データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「グローバル・ゼロ」サミット 総理大臣メッセージ

[場所] 
[年月日] 2011年10月11日
[出典] 首相官邸
[備考] 仮訳
[全文]

 歴史的なレイキャビク・サミットの25周年を記念するグローバル・ゼロ・サミットへ御参加の皆様に、メッセージをお送りさせて頂くことを大変光栄に思います。

 核兵器のない平和で安全な世界の実現は、人類共通の願いです。唯一の被爆国として、とりわけ我が国は核兵器使用の惨禍を繰り返してはならないとの信念を有しています。そのため、我が国は、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずという非核三原則にしっかりとコミットしてきています。

 私は、近年の米国及びロシアによる核兵器削減努力に勇気づけられました。バラク・オバマ大統領の、米国の安全保障戦略における核兵器の役割低減という明確な政策は先見の明があります。

 私は、両国が更なる削減に向けた努力を継続することを要請するとともに、このような進展が、他の核保有国も取り込んだ、国際的な核軍縮の前進に繋がることを強く望みます。

 同時に私は、安定した安全保障環境の確保が、核兵器のない世界という崇高な目標の追求に不可欠であることを強調します。しかし北東アジアには、核兵器を含む大規模な軍事力が存在し、不確定要素がまだ残っています。この文脈で、米国による、同盟国及び友好国の防衛のために抑止を拡大するとの堅固なコミットメントは我が国にとって重要です。我が国は、米国との協力の下、地域の安全保障の維持及び向上にむけた防衛努力を強化する決意です。

 このような国際社会の現実を十分に踏まえた上で、我が国は、現実的かつ漸進的なアプローチによって、国際的な軍縮・不拡散努力を主導していく決意です。このような取組として、我が国と豪州は、志を同じくする地域横断的な10か国による軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)を立ち上げました。

 我々にとってもう一つの課題は、民生用原子力の利用をより安全にし、かつ、核物質及び核関連技術の軍事用途への転換あるいはそれらがテロリストの手に渡るというリスクを完全になくすことです。この目的のために、我が国は、最大限の透明性をもって、東京電力福島原子力発電所事故の教訓を国際社会と共有するとともに、原子力発電の安全性を世界最高水準に高めます。より安全な原子力の将来に向けた道のりを見いだすことは、我々の責務です。

 核兵器のない世界の実現に向けた道のりは、長く粘り強い努力を要します。それ故、国際社会の国民の声の役割は益々重要になっています。私は、核兵器のない世界というビジョンに対する世界的な支援を盛り上げてきたグローバル・ゼロ運動のイニシアティブに対し、深い敬意を表します。この時宜を得た重要なサミットの成功を祈念します。

  野田佳彦