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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本アカデメイア主催「野田総理との第2回交流会」 野田総理スピーチ

[場所] 
[年月日] 2012年6月10日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

 日本アカデメイアの皆様におかれましては、このような機会をつくっていただきまして、誠にありがとうございます。前回も3月24日で、一体改革の法案を提出できるかどうかというぎりぎりの党内議論が行われている時でございました。奇しくもまた、大変正念場の時にお招きいただきまして、発言はよく注意しなければいけないな、と思っております。

 最近、いろいろと大きな動きがありました。まず、そのことからお話ししなければなりません。

 月曜日に第二次改造内閣を発足させました。ちょうど一週間前の日曜日にその改造人事で想を練っていた頃でございまして、結果はご承知のとおりでございますが、一番驚かれたのは、森本防衛大臣だったのではないかと思います。民間人としては初めてということで、これについては色々なご指摘を頂いておりますけれども、ぜひ皆様にご理解いただきたいのは、昭和27年だったでしょうか、防衛省、防衛庁の前身で、保安庁と言っていた頃があります。その保安庁の長官は、民間人の木村篤太郎さんでして、法務大臣を兼ねて保安庁の長官をやっておられました。その後、議席を得て、初代の防衛庁長官になられていますけれども、民間人で、こうした防衛の責任者に当たるということは、前例がないわけではありませんし、海外を見ていただいても、パネッタ氏含めて、国防の責任者が民間人であるという事例はいくつもございます。

 問題はシビリアンコントロールが確保できるかという視点なのでしょうが、最高責任者は内閣総理大臣の私でございます。政務三役は国会議員で固めています。予算や制度改正するときは国会のご承認を得なければなりません。シビリアンコントロールに全く問題ございませんので、そのあたりは、是非ご理解をいただきたいと思います。

 そして、金曜日には、大飯3号機、4号機の再起動について私の考え方を記者会見を通じて国民の皆様にお話をさせていただきました。もう繰り返しは申し上げません。あのまま、あのとおりでございますが、国民生活を守るという視点からの判断をさせていただきました。

 国民生活を守るというのは、一つは、二度と福島のような事故を起こさないということであり、しっかりと安全性を確認した上での判断であるということ。二つ目は、これは、夏場の需給の問題も大事でありますし、加えて、エネルギー安全保障という観点からも、あるいは、関西地区はですね、15%の需給ギャップです。これは、精神論だけでやっていけるかというと、国民生活、経済への影響等考えて、万が一、ブラックアウトが起こるような状態があったときには、大変な悪影響が出ます。そういうことを避けるための、国民生活を守るという視点からの判断でございました。

 もちろん、1年前のあの事故の生々しい記憶が残っている中で、国民の皆様におかれましては複雑な思いを持っていらっしゃると思いますが、夏場だけの対策ではありませんが、夏場を乗り切らなければなりません。そういう意味では、判断の時期が迫られているという時期であったと思いますので、二分している問題についてしっかりと責任をもって結論を出すというのが、政治の役割だと思います。その結果については、判断については、皆様色々ご意見があるかもしれませんけれども、私は私の責任の下で判断をさせていただきました。福井県において所要の手続きが進められることを強く期待をしたいというふうに思います。

 それから、今、当面の最近の動きを申し上げましたけれども、近々の日程では、6月21日で150日間の通常国会の会期末を迎えますが、その一番後半のところに、G20が開催されることになっています。

 今回は、メキシコのロスカボスでございますけれども、このG20の、特に世界経済を議論するセッションに日本の代表が行かないということはあってはならないことであります。ちょうど6月17日がギリシャの選挙の結果が出ます。その結果がどうなるか。スペインの対応は、今、EUの中で対応がされたようでありますけれども、されるようでありますけれども、スペインの問題もあります。という中において、日本が果たすべき役割は色々あると思いますし、主張をし、あるいは賛同を得るための努力をしなければいけないものがあります。

 一つは、IMFの資金基盤強化について、既にG20の財務大臣会議で我々は600億ドルを用意するということを表明しています。これをきっかけに4300億ドルまで、各国が資金供用するところまで持っていきましたが、まだ判断をしていない国があります。新興国の中にもあります。こうしたみなさんに判断を促すという努力をすることが、世界経済危機の波及を抑えるための歯止めになるだろうと思いますし、少なくともEU内における危機がアジアに伝播しないために、チェンマイ・イニシアチブの強化であるとか通貨スワップの拡充等々いろんな努力をしてまいりました。そういう取組をしっかりとメッセージとして打ち出すことが大事だというふうに思います。

 日本の経済は、ご案内のとおり、1月から3月のQEは4.7%成長というところまできました。足元いろんな問題がありますが、一番心配なのは、このEUの危機が伝播してきたときの下振れ要因だと思います。そのできるだけなくしていくという努力を、国際会議の中で、イニシアチブをとっていかなければいけないと考えております。

 加えて、どの国も共通している課題は、財政再建と成長を両立させることでございます。その議論もG8でも散々いたしましたけれどもG20の中でもおそらく議論になるだろうと思います。その時に日本がどうなっているかということが、当然多くの国々が関心を持つでありましょう。

 その中で一体改革、ちょうど幹事長中心にご努力をいただいて、修正協議が始まりました。自民党の皆さん、公明党の皆さんにもこういう形でお引き受けいただいて、会議に臨んでいただいていることには感謝を申し上げたいと思います。ここで、まだ始まったばかりですから予断を持って何か申し上げる段階ではありません。楽観はできません。でも悲観もしていません。しっかりと国民のために長い間、懸案だったテーマについて、ようやくテーブルについて協議をする場が出来ました。そこで、お互いが胸襟を開いて、そして、旗を降ろせとか理念を降ろせとか言ってしまうと議論が進まないんですよね。どういう形で具体的に現実的に制度の改正をできるかというところに心を砕いていただきながら、何としても国民のために成案を得るという、決められる政治というものをお互いに努力をして示せればいいと思っております。

 それも、あまりだらだらと時間をかければいいというものでもございません。一定程度のメドを持ちながらですね、きちっと議論をしていくということが大事だろうと思います。

 そういう正念場の6月21日までの国会の調整になるだろうというふうに思います。

 これまで決意についてはずいぶん申し上げてまいりました。もう一回決意を言うと、また「前のめり」と言われますので、ここはもう私だけが前に出る話ではありません。お互いチームとして政党の存在意義がかかっているときだと思います。チームとしてお互いに結論を得るために、最大限の努力をするということが今問われてますので、是非この動きについてはご注目をいただきますように、加えて、それぞれの皆様が、オピニオンリーダーだと思いますので、何としても成案を得るために世論喚起をしていただければ、その環境整備に大変大きく貢献できると思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 加えて、この6月21日までの間には、先ほどの原発の関連で言いますと、規制庁の話も結論をださなければなりません。今までは保安院、安全委員会という従来の枠組みの中で徹底して安全性のチェックをしてまいりましたけれども、やっぱり規制と利用の組織は分離した中で、きちっとした規制をする組織が出来て基準をつくるということが一日も早く出来ればよいと思いますので、その法案も早くこの国会の中で通したいというふうに思います。

 加えて、社会保障と税の一体改革でございますが、多くの国民の皆様は「行革はどうなるんですか」「政治改革はどうなるんですか」という強い関心を持ってらっしゃいます。

 これらについても、きちっと結論を出していかなければなりません。行革については、国家公務員の給与削減等といろいろと実績はあります。これからも不断の取組でやっていくということでありますけれども、政治改革に関しては、一票の格差の問題と、定数是正と、選挙制度、これをセットにして結論を出すというためのぎりぎりの努力が行われております。来週には我が党の幹事長から、具体的な提案をさせていただきまして、その上で、各党のご理解をいただいて、結論を得るように頑張っていきたいというふうに思います。

 ということで、大変正念場の国会を迎えました。私はあくまでも国民のために考え抜いて、そして、結論を出せる、あるべき国会の姿がこの国会で示せるように全力を尽くさせていただきたいと思っております。

 10分ということでございましたけれども、今日は10分位でお話をさせていただいて、後は是非、皆さんからご意見、ご提言などを頂戴できればありがたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。