データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] MDGsフォローアップ会合 総理開会挨拶

[場所] 
[年月日] 2011年6月2日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

 本日は、「ミレニアム開発目標(MDGs)フォローアップ会合」に出席するため、世界100か国以上の国々、20もの国際機関から、300人余りの皆様にお集まりいただき、本当にありがとうございます。心から歓迎申し上げます。また、今回の我が国における東日本大震災に際して、温かいお見舞いの言葉や支援をいただいたことに、この場を借りてお礼申し上げます。人と人とのつながり、国と国とのつながりを、これほど嬉しく思ったことはありません。この温かい気持ちを、私たち日本国民は忘れることはありません。改めて、心からお礼申し上げます。

 私は、昨年9月、「ミレニアム開発目標(MDGs)国連首脳会合」に出席しました。その場で私が申し上げたのは、貧困などの、国際的な課題を解決するために、MDGsという一つの明確な目標の下に世界の人々が力を合わせて取り組むことの重要性でした。そして、私は、一国のリーダー、政治的リーダーにとっての最初の責任は、まず、人々の不幸の原因をできる限り小さくすることにあるという、そのことで不幸を最小化するという、「最小不幸社会」の考えも申し上げました。一国のリーダーは、大きな声にかき消されがちになる弱き声、小さな声にも耳を澄まし、受け止めなければならないと、私は考えています。この「最小不幸社会」という私の考えは、いま世界的な課題となっている「人間の安全保障」という考え方とも共通する思想だと思います。

 昨年の国連首脳会合においては、このような考え方に基づき、いのちを守るための保健分野での貢献、そして、子ども達の未来を拓くための教育分野における貢献を、「菅コミットメント」という形で表明いたしました。こうした取組を通じ、人間一人ひとりに配慮した「優しい社会」を、そして、人々が自らの力で素晴らしい未来を切り拓くことのできる「力強い社会」を国際社会において実現できるよう、我が国として最大限の支援を行ってまいりたいと考えます。

 しかし、この目標への道のりは、いまだ半ばの状態です。2015年までにMDGsを達成するためには、国際的な活動の勢いをさらに強めていくことが不可欠と考えます。このような考えから、私は、昨年の「MDGs国連首脳会合」においてフォローアップの重要性を強調し、そのための会合を日本で開催することを提案いたしました。そして今日、この震災から間もない時期にもかかわらず、予定どおり「MDGsフォローアップ会合」を開催することができたことを嬉しく思います。これは、この世界的な取組において引き続き積極的な役割を果たしていくとの、私たち日本の決意の表れと理解していただければ幸いです。

 このフォローアップ会合において、特に保健分野及び教育分野の進捗状況につき、詳細な議論が行われると承知しております。また、今後の目標達成のための具体策についても議論が行われると聞いております。2015年までの残された期間に国際社会が集中して取り組むために、是非、この機会を最大限活用し、目標達成に大いに貢献されることを期待しています。

 日本国民は、先ほど述べたように、震災に際し、国際社会の温かい「絆」に触れることができました。だからこそ、日本は世界と共に歩み、 MDGs達成に貢献していきたいと考えています。そして、「菅コミットメント」を始めとする、既に表明した国際的コミットメントを誠実に実現していくつもりです。

 同時に、MDGsの達成は、国際社会が一致して取り組むことにより、初めて可能となる課題です。途上国、先進国、新興国、そして国際機関、市民社会、民間セクター。本日お集まりいただいた多様な関係者の皆様と力を合わせていこうではありませんか。

 最後に、もう一度、今回の震災において、皆様を始めとする国際社会から示していただいた「強い絆」と「温かい友情」に、深く感謝申し上げます。では、この「絆」と「友情」に対する「真の意味でのお礼」は、どのような形で表すことができるのか。

 それは、ただ一つであると、信じています。

 この困難な時期を日本という国が乗り越え、これまで以上に素晴らしい国へと新生し、その中で、これまで以上に国際社会にしっかりと貢献できる国となること。そのことこそが、皆様に対する「真の意味でのお礼」になると、信じているところです。

 我々、日本国民は、そういう想いを持って、友情に応えたいと思っています。

 以上をもって、私の歓迎の意味をこめた挨拶といたします。

 ありがとうございました。