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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 菅総理からの国民の皆様へのメッセージ(平成23年3月18日(金))

[場所] 
[年月日] 2011年3月18日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

 地震発生から本日で1週間が経過をいたしました。亡くなられた皆さん、そして御家族の皆さんに心からのお悔やみを申し上げます。また、被災され家族が行方不明である皆さんに対しても、本当に御心配のことと心からのお見舞いを申し上げます。

 この1週間、国民の皆様はこの事態に対して冷静に対応し、家族や地域の絆を大切にして、共に助け合い、協力し合って、この事態を乗り越えようと努力をされてまいりました。そうした皆様の行動に対して心から敬意を表したい。このように思います。

 今、私たちは2つの大きな問題に直面をいたしております。それは巨大な地震、津波というこの被害に加えて、この地震、津波が原因として引き起こされた大きな原子力事故。この2つの危機に直面をいたしております。

 救援活動については多くの混乱があり、また困難があります。しかし、次第にそうした困難を乗り越え、支援物資なども被災者の皆さんに届くようになっていくと思いますし、生活再建についても、これから次第次第と前進をしてまいると思います。更には日本の復興についても、必ずやこの地震、津波の被害を乗り越えて日本全体が復興できる。このように確信をいたしております。

 その一方で、福島における原子力事故の状況はまだまだ予断を許さない状況が続いております。今、この危機を乗り越えるため、東京電力、自衛隊、警察、消防、関係者の皆様が、まさに命がけで作業に当たっていただいております。私も、この原子力事故に対して決死の覚悟で最大限の努力を尽くしております。必ずや国民の皆様とともに、そして現場を始め多くの関係者とともに、必ずやこの危機を乗り越えて、国民の皆さんに安心を取り戻したい。その決意を胸に秘めて、これからも更に努力をしてまいります。

 これまで、世界各国から本当に多くのお見舞いをいただきました。117か国の地域と国、29の国際機関、多くの支援の申し出をいただき、既に支援活動も始まっております。大変ありがたいと思っております。私たちは戦後最大のこの危機に対して、こういう全世界からの支援も含めて、くじけているわけにはいきません。何としても、この危機を乗り越えていくんだという強い決意をすべての国民が胸に秘めて前進をしていこうではありませんか。

 避難所で生活をされている皆さんは、寒い中、また食糧や水が不十分な中、またトイレの不便さの中、本当に御苦労をされていることと心からお見舞いを申し上げます。是非とも家族や地域や、あるいは見ず知らずの人であっても、避難所で行動をともにする皆さんとしっかりと助け合って、この苦しい中の避難生活を乗り越えていただきたいと思います。

 政府としては、そうした皆さんに対して食糧や毛布などを支給するだけではなくて、今後安心して生活できる環境を現在、全力を挙げて準備をいたしているところであります。どうかそうした避難生活、まだしばらくは続くと思いますけれども、是非体調に留意をされて、次の安心できるところへお移りいただけるまでの間、頑張り抜いていただきたい。このようにお願いを申しあげます。

 改めて申し上げます。まさに日本の危機、私たち日本人にとって、本当に試されている今日の状況です。日本は過去の歴史においても、この小さな島国と言われながら、奇跡的な経済の成長など、国民の力で一人ひとりの皆さんの力で、この国を築き上げてまいりました。この地震や津波によって、くじけていくわけには、絶対にあってはならないことです。もう一度、日本を改めて創るんだ、そういう覚悟でこの危機に一緒に立ち向かっていこう。どうか国民の皆様に一人ひとりがそういう思いで、家族や地域や職場の仲間や学校の仲間とともに、手と手を携え、自分たちがやれることは、自分たちができることは何なのか。そういう思いを共にして、日本の危機を乗り越え、再建に向かって歩み出していただきたいし、私もその一人として、全力を挙げていくことを改めて重ねて申し上げて、私からの震災発生1週間目における国民の皆様へのお訴えとさせていただきます。

【質疑応答】

(内閣広報官)

 では、青山さん、どうぞ。

(記者)

 日本テレビの青山です。

 福島第一原発についてですけれども、周辺地域の人々のみならず、日本国民に大変今、不安を与えている事故だと思います。更に、政府の出す情報に対する不信感も一部で広がっています。日本の総理大臣として、今の現状はどれだけ危険なのか。それとも、どれぐらい安心していいのか。そして、今後の見通しをどのように持っているのか。具体的な例もできるだけ含めて我々に教えてください。

(菅総理)

 今回の原子力発電所の事故について、私や官房長官が知り得る事実については、すべてを公開してまいりました。これは国民の皆様に対しても、国際的な形の上でも、そのことは改めて申し上げておきます。

 その上で、現在の状況は、この福島の原子力発電所の事故がまだまだ予断を許さない状況にある。このことは率直に申し上げているところであります。そして、その状況を何としても解決していくために、現在、東京電力あるいは自衛隊、消防、警察、関係者が決死の覚悟でこの対応をしていただいております。

 本日は3号機に対する放水活動も行われました。こういった形で、まだ予断を許さない状況でありますけれども、そう遠くない時期には全体をしっかりとコントロールして、そういう状況から脱却できる。そうした方向に向けて全力を挙げているということを国民の皆様に申し上げたいと思います。

(内閣広報官)

 では、五十嵐さん、どうぞ。

(記者)

 読売新聞の五十嵐です。

 総理がおっしゃったように、今、地震、津波に続いて、原発事故、更には停電。そして、何より被災者支援。一つひとつ取っても大変な危機が連鎖しています。そうした中で国民は、今の政府の対応で十分なのかということについて不安を持っている方も多いと思います。

 総理は、具体的に今の態勢で十分だと思われているのか。今日、岡田幹事長が大臣を3人増やすべきだという発言をしていましたけれども、態勢を強化する具体策をお持ちなのかどうかお聞かせください。

(菅総理)

 地震発生直後から政府として即座に行動を起こし、全力を挙げてこの問題の解決、危機を乗り越えることに全力を挙げているところであります。その上で、更に態勢を強化する上で、現在、与野党間で内閣を強化するための方法についても話し合いをいただいている。そうした努力も含めて、更に力を、対応力を高めて、この危機に対応してまいりたいと思っております。

(内閣広報官)

 それでは、最後の質問とさせていただきます。田中さん、どうぞ。

(記者)

 毎日新聞の田中です。

 被災地の再建について伺います。総理は先ほどのメッセージで、安心して生活できる環境を全力で準備したい、新しい場所に移っていただくということをおっしゃっていましたけれども、今の被災地というのは町の建物が根こそぎさらわれるような被害を受けているわけで、インフラの再建も含めて時間が大変かかると思いますが、その間、今、避難所で過ごされている方たちにどういうふうに過ごしていただくか、政府として検討中のことをお示しいただければと思います。

(菅総理)

 避難生活が長期間にわたることに備えて、いろいろな申し出もあり、いろいろな対応を準備いたしております。特に全国各地から自治体や、あるいはいろいろな団体、個人からも、そうした被災者を受け入れてもいいという申し出もいただき、また、こちらからもお願いを申し上げております。できるだけ厳しい避難生活が余りにも長期にわたらないように、そういった全国各地の皆様に、そうした被災者を受け入れていただけるよう、政府としても全力を挙げて努めていきたい。こう考えております。