかかわらず、このままでは将来の展望が開けません。

 多くの若者が農業に従事し、質の高い食品を海外に輸出することもできる、「競争力のある農業」をめざします。

 次に、日本の魅力を高めることにより、優れた人材や知恵、技術、製品、そして投資を、世界から積極的に受け入れていきます。

 政府は今月、わが国のビジネス環境を世界最高レベルに引き上げるための、総合的な投資促進プログラムを取りまとめます。

 わが国に対するグリーン投資や研究開発投資を補助し、法人税の引き下げや事業活動の障壁となっている制度の見直しを検討するなど、前向きな内容にしたいと考えています。

 特に野心的な試みは、特区制度の創設です。国際拠点、物流、環境、バイオ等の先駆的な取組みを支援するため、規制の特例などの支援措置を、総合的かつ集中的に講じていきます。

 同時に、アジア太平洋地域と共に成長するため、我々はビジネスチャンスを外に開拓していきます。

 民と官とが連携した結果、先般、わが国はベトナムとの間で、原子力発電所の建設やレアアースの開発などの協力に合意できました。

 先月には、インドとの間でEPAの締結に実質合意することもできました。

 日本は既に変わりつつあります。

 皆さんの中には、国際化された羽田空港を使って来日された方もいらっしゃるはずです。本日、日本と米国は、首都圏空港を含むオープンスカイ協定に正式署名しました。空の自由化は東アジアを中心にもっと広げていきます。

 しかし、変化はまだ十分ではありません。

 私の役目はそれを加速させることです。

 皆さんにとってもビジネスチャンスが広がれば、幸いです。

 平成の開国を実現する中で、世界の企業として活躍する皆さんが、我が国への投資、研究・開発に参加することを期待しています。

 最後になりましたが、このような素晴らしい会合を主催頂いた米倉会長をはじめ、日本経団連の皆様に、改めてお礼を申し上げます。

 ご清聴ありがとうございました。