[文書名] TICAD V 全体会合3-民間との対話-安倍総理スピーチ
アフリカ各国の首席代表の皆様
企業関係者の皆様
1.日本企業にとってのアフリカの魅力
アフリカはいまや,投資先として世界の注目を集め,民間投資が更なる投資を呼ぶ好循環を迎えようとしています。
我が国は,TICADVに向け,政府と経済界が共同で,「TICADV推進官民連携協議会」を立ち上げ,議論してきました。坂根正弘・日本経済団体連合会副会長,加瀬豊・日本経団連サブサハラ地域委員長始め,官民が協力してまとめた,この協議会の提言は,アフリカ・ビジネスを拡大する上で,日本政府にとっても,またアフリカ自身にとっても,貴重な視座を与えてくれます。
資源に乏しい日本にとって,アフリカの豊富な天然資源は,重要なビジネス機会です。しかし日本は,ただ資源を採掘し,日本に持ち込むようなことはしません。アフリカの天然資源の恵みが,アフリカの経済成長につながっていくよう,アフリカを支援していきます。こうした考え方を共有するため,日本は,5月に初めて「日・アフリカ資源大臣会合」を開催しました。この枠組みを今後更に発展させていきたいと考えています。
また,天然資源以上に,急拡大するアフリカの市場は,日本企業を惹きつけてやみません。日本企業は,この魅力的なアフリカに対し,ビジネス関係を拡大したいとの,強い意欲を持っています。
2.アフリカ自身の取組を要請
思えばアフリカとは,世界物流の中心にどっしり座る大陸です。地中海,紅海,インド洋,そして大西洋にすべてに面し,それらの海は,既に何世紀も,物流の道として発展した海です。
アフリカとは,四囲を海に囲まれた,世界最大の島なのだと思いましょうか。ここには,豊富な資源があり,巨大な市場があります。その島がなべて平和で,道路が四通八達し,電力グリッドが隅々まで行き渡った時,どれほど魅力的な投資先となるか,想像の翼をはばたかせることができます。海に繁栄と,安全を託す我が国ならばこそ,アフリカとの関係は,この先,今までにも増して,加速度的に重要となるでしょう。
我が国は,アフリカをより魅力的な投資先とする取組を,アフリカと手を取りあって進めていくつもりです。ケニアやモザンビークを始め「戦略的マスタープラン」を10カ国で実施していきます。しかし,民間企業の期待に応え,アフリカがその潜在性を発揮するためには,アフリカ自らが,魅力的な投資先であろうとし,また,そのために努めなければなりません。
この点について,「TICADV推進官民連携協議会」では,アフリカがより魅力的な投資先となるために必要なことを,協議会の総意として「対アフリカ・ビジネス促進のための日本からのメッセージ」にまとめました。本日皆様のお手許に配布しているものです。是非お持ち帰りいただき,熟読していただきたいと思います。
日本企業が,アフリカに求めていることは明確です。それは,自由で安全なビジネス環境です。本日お集まりの皆様にお願いがあります。日本企業がアフリカで事業を営む上で,安全確保に協力してください。過剰な規制を撤廃し,必要な法制度の整備を進めていただくとともに,円滑な人と物の出入りを実現してください。このために必要な支援を,日本は惜しみません。
3.日本企業がアフリカにもたらすもの
最後に,日本企業が持つ力の1つを,皆様に御紹介したいと思います。それは,「カイゼン」です。
日本で工場生産ラインを効率化した先人たちは,例えば,工具を常に身近に置けと教えました。3歩先,でもいけません。往復で6歩,1時間に50回繰り返すと300歩。それを8時間続けると2400歩になり,2キロメートル近く,無駄に歩いたことになるからだ,というのです。
このように,小さなカイゼンを繰り返していくうち,品質のよいものを,より安く作れるようになりました。皆さん,これこそが,日本企業が世界にもたらした革命だったのです。これは,ひとつひとつが実践の知恵,現場の工夫です。共に働き,手に手を取って伝授していくものです。私は,アジアの各地で名もない日本の先人たちが,日本が育てた知恵と工夫を,伝えてきたのを知っています。
それを,日本人は,アフリカでも,繰り返したいのです。現場で始めて伝わる文化。その文化こそが,アジアに奇跡の経済成長を引き起こしたのです。
アフリカと共に,日本は栄え,日本と共に,アフリカは栄えます。それがこのTICADVが,私たちに植えつける,確信なのです。ありがとうございました。